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座敷童子らしきものが出た話

山梨の実家で、座敷童子らしきものが出た話です。

4月の東京は、新型コロナの感染がピークにある時期で、家族の住む福岡に移住しようと計画していた私は、「東京から地方へ移動することは、現地の人からしたらタブー中のタブーであり、仮に強行したととしてもマンション内で噂になったら大変なことになる」と妻から言われ、さらに飛行機に乗ることも大きなリスクとなるため、検討を重ねた結果、残念ながら移住を延期することにしました。

しかしながら、延期といっても、東京のアパートは引き払うことを不動産屋さんに連絡済みだし、住むところもないのに東京に残っても仕方ないし、まさに「行くも地獄、残るも地獄」という八方塞がりの状態となりました。

そこでやむなく、山梨の実家に一旦引っ越し荷物を持ち込み、暫く実家で寝泊りさせてもらうことになりました。

東京から県外への移動には変わりないものの、なんせ田舎だし、一戸建てだし、隣の家とも充分な距離があるし、厳密には正しい行為ではないと思いつつも、幼馴染や近所の人との交流をしないように努め、出来る限りひっそりと過ごしました。

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富士山の麓の自然豊かな地域にて、都会の喧騒を離れ、思わぬのどかな田舎生活となりました。子どもの頃は普通に暮らしていた場所なのに、大人になって住んでみると、改めて田舎暮らしの良さに気が付きます。

富士山ひとつとってみても、今日は雨上がりで鮮やかに見えるとか、今日は雲がかかって良く見えないとか、いつの間にか暖かくなって雪がだんだん減って来たとか、子どもの頃はまったく感じなかったことに意識が向きます。

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クルマが無いとほぼ生活できない場所だけど、クルマとPCとWiFiがあれば、都会で在宅ワークするのと何一つ変わらない暮らしができることにも気が付きました。高校生の頃は、こんな不便なところからは一刻も早く出たいと思っていたのに、都会で30年働いた結果、この不便過ぎる生活も、逆にいいな~と思えるようになりました。

そんな平和な田舎暮らしで、事件が起きました。

実家暮らしが始まってから2週間。田舎の広い古民家のため、仮住まいの私は毎日、離れの座敷で寝ていました。

この日は、かつての仕事仲間とのzoom飲み会が予定より大幅に押してしまい、就寝する頃には、夜も更け切った深夜の2時を回ろうとしていました。

ひっそりと寝静まった深夜、普段なら物音ひとつしないのに、この日はちょっと違いました。

「カタッ!」

「ん?」

「カタカタカタ!!」

「ん???なんか音がしてるな~?」

寝入りばなだったので意識はまだはっきりしており、その物音は、風が起こした物音にしては不自然な、明らかに家の内部で響く音でした。しばらく息を潜めて聞き入りましたが、この日はこれ以上の音がしなかったので、その後、特に気に留めず寝てしまいました。

しかし翌日もまた、深夜に物音が..。

「ガタッ!!」

昨夜より幾分音が増しました。しかも昨日の今日でもあるので、完全に私の意識はこの物音に集中していました。

「うーん、これはラップ現象かな?」


普通の人は薄気味悪いと感じると思いますが、私はこの手の現象には至って冷静に対処できます。

というのも、中学生の頃、心霊現象について自由研究をしたことがあり、よく夜中に墓地に出かけて、ラジカセでラップ現象の録音に挑んだり、霊を呼ぶために怪談を朗読したり、心霊写真を撮りたくてシャッターを押しまくったり、そんな時代を過ごした経験があるので、これくらいの物音には怖いと思うどころか、むしろワクワクしちゃいます。

「もしかして座敷童子かな?」


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写真出典元:二戸市商工会

そう思うと、もはやワクワクを通り越して、遭ってみたい期待感の方が高まってきます。

とはいうものの、この日もまた、絶えず物音が続いているわけでもなく、わりとすぐに途切れてしまうので、「あ~今日もまた行ってしまった」と、落胆する結果に。

いつの間にか私の興味は、「自然豊かな田舎暮らしで心が洗われる」なんてもっともらしい発言などどうでもよくなり、「座敷童子に会えるかもしれない」という1点に集中していました。

もっというと、「座敷童子に会えたらお金持ちになれる」という言い伝えが頭を過ぎり、大人の悪い感情が芽生え始めました。もはや中学生の頃に抱いていた「幽霊に会いたい」という純粋さは欠片も無くなり、頭の中は「欲」だけに支配されていました。

「宝くじ買おうかな?」
「幽霊ビジネスにならないかな~?」
「noteのネタになるな~(載せてるww)」

なんと不純な!なんというばち当たりな!

幽霊を怖いと思わない人は質(たち)が悪いですね。座敷童子は神様じゃないんだから。幽霊というか妖怪なのに。

こんなことが何日が続いたある夜、いつもの離れの天井裏から大きな物音が!!

「ドタドタドターーーーー!!!!」

もはやラップ現象というにはほど遠い、まあまあの大きさの生き物が走り回っているレベルの足音が聞こえました!

「こりゃ、ネズミじゃないな?」「猫かな?」
「トムとジェリーみたいに追い駆けっこしてるのかな?」

この瞬間、これまでの物音はラップ現象ではなかったことを察知した私は、座敷童子に遭えない無念さよりも、この生き物を、なんとかして取り押さえたい衝動に駆られました。これぞ生まれ持っての狩人魂とでもいいましょうか。農家の倅(せがれ)ですがww

とはいえ、さすがに深夜に捕り物をするわけにもいかず、翌日に持ち越しましたが、座敷童子によるラップ現象だと思っていた音が、実は天井裏を駆け回るネズミより大きな生き物による足音かと思うと、その音はもはや騒音としか感じず、その辺に槍が置いてあったら、昔の時代劇みたいに、きっと下から突き刺したことでしょう。

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写真:「美しき大川橋蔵 私の想い出」より

翌日、日中に下から天井のあちこちを、長い棒で突き回ったところ、逆に警戒されてしまったようで、一旦は音がしなくなりました。

「猫なのか?猿なのか?イタチなのか?狸なのか?」


ただ、夜になるとまた走り回るため、どうやらこれは夜行性の生き物ではないかと兄に相談したところ、「ハクビシン」という狸に似た生き物が前にも棲みついたことがあったので、燻煙剤(クンエンザイ)で追い払ったとか。

燻煙剤(クンエンザイ)ではわかり難いけど、「バルサン」という商品名で言うと理解できる人も多いかと思います。ただし、水で炊くタイプでは逃げ出さないので、煙で炊くタイプを使うべきだと、兄は言ってました。

残念ながら、撃退劇を見る前に私が実家を旅立ってしまったため、そのレポートはお伝えできませんが、おそらくは私に代わって兄が、座敷童子を装ったハクビシンを追い払ってくれたと思います。

「幽霊の正体見たり、ハクビシン」


※本当は「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」です。

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