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///イベントレポート/// #2020PR トレンド総括!社会課題解決の取組の裏側を紹介

2021年1月14日木曜日。首都圏と関西などに緊急事態宣言が相次いで発出され、不安が広がる中、非営利団体などで社会課題解決に取り組む方や、広報・PRに携わる方に向けたイベントを開催させていただきました!
このnoteでは、即レポ的に当日の様子をお届けさせていただくと共に、ご参加のみなさまよりリクエストのあった「アーカイブ動画」についてもご案内させていただきます。

株式会社PR TIMESとmorning after cutting my hairでの共催オンラインイベント、「2020年PRトレンド総括!社会課題解決の取り組みの裏側を紹介」

コロナ禍に起こった社会の変化からPRの変化を振り返り、大きな変化の中で苦しい状況に立たされた企業や団体の打開策として打ち出されたPR事例や、PRトレンド、社会課題解決とPRの関係性についてなどをトークセッション形式でご紹介しました。

イベントのお申込みは70名を超え、2時間のオンラインイベントにも関わらず約9割の方に最後までご視聴していただけた場となりました。
このコロナ禍で表面化した多くの社会課題に対して、「自分はなにができるのか」と悩み迷われている、ソーシャルビジネスに取り組む方、PRを担う方に、答えや希望が見えてくるイベントになっていれば嬉しいです。

1.コロナ禍に起こったPRの変化と課題

今回登壇したのは、株式会社PR TIMESの村上伊周さん、弊社morning after cutting my hair代表の田中美咲、そしてスペシャルゲストとしてお招きした、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの小田起世和さんの3名です。トークセッションのモデレーターには、ご自身もフリーのPRパーソンとしてご活躍中であり、今回のイベントメンバーの出会いの場ともなったPR TIMES主催「4MEETSプロジェクト」の運営としても活動されている“サワディー”こと澤田知之さんが登壇されました。

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まず最初に、PR TIMESの村上伊周さんから、主に企業の情報発信の変化・昨年のPRトレンドについてまとめてお話をしていただきました。

<昨年のプレスリリース等の発信・PRトレンドの特徴>
・2020年3~5月のプレスリリースは減ったが、その後持ち直した傾向にある
・「コロナ」「デリバリー」「おうち時間」など以前にはないキーワードでの発信が増えた
・ひとを気遣う、思いやるといった切り口の情報発信が増えた
・社会貢献業界は「この状況だからこそ支援の輪を広げよう」という動きが強まった


続いて司会の澤田さんから登壇者へ向けて、「コロナ禍でどんなことが印象に残っていますか?」との質問が。
「7月豪雨で、感染対策をしながらの避難という前例のない事態になったこと」を挙げた田中のあと、テラ・ルネッサンスの小田さんからは「生活様式の変化が、消費行動、生活の優先順位、在り方などの再考を進めたこと」という回答がありました。
「もともとあった社会課題が顕在化し、より複雑になった」という点については、モデレーターの澤田さんを含めた全員が感じた課題だったようです。

澤田:PRに関してはどんな課題が生まれたと思いますか?
田中:「PR格差」が生まれたように思います。わかりやすい発信、露出が多い対象に支援が集まりやすくなった一方で、複雑性の高い・わかりづらい課題には支援が集まりにくいというところもあったんじゃないのかな。
小田:著名人の自殺が相次いでニュースになった時期があったかと思いますが、あの頃には何を言って何を言わざるべきかという点が誰にとっても難しい時期でしたよね。生命も精神も、いろいろなところでの危機がすごく高まっていたように思います。

刻一刻と深刻化・複雑化していく課題に、「情報発信で変えていかねば」と考えたという小田さん。澤田さんからは「PRは危機を乗り越える力になり得ると改めて感じる」という言葉もありました。
続けて、危機を打開するために動いたPRの事例として、今回の登壇者たちからそれぞれのプロジェクトや企業・団体でのコロナ禍での施策について発表していきます。

2.状況打開の一手!4MEETSプロジェクトが目指しているもの

2020年5月1日に開始された株式会社PRTIMESの「4MEETSプロジェクト~出会うPR」は、緊急事態宣言で休業状態、あるいは開店休業状態の苦境に立たされている小規模事業者をPRの面から応援するものです。

小規模事業者は「業務転換をどう知ってもらうか?」「営業再開時の告知はどうするか?」などの困りごとが起きても、相談相手が限られてしまうという課題を抱える場合が多いといいます。さらに緊急事態宣言下では、会える相手も限られてしまう……。そんな状況を、全国のPRパーソンとつながるプラットフォームを作ることで「プロに相談できる・提案が受けられる」環境を作り、困難を抱える中でも前向きに動いていく一助となれることを目指したプロジェクトだといいます。
実際に昨年の実施から68件の相談があり、67名のPRのプロとつながる事例が生まれたそうです。PR TIMESの村上さんから、いくつかの印象的な事例が紹介されます。

事例1)スニーカークリーニング店
外出機会の減少や来店者の激減を受け、これまで対面で行ってきた「診断」「リペア」「クリーニング」といったサービスをオンライン化。これまでつながりのあった顧客との関係を継続させるとともに、新しい顧客ともつながることができた。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000064281.html

事例2)学校給食の停止で需要が減ってしまった農家さん

コロナ禍では「応援購入」のような風潮もたくさん起こったが、購入しても一般家庭では消費しきれず結局ロスになってしまうこともある。購入以外の応援の仕組みとして、オンラインでの農業体験を企画するなど、ブランディングの見直しと、新しい販売チャンネルの開拓を行った。
プレスリリース:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000070198.html

4MEETSプロジェクトにご自身も関わる澤田さんからは、「4MEETSプロジェクトが目指すのは、応援者を増やすこと」だというお話も。そのためには、

・既存顧客とのつながりを維持すること
・新しく生まれる支援の受け皿を作ること
・事業者と支援者、利用者の中で応援が相互に行われる状態

を目指したPR支援をおこなっていきたいとのことでした。

3.morning after cutting my hairが気づいた「単純だけど大切なこと」

続いて、弊社代表の田中からの事例紹介。
morning after cutting my hairの社名に込めた想いや「トリプルダイアモンドプロセスモデル」の思想をお伝えするところから、発表は始まります。
防災に関わる一般社団法人を8年間運営してきた仲間で立ち上げたmorning after cutting my hair。社会課題の現場で活動をしたからこそ見えた、「社会課題に取り組むひとや団体が陥りやすい罠」についてもお伝えしました。

<社会課題に取り組む中で陥りやすい罠>
・どんなにいいことをしても、伝わっていない
・いいことをしていそうに見えて、本質的ではない

この罠に陥らないためにも、弊社では「課題の根本的な問い直し」からPRの伴走支援を進めています。

「社会課題解決支援・促進」と「PR・ブランディング」の2つの事業を軸にしてきた弊社。これまでに行ってきた社会課題解決×PRの一部として、以下の事例をご紹介させていただきました。

事例1///石井食品株式会社
コロナと同じく未曾有の大きな「課題」としては、「自然災害」があげられるのではないでしょうか。事例としてご紹介したのは、無添加調理にこだわる企業が作る「非常食」の企画開発・PR支援についてです。
無添加調理とおいしさにこだわり抜く企業が作る「非常食」とは、本質的にどのような価値を持つのか。そのような点から調査をおこない、誰もが安心して食べられる、平時も非常時も心身を労ることのできる新しいおかゆのプロダクトを作成した事例です。(詳細はこちら

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事例2///TRAIL HEADS株式会社・KAYU PACKAGE株式会社
コロナ禍での社会課題とも近しいテーマとしてご紹介したのがこちらの二件。「それぞれが、仕事も、暮らしも、遊びも、全部を楽しみながらシームレスに生きていくこと」をめざすTRAIL HEADS株式会社は、5周年の節目のリブランディングを支援。キャンプをしながら働くワークスタイルの実現や、シェアオフィスの中でアウトドアギアのシェアをおこなうといった「それぞれのワークライフバランス」に配慮した働き方への挑戦をおこなう企業のとりくみをサイト上に整理し、表現するお手伝いをしました。

もう一つが、気候変動を考慮した使い捨ての木製容器「KAYU PACKAGE」。プラスチックのパッケージを木製のものに代替する選択肢を示すブランディング・PRをおこなう中、感染予防のためにテイクアウトが増えたことで、プラスチック容器のゴミが増えるというジレンマに解決策を提示するPRともなった事例です。

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事例3///一般社団法人EARTH COMPANY
社会課題解決を加速させるPR支援の事例としては、インドネシアのバリ島を中心に活動するアースカンパニーさんをご紹介。SDGsなどの社会課題解決に向け、これからの世界のチェンジメーカーとなる「インパクト・ヒーロー」を選出し支援するインパクト・ヒーロー支援事業などをおこなう企業の、PR・マーケティングのチーム体制づくりと自走までの伴走サポートを実施しました。

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PRが「パブリック・リレーションズ」であり、「すべてのステークホルダーとの関係構築」であることを忘れないことが大切だと田中は話します。
忘れがちな「単純だけど、大切なこと」として、morning after cutting my hairからは以下の4つの「PRの本質」をお伝えさせていただきました。

<PRに関する「単純だけど、大切なこと」>
・根本課題はなにか
・自社(企業・団体)の最大の強みや魅力はなにか
・今あるリソースはなにか、どのくらい投資できるか
・結局のところ、誰に何を伝えたいのか

4.テラ・ルネッサンスが迷いの中で見つけた「情報の受け手」への信頼

認定NPO法人テラ・ルネッサンスは、アジア・アフリカ地域で地雷や不発弾の被害者の自立支援、貧困層の自立支援、元子ども兵の社会復帰支援を行い、日本国内ではそれらの活動の講演などの啓発活動に力を注いでいます。海外では「課題に対する対処」、国内ではそれら課題の「予防」を行うことで、本質的な課題解決を目指しています。

デザイナー、ファンドレイザーをメインの役割としながらも、広報やPRにも携わる小田さんから、テラ・ルネッサンスがPRの視点で大切にしていること3つを教えていただきました。

<テラ・ルネッサンスが大切にしているPRの視点>
1.社会を変えるための仲間集め
2.啓発に立脚した「関係構築」
3.既存支援者、潜在支援者共に接触頻度を重視する

既存支援者に対しては、オンライン、オフラインのコミュニケーションを充実させ、潜在支援者は、新聞などのマスメディアからの意図しない出会いを生み出せるようにとりくむという小田さん。
コロナ禍では、主に途上国から「コロナよりも先に、経済に殺される」という悲痛な声が何度も聞かれたといいます。もともと脆弱な状況に置かれていた人々が、困難の度合いを増している。これはきっと国内においても、途上国とは違えど同じような構造の課題は多発しているのではないかと感じる事例でした。

国内でも寄付会員の退会が増え、講演会の中止や延期が相次ぎ、収入減に悩んだテラ・ルネッサンスさんですが、3月から5月にかけて寄付キャンペーンを行ったところ、テラ・ルネッサンス史上最高額の2400万円、921人の資金調達を成功されました。

これによりアジア・アフリカ地域への支援活動が実施され、手洗い設備の設置やマスク着用の啓発活動、元子ども兵の洋裁技術者にマスク制作の依頼や配布活動をすることができたそうです。

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どの国もたいへんな状況下。こんな状況で寄付など集められるのか?という迷いの中で成功したファンドレイジングに、小田さんは大きな希望とある種の反省を感じたといいます。

小田:こんな時に支援を集めようなんて無理なんじゃないか、ファンドレイジングは失敗するんじゃないかという気持ちがありました。だけど実際にやってみたら、「こんな時だからこそ支援できる先を作ってくれて嬉しい」「テラ・ルネッサンスさんがいてよかった」といった声をいただいたんです。皆さん、本当にそれぞれが大変な時期なのに、こんな時だからこそ誰かの助けになりたいと言ってくださる。私たちは情報の受け手を見くびってはならないな、と切に感じました。

5.クロストーク~社会課題におけるPRの意義とは

最後に、モデレーターの澤田さんから登壇者へ向けて「社会課題におけるPRの意義とは」という問いかけがおこなわれます。

田中:PRをする、ことを起こすということは、誰かを傷つける可能性があるということなんだといつも考えています。正しさはそれぞれで違いますし、そういうことを常に忘れないようにしています。正しさの押し付けはしないように。
澤田:コミュニケーションにおいて、正しさの押し付けは分断を生んでしまうこともありますもんね。

村上:私は、PRは社会に対する自分自身の覚悟の表明ではないかと思っています。その覚悟の受け取り方は受け手次第ですが、相手を変える力になり得るのがPRではないのかなと。そういう想いで、プラットフォーム側として何ができるかをいつも考えます。

小田:お二人の話を聞いて思ったのは、PRは「社会課題解決のための情報提供であり、機会提供」なんじゃないかということです。社会課題についてPRしないということは、市民の社会課題解決の機会を奪っているということにもなりうるんじゃないかと。だから、私たちはちゃんとPRをやっていかないといけないんじゃないのかと思います。

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三者三様の話のあとに、最後には三人ともが「PRは面白い」という話題で落ち着いたクロストーク。

コロナ禍によって、これまで見えていなかったさまざまな社会課題が表面化した2020年。支援が集まった課題と、行き届かなかった課題の格差も生まれた現実はあるかもしれません
そんな「PRの格差」も踏まえ、課題が多様化する現在、PRそのものもより柔軟に・多様化していく必要があるのかもしれません。それぞれの企業や団体の状況、実力、強み、理念を正しく見極め、最大限の効果を生み出せるPRとは何か、私たちもまた常に考え続けていく必要があるようです。

「急いでいくならひとりで行け、遠くに行くならみんなで行け」という言葉はよく聞くようになりました。イベント中に出た「PRはひとりではできないというSOS」という田中の言葉にもあるように、仲間と解決したい・目指したい社会があるから一緒に進めていってほしいという意思の表明ともなるPR。
さまざまな事例をお伝えした今回のイベントで、PR、情報発信に携わる方が、それぞれの企業や団体を振り返り、強みを見つけられた時間になっていれば嬉しく思います。
次回の開催希望の声も上がり、途切れないチャットへの書き込みの中でイベントは閉会しました。ご参加いただいた皆さま、ご登壇いただいた皆さま、本当にありがとうございました!

よりよい社会に向かって一緒に進んでいくために、私たちでできることがあればいつでもお気軽にご相談いただければ幸いです。

【お問合せはこちら】
info@macmh-inc.com


なお、 #2020PR のハッシュタグでTwitterでもたくさんのご感想やお声をいただきました。本当にありがとうございます!

リクエストを受けまして、以下にイベントのアーカイブ動画も公開しておりますので、お時間がある方はぜひご視聴ください!

【イベントのアーカイブ動画(Youtube)】


(執筆協力:麓加誉子)
(編集:morning after cutting my hair)

Consulting for Social challenges with Love. based in TOKYO & SHIGA, JAPAN. ///// 世の中にある「課題」に挑む人たちの想いを伝え、感動と共感の力で、『人の心が動き続ける社会』をつくる。