見出し画像

ジョニーベア【7】2100文字

↑ 前のお話 ↑

【7】楽園森
心地よい木漏れ日がさしこんでいる森を散歩していたある日、
頭の上ではハックルが昼寝をしていたのですが、
ハックルはとつぜん起き上がると、
何かを思い出したようにジョニーベアに話しかけました。
「なぁジョニー、
木のてっぺんで寝ている間に夢を見たって言っていただろ」
「星になったママが僕の先を歩いている夢だった。
今でもはっきり覚えているよ」
ジョニーベアが答えました。
「オイラは夢ってやつを見たことが無いんだ。でも兄貴が言っていた。
目が覚めている時に行かれる場所以外にも、
寝ている時に行かれる夢という場所があるってね」
「そう、たしかに寝ている間に行かれる場所が夢だった」
ジョニーベアは立ち止まって首をかしげて言いました。
「それに夢の場所っていうのは、
遠い明日からやってくる景色だって兄貴が言っていた。
その夢の景色は遠い明日からの大事なメッセージを
教えてくれているんだってさ」
「大事なことか、、、、」
ジョニーベアが頭をボソボソかきながら独り言のようにつぶやくと、
ハックルは頭から下りてきて、ジョニーベアの鼻の上に立って
ジョニーベアの目を一直線に見て言いました。
「オイラは見たことないけどさ、ジョニーが夢を見たってことは、
そこに大事なメッセージがあるんだよ。うん、そうに違いない」
ハックルがポンッと手を叩いて言いました。
「ママはいつか輝く星になれるくらいの
立派なクマになってねって言っていたよ」
ジョニーベアは言いました。
「それだよジョニー! 君は立派なクマにならなくちゃいけないんだよ。
ママが夢の場所から君に伝えに来たんだよ。それは本当に君の大事な夢なんだよ」
ハックルはそう言うと、ため息をつきながら続けました。
「オイラも夢の場所に行ってみたいもんだなぁ」
「ハックルはどんな夢の場所に行きたい?」
「そうだな、オイラ達リスはよ、いつも大きな動物達に食われちまうから、
 みんながみんな木の実や果物しか食わない場所に行ってみたいもんだな」
ハックルは腕を組んで、何度も頷きながら言いました。
「それはいい夢だね。
人間達のいない動物だけで、木の実や果物がたくさんある森」
それを聞いたハックルが耳をピンと立てて言いました。
「あっ、思い出したぞ!」
「何を?」
「人間たちのいない動物だけの森!」
「そんな場所があるのかい」
「楽園森!」
ハックルが飛び上がって、叫びました。
「らくえんもり?」
ジョニーベアが分からない様子で聞き返しました。
「いつかフクロウたちが楽園森の事を夜中に話していたのを聞いたんだ。
ただの言い伝えにすぎない、まぼろしの夢の場所なのかもしれないけどさ。
楽園森では全ての動物たちがお互いにちょうどいい場所で暮らしているんだ。喧嘩にならないように、交わらないように、かといって離れすぎないで、食うものに困らず、食われることもない森だっていうんだ」
「すばらしい森だね。
僕その楽園森に行きたいな、それってどこにあるの?」
ジョニーベアは言いました。
「そいつは北の夜空に浮かぶ七つ星のむこうにあるって言っていた。
おいら思うんだけどさ、ジョニーは夢の中でママの星を追いかけていたんだろ。それで、ママは君に立派なクマになって欲しいと願っていたんだよね」
 それを聞いたジョニーベアの瞳が急に輝きました。
「そういうことか分かったよ!、僕が見た夢の秘密。僕は星を追いかければいいんだよ。その星のたもとに楽園森があるんだ。皆が争いなく暮らせる森を見つけることがママが願った立派なクマに違いないよ。
それが夢のメッセージだよ」
「そういうことだジョニー、君は楽園森を見つけ出すんだよ、
それこそが森の王者に相応しい立派なクマだよ」
「ハックル、僕は決めたよ。
僕はその楽園森を見つけ出してみせる。そして森のみんなに知らせるんだよ。それ以上に立派なことってあるかい?」
「ジョニーすごいぞ、楽園森こそが夢の大事なメッセージに違いないよ。
これは凄い冒険になる」
ハックルが小躍りしながら言いました。
「僕ら最高のコンビだからこそできる最高の冒険だよ、ハックル」
「そうと決めたら早速出発だ」ハックルが勢いよく言いました。
「声高らかに歌いながら、出発だ」とジョニーベアも言いましたが、
 2匹で目をあわせて、大事な事を見逃していることに気づいて、
 ジョニーベアが言いました。
「ちょっと待ってよ、まだ昼間だから星が見えないし」
「そりゃそうだ。夜になったら七つ星に向かって出発だ!」
ハックルが言い直しました。
 
そうと決まると、
ジョニーベアとハックルの2匹は昼間の時間を有効につかうためにも、
腹ごしらえの散歩をすることにしました。
七つ星を目指す冒険は今夜からはじまるのです。
二匹の心はこれから始まる大冒険に胸を踊らせて、
小鳥たちのさえずりをメロディにして、
声も高らかに歌いながら森の中を進んでいきました。
 
歩いて、歩いて、歩いて行こう
七つ星にむかって
夢の場所がそこにある
その森に行けば、
悲しいことも
苦しいことも
どこかに消え去り、
よろこびが溢れているよ。
 
森のみんなに教えてあげるよ。
夢の場所は本当にあるんだよ。
歩いて、歩いて、歩いて行こう
七つ星の向こうにある楽園森に。
 
―――つづく―――

この記事が参加している募集

#多様性を考える

27,802件