もし自分が事業責任者だったら?非営利団体3団体のマーケティングを考えてみた!
私たち、社会課題に特化した企画・PR会社であるmorning after cutting my hair,inc.とマーケティングトレース会を主催されている黒澤友貴さん(@KurosawaTomoki)との共同主催で、2020/5/30に「社会課題×マーケティングトレースVol.2」を開催しました!
※Vol.1のイベントレポートはこちら
国連が定めた2030年までの目標である「SDGs」の達成目標が10年後にせまった今、国内外の企業や団体はどのように社会課題に取り組み、顧客や支援者を巻き込んでいるのか。
このイベントでは、社会課題に携わる企業・団体におけるマーケティングを学ぶことを目的としています。
さて、第2回となる今回は、「持続的な社会貢献/課題解決を実現するNPO・NGO」というテーマで、社会課題に関心のある方や、すでにプロボノやファンドレーザーとして働かれている方々が参加してくださいました!
テーマに関わりの強い方々が多かったこともあり、今回はトレースを通して、その企業の施策だけではなく参加者一人ひとりの知見も共有しあい、発展的なコミュニケーションも取れて私たちもとても楽しかったです。
ご参加していただいたみなさま、本当にありがとうございました!
マーケティングトレースとは
成功企業の裏側にあるマーケティング戦略を、言語化・図解してトレース(分析)し、最後は「自分がCMOだったら?」を考えるトレーニング(マーケターの筋トレ)のこと。
企業(今回であれば対象の非営利団体)の戦略やマーケティングについて、企業調査からフレームワークを使った外部環境分析、競合調査、ターゲット、成功要因などについてまとめ、「自分ならどうこの企業をもっと発展させるか」を考えるという一連の流れを行っていきます。
今回のテーマはNPO/NGOのマーケティング
現在、日本でも企業のCSRやSDGsへの取組みからESG投資に注目が集まり、ますます企業の「社会貢献/課題解決」についても関心が高まっています。
そんな中、皆さんもご存知のように、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で蔓延。日本国内でも緊急事態宣言による外出自粛が2か月に渡って続くなど、あらゆる活動が大きく制限を受けたことで、実は様々な社会課題にも大きな影響出ています。
そこで、社会課題に日頃から取り組み続けているNPO・NGOは、どのようにして持続的に活動し、社会的意義を発信して人々の関心や支援を集めているのかを、マーケティング・PRという視点からトレースして学ぼうと、「持続的な社会貢献/課題解決を実現するNPO・NGO」を今回のテーマに選びました。
今回のターゲットはこの3団体!
社会課題×マーケティングトレースでは、トレースをする企業・団体を私たちが3つに絞り、参加者の皆さんに1つ選んでもらってトレースを行っています。
今回ターゲットは、
・国内・国外で長期的に課題解決に取り組み、実績がある
・対外的なPRや発信に力を入れていて、情報もわかりやすくまとまっている
・今回のイベントで意義のある議論ができる
などの観点から以下の3つを選びました。
もしご存知ない方は、ぜひ3団体のwebサイトや、SNS、プレスリリースをご覧ください!
https://www.greenpeace.org/japan/
https://www.katariba.or.jp/
http://info.bosai-girl.com/
では、ぜひワークの中から考え、トレースを通して見えてきた特徴や出てきた考察をご覧ください!
01.国際環境NGO GREENPEACEをトレースしてみた
GREENPEACEとは
世界55以上の国と地域で活動し、地球規模で起こる環境問題に取り組むNGO。本部はオランダ・アムステルダムにあり、政府や企業から資金援助を受けず、独立したキャンペーン活動を世界中で展開している。核実験への抗議と中止、森林伐採停止など、国際的な取り組みの実績も多い。国連では国際的なNGOに与えられる最も高い地位の1つである「総合協議資格」が認められ、環境問題の専門家として各国政府へのアドバイスや提言を行っている。
|40分で整理したワークシートがこちら!
|見えてきたGREENPEACEの特徴
・視覚的にわかりやすいテーマや題材をあえて選ぶことで共感しやすい、自分ごとかしやすいプロモーションがうまい。
・支援することが個人の「ステータス」になっている。活動家からの電話マーケ・メールプッシュも月に1回はしっかりくるので、そういう熱烈なフォロワーを各国に抱えることができている。
|もしも自分が事業責任者だったら
・企業側から声をあげられる「内部告発のプラットフォーム」になるようなポジショニングを獲得していくのはどうか。
・「過激すぎる」ことがネックになってはいないか?過去を否定して政府や企業と共闘していったほうがいいのではないか。
|全体への共有で出てきた質問や考察
▶︎なぜグリーンピースが支援者のステータスとなれるのだろうか?
・知名度や実績が強いからではないか。「自分が正しいことをしている」という満足感を得るには、多くの人が知っている団体というのは重要。
▶︎ステータスになるというのは団体にとっても重要。自然発生した支援者たちの発信をみることでGREENPEACEが作る「ステータス」についてより深く知ることができるのではないか。
▶︎メディアが取り上げやすく注目をあびるテーマを扱うことがうまい。大手メディアが大々的に取り上げるポジションを獲得できている。
02.認定NPO法人 カタリバをトレースしてみた
カタリバとは
子供や若者の居場所づくり、学習支援などの事業を展開する認定NPO法人。2001年設立、職員数は112名。
高校生を対象にボランティアスタッフを語り合う「出張授業カタリ場」や、生活や家庭環境に課題を抱える子供たちのシェルター「アダチベース」の運営など、子供・若者を中心とした事業を幅広く展開している。
2010年GOOD DESIGN賞など国内の実績も多く、様々な企業や個人から支援を受けている。
|40分で整理したワークシートがこちら!(参加者 水溜さん作成)
|見えてきたカタリバの特徴
・コーズマーケティング、デジタル活用、郵送物などターゲットにあわせた接点や手法の活用・使いわけがうまい
・外部環境への適応がうまい。単発寄付から継続寄付増加への切り替え、キャリア支援→震災支援→こどもの貧困と訴求軸の切り替えとマーケティング・PRの切り替えがうまくいっている。
|もしも自分が事業責任者だったら
・事業拡大のためには「リアルな場」で接点をまだ作れていない支援者や若者に波及させていくために、オンラインでの対話のメソッドを確立することでさらに強いポジションを取れそう(コロナの影響もあるし、すでに着手しているだろう)
|全体への共有で出てきた質問や考察
▶︎「斜めの関係」というコンセプトをいち早く打ち出したのも成功要因。行政側と連携できた。理事に学習環境に強い専門家をおいており、理論を組織内でしっかり体系化・コンセプト化できているのだろう。
▶︎誰よりもはやい地方への展開は強い行動力によるものだが、それに理論化されたコンセプトがあわさることが強い。
▶︎「教育系の団体に寄付したい」と思ったとき、寄付者はそのポジショニングのなかで選べるのか?
・若者支援と括ったとき「どの年代の若者・子供の課題に共感するのか」はありそう。(参加者 岡村さんの作成したポジショニングマップ)
03.一般社団法人 防災ガールをトレースしてみた
防災ガールとは
国内を拠点に「防災があたりまえの世の中に」を目指すべく活動してきた一般社団法人。累計130名所属。2013年設立、2020年解散。
若者をターゲットにした「わかりやすい防災情報の発信」「これまでにない防災の企画」などを強みに企業や政府と連携し、より本質的な課題解決もめざそうと津波防災の普及啓発プロジェクト「#beORANGE」の立ち上げに尽力。課題に共感を集めるPRにも注力している。
国際的なPRアワードをNPOで初めて受賞。
|40分で整理したワークシートがこちら!(参加者 繋さん作成)
|見えてきた防災ガールの特徴
・非日常で専門的だった業界において、日常/門外漢というポジショニングが特徴的なのでは。
・子供やファミリー層向けの教育を企画する団体は多いが、個人が共感することに注力している。
|もしも自分が事業責任者だったら
・コロナの中での「人の生活の変化」に着目し、グローバルな日常の課題と防災上の課題の共通点を見つけていくことで、新しい生活の変化にも溶け込む提案をしていけそう
・よりオンラインへの展開を強化して、過去の被災体験をVRイベントとしていくなど今こそできることもありそう。
・個人→ファミリーやコミュニティへ防災意識をアップデートさせていく仕組みや繋がりを醸成する
|全体への共有で出てきた質問や考察
▶︎以前の防災業界は「ハードの強化」に取り組む団体が多かったが、彼らは若者を巻き込みたいといいながら4Pが全く合っていなかった。改めて、防災ガールはそこをうまくあわせることができていたんだなと感じる。
▶︎防災という分野を悲壮感をもたずに、業界にいままで少なかった視点で発信してきたのがよかった。
▶︎コミュニティを作る、共犯者やコラボを生み出すのがうまかったと感じる。意識してきたことはあったか?
・クラウドファンディングを7年間で8、9回行ったため、団体に対してアクションを起こしてもらいやすい機会を定期的に作っていた。
・また、若者だけでなく防災オタクや研究者を仲間に入れてきたのもコミュニティとして強くなった要因だと思う。
▶︎専門家をコミュニティに引き込むにはどうしたらいいのか?
・研究者の人たちに一般市民として純粋な質問をしにいったりしていた。若者がどう感じるか、市民目線でどう感じるかということが重宝されたのかも。
さいごに
今回は企業ではなく非営利団体のマーケティングトレースという、ちょっと変わったテーマでの開催となりましたが、いかがでしたか?
参加された方は、社会課題にすでに深く関わっている方も多く、「この団体のここが面白い、学びになる!」という議論がとても盛り上り、非常に充実した時間となりました。参加者アンケートでは満足度100%という結果に!本当に皆さま、充実した時間を一緒に作っていただきありがとうございました!
「類似団体ばかりみるのではなく異なる収益構造をもつ団体について学べてよかった」
「自分の団体でも生かしていきたい」
といったコメントもいただき、参加してくださった方々にとって有意義な時間にできたのかなと感じています。
普段は社会課題に取り組む側として目の前の問題に取り組んでいる私たちですが、少し俯瞰して周囲の団体はどのような取り組みで事業を「継続」させてきたのかを考えてみると、それぞれの強みや転換期のようなものが見えてきて非常に興味深いワークとなりました。
また、普段はそれぞれで活動をしている人たちがワークを通じて繋がり、コミュニティを作っていく可能性も見えたと思います。
改めまして、ご参加頂いた皆様、ありがとうございました!
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私たちmorning after cutting my hair,inc.は、さまざまな社会課題を解決し、より良い未来のために活動されている人や企業・団体のPR・企画をサポートする会社です。
企画を作る段階だけでなく、アイデアブレスト・社内アイデアソンなど新しい解決策創出の場づくりもサポートしています。ご一緒できる機会があればぜひお声がけください。
Consulting for Social challenges with Love. based in TOKYO & SHIGA, JAPAN. ///// 世の中にある「課題」に挑む人たちの想いを伝え、感動と共感の力で、『人の心が動き続ける社会』をつくる。