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台湾映画『瀑布』は落下と再生の物語

Netflixで観れる台湾映画『瀑布』がとても面白くて、3日間ほど興奮状態だったのでメモしようと思います。

ポスターも好きです

『ひとつの太陽』のチョン・モンホン監督作品。
本作は、第58回金馬奨にて「最優秀作品賞」「最優秀主演女優賞」「最優秀脚本賞」「最優秀オリジナル映画音楽賞」の最多4部門を受賞しています。
日本でも2021年の第22回東京フィルメックスで特別招待作品として上映され、Netflixで2022年1月29日から配信が開始されました。

閉塞感の中で壊れる日常

COVID-19によるパンデミックが始まった直後の台北。娘のクラスで陽性者が出たため自宅隔離を余儀なくされた母娘が、閉鎖的な空間で崩壊していく生活、親子関係、日常を緊張感を持って描きます。

今も大変な状況は続いているのですが、特に初期コロナ禍は、誰しもが落ち込む日々を過ごしたと思います。目立つわけではないし、はっきりと目には見えないけれど、心の奥底が苦しくなる閉塞感。心の問題を抱えてしまったある母娘を、パンデミックという環境も合わせて非常に上手く描いている作品です。

前半は皆がマスクをしています

瀑布=滝というタイトルの通り、落ちて再生して、また落ちて。
生活が崩壊し、希望が見えた瞬間、また問題が起こる。
これって生きていると普通のことなのに、映画の中で見るとドキドキしてしまう。良い意味で最後まで予想を裏切ってくれます。

劇中では、落下や再生を暗示する様々なメタファーが描かれ、それに気づいた時にハッとする。色や光の使い方も印象的で面白いなと思っていたら、監督はCM監督出身とのこと。スタイリッシュさがあるのも納得です。

母娘が住むマンションが改装工事中で、冒頭からずっと窓には青い覆いがされ閉塞感を加速させます。その覆いが取れた瞬間、本当に泣きそうになってしまいました。
また舞台となる母娘の部屋が、すごくおしゃれだったのも見ていて楽しかった。リビングの目立つところに黒澤明「どですかでん」のポスターが飾ってありました。センス良。

ラストの解釈は様々あるようですが、わたしは希望として受け取りました。(実はお母さんの妄想ではないか、という意見もあるようです。なるほど、それも面白い解釈だ!)

コロナ禍は皆にとって大きな変化だと思いますが、たぶんそれ以前にも人と人の信頼関係や、日常は脆いものだったと思います。(パンデミックで顕著になっただけ)
本作では母娘という最小単位の家族の話ですが、滝が流れるような大きな問題が起きた時、大切な人に寄り添い、共感する優しさを持ちたいと思いました。

▼▼『瀑布』に登場するごはん▼▼

そんなに食事が出てくる作品ではないのですが、登場したごはんを簡単にメモします。

カレー
思春期もありあまり上手くいってなかった母娘。そんな中で自宅隔離が決まり、部屋から出てこない娘。夕飯に用意したカレーも「後で食べるから」と一緒に食卓につくことはありません。冷めていくカレーがものすごく寂しく見えました。
また映画後半、母と娘の立場が逆転するシーンで再度カレーが登場するのが本当に上手だなと思いました。

宅配ピザ
劇中2回ピザが登場。このピザには深い意味は読み取れなかったのだけど、ピザを食べる環境は1回目と2回目で全く異なるので、振り返って思い出すと面白いなと思っています。

レストランでのランチ
スーパーの店長さんとのランチシーン。この店長さんいい人だったなぁ。演じる俳優さんは、チョン・モンホン監督の他作品でも出演している常連さんだそうです。

あとは定食やお弁当など、台湾らしい食事も垣間見えて良かったです。定食に味付け卵があるのが見えたんだけど、台湾の卵ってすごく美味しいよね。(いま、魯肉飯に付いてくる茶色の卵のことを想っています)

台湾映画はおもしろい

つい最近、同じく台湾の『返校 言葉が消えた日』を観ていたのですが、主人公が本作の娘役のワン・ジンさんだったということを、今さっき知りました!気がつかなかった…。
『返校』は大ヒットホラーゲームを原作にした映画ですが、面白かったのでこちらもぜひご覧ください!

『返校』のワン・ジンさん
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ほかにも面白い台湾映画がたくさんあるので、近いうちに記事にしたいと思います!

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