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ジョニーベア【5】1300文字

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【5】星に囲まれて

ジョニーベアは木のてっぺんで
何日も過ごしていました。
昼間の太陽の強い日差しに晒され続けたせいで
赤茶だった体の毛色が抜けてしまって、
黄金色になってしまいました。
水も飲みたくなければ、
何も食べたいとも感じず、
空っぽになってしまった心は
いつまでも塞ぎ込んでいたのです。
地上に降りても、
大好きなママベアーはもうそこにはいません。
ジョニーベアはただ木のてっぺんに腰掛けながら、
このまま木の一部になってただただ空を眺めていたい
と願っていました。
 
 
月がうすっぺらい夜の事、
風もなく森はしんと静まりかえり、
空気は凍えるように冷たくはりつめて、
星たちはいちだんと輝きを増している夜でした。
ジョニーベアは息をするたびに、
夜空の中に吸い込まれていく感じがしました。
そして気がついてみると、
ジョニーベアは夜空の星の中に立っていました。
木の上で眺めていた時は
ただ静かに光っていた星達が
今はジョニーベアを取り囲んで
楽しい音楽を奏でていました。
リンリンリーン
キャンキャンキャーン
トゥルトゥルトゥルー
パルルルルルーン
耳の中で転がる優しい星達のメロディに合わせて
ジョニーベアは星空の中を散歩していました。
そしてジョニーベアはとうとうママと同じ星に
なれたんだと思いました。

星達の間を流れていく雲をつかんで手に取ってみれば、
雲はリンゴになりました。
ジョニーベアはおそるおそる食べてみると、
それは甘酸っぱくてとても美味しいリンゴでした。
また雲をもいでみると、
それは柿になったり、
栗になったり、
みかんになったり、
手に取った雲は
ジョニーベアが好きな食べ物に
変わっていくのでした。
ジョニーベアはそうやって、
雲をもいでは美味しい果物を食べながら、
上に行ったり、下に行ったり
星が煌めく夜空の中を散歩をしていました。

するとどうでしょう。
向うの方を見てみると、
星の光でかたどったママベアが歩いているのが見えました。
いつも後ろから追いかけていたママベアの大きなお尻が、
右に揺れたり、
左に揺れたりしながら
のっそのっそと歩いて行くママベアの後ろ姿でした。
ジョニーベアはうれしくなって飛び跳ねると、
弾む気持ちをおさえながら、
ママベアの大きなお尻を追いかけて
いちもくさんに走っていきました。

でも不思議なことに、
どんなに走っても、
向うにいる星の光にかたどられたママベアに
追い付くことができませんでした。
ママベアはときおり、
後ろを振り向き、
やさしく微笑むのですが、
やはりまた先に歩いて行ってしまうのです。
その時、ジョニーベアは足元を流れていた雲に
足を滑らせてしまいました。
そして夜空からまっさかさまに
地上に落ちていきました。
星に煌めくママベアが小さくなっていきました。
ママベアは振りかえり、
やさしく微笑んでいました。
ジョニー坊やは、
遠くに離れていくママベアの微笑みを、
手を伸ばして見つめるのでした。
ママベアは何も言わず、
ただ優しく微笑んでいました。

すると突然、
ズシンと大きな石にぶつかったような、
強い衝撃が体に走りました。
頭の中がキーンと響くと
目の前が真暗になってしまい、
ジョニーベアは意識を失ってしまいました。

-つづくー

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