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始まりはパンとともに|『モロッコ、彼女たちの朝』

ごはん映画愛好家として、とても楽しみにしていたモロッコ映画『モロッコ、彼女たちの朝』を観に行きました。

『モロッコ、彼女たちの朝』のストーリーは、
臨月のお腹を抱えてカサブランカの路地をさまようサミア。イスラーム社会では未婚の母はタブー。美容師の仕事も住まいも失った。ある晩、路上で眠るサミアを家に招き入れたのは、小さなパン屋を営むアブラだった。
アブラは夫の死後、幼い娘のワルダとの生活を守るために、心を閉ざして働き続けてきた。パン作りが得意でおしゃれ好きなサミアの登場は、孤独だった親子の生活に光をもたらす。商売は波に乗り、町中が祭りの興奮に包まれたある日、サミアに陣痛が始まった。生まれ来る子の幸せを願い、養子に出すと覚悟していた彼女だが……。

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第92回アカデミー賞モロッコ代表。第72回カンヌ国際映画祭 ある視点部門 正式出品となった本作。

まるで絵画のように美しい場面とセリフの少なさで静かな作品に見えるけど、厳しい戒律によって女であるがゆえに息苦しさを感じている二人の女性の共感と連帯は、派手な作品よりも深く胸に響きました。

イスラームの国、モロッコでは戒律が厳しく、この作品に登場する2人の女性は生きづらさを感じています。モロッコでは婚外交渉と中絶が違法であり、病院で産もうものなら逮捕されてしまうという環境。ゆえに、臨月である身なのにサミアは路地をさまよっていた。

対するパン屋を営むアブラも夫を亡くし、女であるがゆえに最後の別れも言えなかったという過去がある。夫と死別・離婚した女性の社会的地位も非常に低い。近年改善の兆しを感じるニュースも見ますが、まだまだイスラム圏では男性中心で、女性の地位は虐げられているんだと知ります。

女性が持つ権利がモロッコにはないという現状がありますが、なぜこの話に共感し胸が苦しくなるのか。SNS上でもこの映画を支持する声を見ます。これはイスラームの国だけの問題じゃなく自分たちにも置き換えられる話。だからこそ国や環境を超えて、たくさん人がこの異国の話に共感しているのだと思いました。

この作品のラスト。
観客に委ねる形で終わりますが、彼女たち(唯一登場するキュートな男性も)に暖かな光に満ちた生活が訪れていればいいなと心から思います。

ちなみに監督の実体験が元になっているそうで、主人公のモデルへ宛てたオープンレターの内容がまた胸を打ちます。

▼▼『モロッコ、彼女たちの朝』に登場するごはん▼▼

この映画のごはんは、さまざまなモロッコのパン!
モロッコはパンが主食だそうで、その種類の多さ、日本にはない形状にわくわくが止まりません!
紐状のパンケーキ「ルジザ」、モロッコ版クレープの「ムスンメン」、主食となるパン「ホブス」など。

アブラが娘のワルダに向かって「(ムスンメンに塗るのは)ハチミツかチョコか」を聞くシーンがありました。おやつ感覚で「ムスンメン」を食べてるんですね。

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公式SNSで「ルジザ」の作り方が紹介されていました!こういう情報は嬉しいですね!

お祭りの日に食べられるというお菓子も登場しました。ビスコッティにもよく似た「フッカス」、三日月の形をした「ガゼルホーン」だそうです。
小さなパン屋さんですが、佇まいが可愛くて好きでした。

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監督のインタビューも読むと、あえて閉ざされた空間で撮影した準密室劇という感じですが、小さなパン屋の裏側、カラフルなクッションが置いてあるソファー、タイルの色、使いやすそうなキッチンなど、日常が垣間見える舞台が素敵だったのでインテリア好きな方も楽しいと思います。

パン屋の店主アブラ役のルブナ・アザバルさんは過去に『パラダイス・ナウ』や、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『灼熱の魂』などで拝見したことある方で、本作でも表情を抑えた演技から、アイラインを引き人生を楽しもうと気持ちが少し動き出す演技がとても好きでした。(写真右)

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生き方や個人の人権(性別問わず)にフォーカスが当たる作品が増えました。また女性監督の作品も、いろんな国の映画がたくさん観れる環境になって嬉しい限りです。ぜひこの作品もいろんな人に観てほしいなと思います。(劇中画像は映画公式SNSよりお借りました)

公開前に本作とクラブツーリズムのコラボ企画で、モロッコのオンラインツアーに参加しました。ZOOMを使って現地の方がライブで街歩きを配信してくれます。オンラインツアーは初めて参加しましたが楽しかったです!
画質は悪いですが、スクショOKだったのでオンラインツアーの様子の写真も貼っておきます。この日は映画の舞台となったカサブランカではなく、モロッコの青い街として有名なシャウエンのツアーでした。

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いつかモロッコにも行ける日がくるのを楽しみにしています。


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