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『リトル・フォレスト 冬・春』 どこで暮らしていても美味しいを見つけることは出来る

ずっと観ようと思っていた映画『リトル・フォレスト』をやっと鑑賞したのでメモしました。夏秋編はこちら。

「海獣の子供」「魔女」などで知られる漫画家・五十嵐大介さんが、東北の小さな村を舞台に、旬の食材をいかした食事と自給自足の生活を通じて自分と向き合う若い女性の姿を描いた『リトル・フォレスト』を、橋本愛さん主演で実写映画化した作品。 

今日は『リトル・フォレスト 冬・春』についてメモします。

▼▼『リトル・フォレスト』冬のごはん▼▼

暑く湿気にも負けずに野菜作りを頑張った夏、大変な稲刈り作業が終わった秋がすぎると、冬の小森は雪が積もり、真っ白な世界になりました。

冬編で最初に登場するのは、2色層のクリスマスケーキ
主人公いち子が小さいころにお母さんが作っていたケーキは、かつて作っていた赤米に甘酒を入れた生地と、ほうれん草を使った生地が、縦にきれいに2層になっている不思議なケーキ。長方形のパウンドケーキ型で、ケーキの外側は生クリームで真っ白にコーティング。切ると中身が、赤と緑のコントラストで美しい。

そんな母のケーキをいち子は、黒米の甘酒とかぼちゃを使い、紫と黄色の色違いで2色層のケーキを作ります。パウンドケーキでどうやって縦に2層にするのか?それはぜひ、映画を観てお確かめください!

小森が真っ白に染まる

いち子が「一番のご馳走は何?」と聞かれて答えた納豆もち
納豆に砂糖醤油を混ぜ、つきたてのもちをちぎって入れる、その名の通りシンプルなごはんですが本当に美味しそう!
劇中では、もちつき大会の3日前に煮た大豆を藁に包み、保温効果のある雪穴を掘って埋め、納豆から作っていました。
家でも真似できるけど、きっとつきたてのツルツルピカピカモチモチのお餅じゃないとダメだろうなぁ。

冬は凍み大根や干柿など、食材を上手く保存して活用します。
凍み大根は、大根を切って外に干して乾燥させたもの。にしんと一緒に炊き込んで煮しめに。干柿は大根のなますに入れたりする。
寒さが厳しい地域ならではの、生活の知恵、美味しさの探求。

いち子が以前、小森を離れて街中で暮らしていたときの話。
何か野菜を育てられないかと、カップ麺の容器を使いラディッシュを育てます。(節約も兼ねて)この「何か育てられないか」という気持ち、よく分かる。

そしてスーパーで一緒にバイトしていた男の子の昼食がパン一個だけなのを見て、小森の米で作ったみそ焼きおにぎりとラディッシュの即席漬け、卵焼きが入ったお弁当を作ってあげるのですが…。
ちなみに卵焼きのポイントはハチミツを入れることだそう。このエピソードは少しほろ苦いのですが、お弁当は素朴で美味しそう。

松岡茉優さん演じる友人のキッコとケンカしたいち子。
「他人とちゃんと向き合っているか?」と問われたけれど、それができなくて、いち子は小森に戻ってきていた。いち子のように、ちゃんと納得して住まいといけないという考えも良いのだけど、特に何も語らないけれど、この土地で生きていくと決めているキッコの方が、実はかっこよかったりする。

ケンカの仲直りとしてキッコがカレーを持ってきました。
小麦粉を練った生地を“ひっつまんで”薄くちぎり、汁物に入れて食べる郷土料理「ひっつみ」を朝から仕込んでいたいち子ですが、それを薄く伸ばして焼いてみる。すると、ひっつみがチャパティになりました。
郷土料理からインド料理まで、小麦料理の幅の広さを感じます。

冬編は農作業もできず、いち子は自らの生き方を振り返ったり、考えたりすることが多かったように思います。雪の中を少し散歩して、考えや想いをまとめてみる。1年でそんな時期も必要だと思う。

1st dish:クリスマスケーキ
2st dish:納豆もち
3st dish:凍み大根、干柿
4st dish:みそ焼きおにぎり、ラディッシュの即席漬け
5st dish:あずき
6st dish:チャパティとチキンカレー
7st dish:塩漬けワラビ

▼▼『リトル・フォレスト』春のごはん▼▼

小森の春は、桜や梅とともに田植えもやってくる。冬が終わり一気に忙しくなる。

そして春編で最初に登場するのが山菜の天ぷらタランボ、コシアブラ、コゴミなど、山に入ってすれ違ったおばちゃんも両手たくさんの山菜を持っていたのが面白い。

いち子の母はある日、ばっけ味噌を作って家を出た。このばっけ味噌を作るたび、いち子は出て行った母のことを思い出し、本当に家族だったのかと考える。
「ばっけ」は、「ふきのとう」のこと。ばっけ味噌は、ばっけを味噌と砂糖で炒めたもの。キッコはこのばっけ味噌でごはんを3杯もおかわりした(気持ちは分かる、すごく美味しそう〜)

もうひとつ春といえば、つくし
わたしも子供の頃にばあちゃんと近くの山に入って、つくし取りをしたことがありますが、実はつくしは畑にとっては雑草だそう。いち子は畑作業を困らせるつくしたちを、せめて美味しく食べてやろうと、つくしの佃煮を作ります。
もうしばらく、つくしを食べていませんが、小さい頃はあの苦味が苦手だったなぁ。でもきっと大人になって食べたら美味しく感じるはず。

冬に入る前、蒔くのが遅れて結球しなかった白菜は、春に茎をのばして、つけた蕾は食べられるそう。キッコが薪割りを手伝ってくれた日のお昼には、この白菜の蕾菜と、近くに生えていたノビルを使って塩マスとノビル、白菜の蕾菜のパスタを作ります。
そういえば、いち子の使うお皿もおしゃれでいいなと思った。このパスタを盛るお皿も好きでした。

またお母さんとのエピソードで、パン・ア・ラ・ポム・ド・テールが出てくる。難しい名前の料理ですが、潰したじゃがいもを練りこんだ、じゃがいもパンのこと。
お母さんが作るパンはふわふわで美味しいのに、自分で作ると上手くできない。お母さんからの手紙を読みながら、またいち子は今後の生活について考えるのです。
このパートで出てくる、新ジャガとクレソンのサラダも美味しそう。新ジャガって、ほくほくして春を感じる。

1st dish:山菜の天ぷら
2st dish:ばっけ味噌
3st dish:つくしの佃煮
4st dish:塩マスとノビル、白菜の蕾菜のパスタ
5st dish:春キャベツのケーキ
6st dish:パン・アラ・ポム・ド・テール
7st dish:タマネギ

夏秋編、冬春編と、合計4時間ほどの作品ですが、やっぱり観てよかった!どこで暮らしても、楽しいことも苦労もある。でも自分で美味しいことを見つける・作ることは、どこにいてもできる。
以前、noteにメモした『きのう何食べた?』とはまた違う形で、食べることの大切さを感じた作品でした。

(C) リトル・フォレスト製作委員会

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