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ジョニーベア【6】1700文字

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【6】気まぐれハックル
コツコツ、カッツン、コツカッツン
カツカツ、コツコツ、カツコッツン
ジョニーベアは顔に何かが当たってくるのを感じて目が覚めました。
辺りを見回すと、そこは木の上ではなく、大地の上でした。
木のてっぺんで寝ている間に落ちてしまったようでしたが、
落ち葉のクッションでケガはしていませんでした。
するとまた、ジョニーベアの頭にコツン、コツン、カツン、カツンと
何かが当たってくるのでした。
それらを見ると、ドングリや椎の実やクルミの実が木の上から絶え間なく
落ちてきて、体のあちこちにあたっていました。
ジョニーベアは木のてっぺんにいた何日もの間、
何も食べていなかったので、
お腹がキューッとなって、
辺りにたくさん落ちているドングリやらを食べはじめました。

すると木の上から声がしました。
「クッククク-、金色のクマが目を覚ましたよー」
ジョニーベアが声のする方を見上げれば、
枝から枝にすばしっこく飛び移っていくリスがいました。
「リス君、美味しい木の実をいっぱい落としてくれてありがとう」
ジョニーベアはドングリをポリポリほおばりながら言いました。
「やせっぽちの金色のクマが空から落ちてきたからびっくりした」
「木の上から降りてくるつもりなかったけど、
夢を見ている間に落ちてしまったようだよ」
「夢だって!、君は夢を見たのか?」
リスはびっくりした様子で木陰からひょいと顔を出して聞きました。
「うん、星になった僕のママが向こうで歩いている夢だった」
「ママが星になったって?」
「僕のママは人間に襲われて星になってしまったんだよ。
ねぇリス君、ちょっとこっちに下りてこないかい」
「オイラを食べたりしないかい?」
「リスを食べる?、なんでそんな事を言うんだい」
「オイラのパパもママも鷹に食われちまったし、
兄ちゃんも妹もキツネに食われちまって、
オイラは一人になっちまった」
「そうか、君も家族がいないんだね」
ジョニーベアは肩を落としてそう言いました。
「だからお前に食われちゃわないか心配なのさ」
「君はあんまり美味しそうに見えないな」
「だって、何日も木にてっぺんにいてお腹ペコペコなんだろ?」
「君なんかより椎の実やはちみつの方がよっぽど美味しい」
ジョニーベアがそう言うと、リスは木の枝から姿が消えてしまいました。
そして次の瞬間にはジョニーベアの鼻の先にきょとんと立っていました。
「オイラの名前はハックル、お前の名前は?」
「僕はジョニー」
「金色クマのジョニーだな」
リスはそう言ってからジョニーベアの頭の上に乗っかって
話しを続けました。
「人間ってやつらは、色々勝手な奴らだからな。
ドングリがたくさん実る木をバッタバッタと切り倒したりするし、
クマは森の中で一番強くて誰からも狙われないと思っていたけど、
どうしてジョニーの母さんは人間に襲われてしまったんだ?」
「分からない。
僕らは川のサケをたんまり食べた後の帰り道だっただけなのに」
「そっか、ジョニーもオイラと同じ一人ぼっちだな」
「今はハックルと一緒にいるから一人ぼっちじゃないよ」
「そりゃそうだ!よーしよしよし、いいこと考えた。
今日からオイラ達は二人して歩いて行こう」
「ハックル、それはいい考えだ」
「オイラがジョニーと一緒なら森の誰からも命を狙われない。
なんたって、クマは森の王者だからさ。それにオイラが木々の実をいっぱい持ってくれば、ジョニーも満腹で二人でハピハピハッピー」
ハックルはそう言いながらジョニーの体中を駆けずり回って、最後に頭の上にひょっこりと現れました。
「さぁジョニー、出発進行!」
ハックルは尻尾を立てて、勢いよく言いました。
 
その日いらい、
ジョニーとハックルは一緒になって毎日を過ごすようになりました。
ハックルは木から木にひょいひょいと飛び移りながら、
樹の実をたんまりと落としてくれるのを、
ジョニーベアは上手に口でキャッチしながら森の中を歩いていきました。
時々、タカやトンビが空を行きかえば、
ハックルはすかさずジョニーベアの頭の上に逃げ込んで来ました。
「僕らは完璧なコンビだね」
ジョニーベアが、クククと笑って言いました。
「オイラ達は森一番の名コンビ!ハピハピハッピー」
ハックルが楽しげに答えました。


ーーーつづくーーー

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