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「いっちゃん」はどこまでもつづく

小学校2年生の時、男子と女子は敵対し「チビ」だの「ブス」だの「デブ」だの、お決まりのお品のない言葉で呼び合っていた。昭和の小学生にありがちな風景だ。すると先生が学級会のときにみんなにそれぞれあだ名をつけて、コテハンで呼び合いましょう、と提案してきたもんだから、学級会はクラス全員のあだ名付け会に変わった。
先生同席のもと、みんなで話し合って決めた名前は絶対だった。

男子は大体苗字の頭を取って「てらちゃん」とか「さっくん」みたいな感じだったと思うけど、女子は比較的「まみちゃん」とか「あっちゃん」とか下の名前に決まっていたにもかかわらず。

私の番になったらある女子が「いっちゃんがいいと思います。」と言い、「いいでーす」「いいでーす」が連呼され、「い」で始まる名字の私は
「いっちゃん」というあだ名に決まった。

えー、わたしも下の名前のあだ名がよかったのに。

残念ながら私は地元幼稚園ではなく、少し離れた幼稚園から小学校に入ったので、知り合いの女子は少なく、その時まであだ名もなかった。下の名前で呼んで、なんて根回しするようなコミュニティを持っていなかったわけ。
そこから延々と「いっちゃん」地獄に悩まされることになる。

3年になり、4年になり、みんなのあだ名はいろいろなタイミングでどんどん変わっていくのに、私のあだ名はずっと「いっちゃん」のまま。

そのまま地元の中学に入ってもかわらず「いっちゃん」、
高校は私立の女子高なのでこれで「いっちゃん」とはおさらばだと思っていたら、同じ学校から6人も進学してしまい、ご丁寧に同じクラスにも配置されていたので、高校3年間も「いっちゃん」。

高校から大学はそのまま持ち上がりだったので、もちろん「いっちゃん」ワールドは続く。大学は某大学のサークルに入ったので、ここでは強引に下の名前押しをして、ここだけは今現在も下の名前で呼んでくれる、貴重なテリトリーである。

さて大学4年のときに就活をして、めでたく一般企業に就職をしたのだが、内定式に行ってすぐ恐ろしいことにきづいてしまった。

同じ大学の、それも同じ高校の同じクラスだったオンナが2人もいるのだ。
「いっちゃんもなんだー」とにこやかに寄ってきてくれるのはうれしいけど、私は膝をがっくり落とし「ORZ」を心の中で体現することになる。

案の定、会社でも彼女たちが「いっちゃん」と呼ぶので、
結婚して退職する 26まで「いっちゃん」でありつづけた。
結婚するまでコテハンを背負うことになってしまったのである。

もちろん私の結婚式の2次会は、中学の同級生から会社の同僚まで、
老若男女だれもが私の話をするときに違和感なく、
「いっちゃん」について会話できたんじゃないんですかね。

誰も自分を知らないところに行ってみたくてしょうがないのに、
いつも誰か知り合いのいる人生。でも離婚するために一人暮らしをしてみて、いつも誰かに見守られているのは、うっかり人間な私を支えてくれるために、運命のように決められているのかもしれないと思えるようになった。

でもどこかで一人になりたかった私は、facebookやtwitterと切り離して、noteだけやっているのかもしれないね。

私は離婚届出すときに旧姓には戻らない届けもだしたので、もうその名字名乗ることはないんだけど、今はその長く続くあだ名が愛おしくさえ感じられるのです。


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