見出し画像

「大地とつながる」

隅田川左岸を下流に向かい走る
蔵前橋を過ぎたあたり 首都高速高架上に 薄緑色の屋根が見えてくる

そこで行われることに 何の関心もなかった
高いカネを払って 行こうとは長年思いもしなかった

しかし 「郷土力士」の存在が気持ちを動かした

郷土 ふるさと 生まれ育ったところ

その地を離れ この東京で生きている彼ら「郷土力士」

お前ら頑張れ 僕も頑張る―この東京で

同じ小学校出身の小兵力士・炎鵬
幅広い人気を誇る相撲巧者の元小結・遠藤
地味で無口 巨躯を生かせず勝ちきれない不器用な取り口に 能登の土と海の匂いを感じる輝
郷土3力士に声援を送り 会場まで足を運ぶようになって1年半―

あの薄緑色の屋根は法隆寺金堂を模したものと聞いた
遠いとおい昔の 日本を代表する木造建築の遺物 その様式を得た建物の下
きょうも
裸の男衆が 肉弾をぶつけ合う

肉をつかみ ちぎっては投げる
足をかけ 相手をひっくり返す
頭からぶつかり合い
コーンと音を立てる
巨体が転がり 砂まみれとなる

その様は
見世物であり
競技であり
ゲーム スポーツでもあろう

しかし 彼らがこの地を平らかに鎮めよ
との 天からの指図で
きょうも ぶっとい脚を高々と上げ
大地につながる土俵を踏みしめる

見ている者に 力と気を与える

彼ら男衆が そのことをどこまで意識しているのか 

無意識下の それら所作が
見る者に 存在の重さを感じさせる

中日
そろそろ 男衆のぶつかり合いを
見に行こうか

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?