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N 35°35’12.00” E 139°33’01.00”  ここで私自身が生き方や文化を学び、育てられてきた

私にとって「美しが丘」といえば、この場所、かえで幼稚園です。

私が18歳のとき、はじめて実習生として降り立ったたまプラーザ駅は、プレハブのような、ほんとうに小さな駅舎だったことを覚えています。そして短期大学を卒業して、20歳のときの1980年、ここに幼稚園の教師として送られました。
その7、8年前の1973年にこのかえで幼稚園は創設されました。造成されたばかりの場所に建てられたため、当時は樹木も細く小さく、赤土と砂埃が舞うような場所で、庭で遊ぶと顔も体ももう砂だらけになったときいています。ここの丘からざーっと団地から駅まで見渡せるような、そんな風景からはじまったそうです。

私が来た頃は住宅ももうずいぶんできていました。ですから街ができあがった頃、私は幼稚園の教師になったんですね。それでもまだまだバスの本数も少なかったですし、背の高い建物はほとんどありませんでしたね。こんなににぎやかなおしゃれな街になるとは思ってもいませんでした。

どうして私がここ、かえで幼稚園が好きかというと、ここで私自身が生き方や文化を学び、育てられてきたからです。それと、ここから巣立って行った多くの子どもたちが、ここを基点に小学校に行き、中学校、高校に行きながら、この街を愛して、この街を思う人として生きていることを感じられるからです。また、子どもたちのお母さん、お父さんたちにとっても、また旧教職員にとっても、かえでがひとつの出発の場所であり、時折帰ってくる場所であると思えることも嬉しいことです。
40年以上経ち、園舎は古くなりました。庭はけっして広くはありませんし、カラフルな遊具があるわけでもありません。でも、使いこまれた道具や、お父様たちと心合わせてつくった木の遊具や、四季折々の色どりをみせてくれる緑や花などに囲まれている素朴なこの空気に、私はほっとさせられます。

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かえで幼稚園の子どもたちの卒園の記念品は、聖書とのこぎりと金槌なんですよ。聖書もそうですが、のこぎりと金槌を大切にし、大人になってもずーっと使い続けている人たちも多くいます。
なぜのこぎりと金槌かといえば、かえでの子どもたちの好きな遊びのひとつが木工だからです。かえで幼稚園の創設時の主事の先生が造形の教授で、留学先のスウェーデンの幼稚園で木工をする子どもたちの姿を見て、かえでに木工室をつくり、子どもたちと木工を楽しもうと思われていたことと、初代主任の先生にも木工への思いがあったことから遊びの中に木工が位置づいてきました。それで、創設時からずっと卒園の記念は、のこぎりと金槌です。
木工に限らず、遊びの中で手を使い動かすということや、手間暇をかけるということは、やがて自分の楽しみを広げていくことや、その手によって人を助けることにもつながっていきます。子どもたちに手をたくさん使って、心も動かす生活をさせたいな、と思います。

かえで幼稚園の庭は、いまは木々がしっかり根を張り、枝をのばし、木陰が美しく心地よいところになりました。

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