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三島まちなかの独立系書店「ginger books cafe」ができるまで

白滝公園から三嶋大社に向かって流れる桜川沿いには、三島にゆかりのある文学者たちの作品が刻まれた文学碑が立ち並びます。昨年12月、その内の6号碑・若山牧水の文学碑近くに、書店「ginger books cafe(ジンジャーブックスカフェ)」が新たにオープンしました。

鮮やかな空色のドアがお店の目印です

直近だとNHK静岡など、様々なメディアでも取り上げられているこちらのお店。実は昨年私たちが行ったプログラム、「みしますきー」でも出店のお手伝いをさせていただきました。

そこで今回は「ginger books cafe」オーナー、岩村知子さんとの対談記事をお届けします。まちなかエリアを出店先として選んだ理由や、出店にあたって苦労したことなどについてお聞きしてきました。


難航した物件探し

「ginger books cafe」店内でお話を伺いました

――確か物件探しで当社に初めて相談をくださったのが去年の5月くらいでしたね。

岩村さん:そうですね。物件探しが完全に行き詰まったので、とりあえずあちこちに声をかけておけば何かあるかなって思っていました笑
加和太さんがまちづくりに力を入れているっていうのは知っていたので、メールで連絡したらすぐにお返事いただけて、じゃあ会いましょうってなったのを憶えています。

――最初にまちなかを歩いて案内したこと、私もよく憶えてます。結果的に不動産会社はいくつくらい回りましたか?

岩村さん:三島駅の南口から北口まで、本当に端から端まで全部行きましたよ。相談に行っても「うちには物件ないですね」って一蹴されてしまうことも多かったので、沼津の方まで行ったりもしました。

――結構幅広く探されていたんですね。物件探し期間全体としてはどのくらいかかったのですか?

岩村さん:去年の1,2月くらいからなんとなく探し始めて、5月に加和太さんとお会いして、その後「みしますきー」が始まって…といった流れだったので、オープンまではだいたい1年くらいかかりましたね。

――オープン前はポップアップ出店も行っていましたが、どういった経緯で始められたのですか?

岩村さん:物件探しながら、いろいろなカフェとかに行って、「本屋やりたいんです」みたいな話をしていたんですが、チャトラコーヒーさんに行ったときに、店前のスペースで出店できるかも、と思ったんです。思いきってお願いしてみたら「いいですよ」って言っていただけて。最初にやったのが7月で、そこから月1でやるようになって、SOUND TRACK COFFEEさんとか田町カフェさんにも出店して…っていう感じでした。

田町カフェでのポップアップの様子

三島のまちなかへ出店を決めた理由

――先ほど沼津の不動産屋も回ったというお話がありましたが、出店先の候補としては沼津も可能性があったのですか?

岩村さん:いや、三島にお店を出すってことは決めてました。ただ沼津の不動産屋さんも三島の物件情報を持っていたりするので、行ってみたんですよね。

――元々三島に決めていたのは、何か理由があったのですか?

岩村さん:自分が考えていた雰囲気の本屋が合うのが、文化的な雰囲気のある三島のまちだった、っていう感じです。クレマチスの丘で働いていたときに、場所の力というものをとても感じていて。日常から少し離れた場所できれいな景色やアートを楽しみ、そんな場所にあるお店だからこそ買ってもらえる本がある。そんなクレマチスの丘の“まち版”というか、緑と水に囲まれている三島は、ちょっとした非日常感が味わえるまちだと思うんですよ。そういう意味では、地元の人だけではなく、東京からのお客様も呼べるポテンシャルがあるまちなのでは、と思っていました。

クレマチスの丘併設のミュージアムショップ「NOHARA BOOKS」

あとは物件探しをしながら気づいたところでもあるんですけど、三島はやっぱり“歩けるまち”っていう感じがしています。実際にお店でもよく言われるんですよ。この間も、沼津から来てくれた人が「三島は歩いている人がたくさんいて羨ましい」って話してましたし。

――そうすると、三島の中でも郊外はあまり選択肢になかったのですね。

岩村さん:郊外も一応候補にはあったんですよ。たとえば駐車場がちゃんとあるところであれば、もうちょっと山の方でもお店を目指して来てくれる人がいるのかなとは思ったんですが、 物件的にも見つかりづらくて。最初はしっかり店内で食べたり飲んだりできるようなカフェ機能のついたお店にするっていう計画もあったので、郊外でも可能性はあるのかなと考えていました。

「ginger books cafe」がまだ今の姿になる前の様子
入口の扉も元々は白でした

実際、自分一人でも目が届くこの規模感で、しかもお店の前を大社に向かう人とか、たくさんの人が通るこの場所でお店ができたのは、よかったことしかないですね。

「みしますきー」に参加してみて

――昨年は「みしますきー」にも参加いただきましたが、なにかエントリーするきっかけはあったのですか?

岩村さん:当時はとりあえず本当になんでもやってみようと思っていたので、勢いで参加して。違うと思ったらやめるのもありかな、くらいの感じでした。でも、ホームページとかを見るとすごい人たちが出るところなんだなって感じがして、単純に「お店を出したいです」みたいな雰囲気だと、選考には通らないだろうなと思っていました。

――確かにメンターの顔ぶれだけ見ると壮大なものに感じてしまう部分もあるかもしれませんね。そう思うと、実際に集まった方々は三島のまちにお店を出したいという人たちがほとんどだったのは印象的でした。では、プログラムの中で特に印象に残っていることはありますか?

岩村さん:この物件に出会えたのは最初のイベントでのまち歩きのときだったので、それはとても大きな出来事でした。私が歩道から離れて物件の中を見に行ったのを憶えていてくださって、募集していた不動産業者さんに話をしてくださったのが始まりなので。「みしますきー」運営事務局の皆さんも何か聞けばすぐに動いてくださるし、わからないこともすぐに調べてくださるし、とても頼りになりました。これから事業を始めようという人には、自分であちこち歩き回って人脈を作ることも大事だと思いますが、何かあったときに相談できる場所を作っておくと、ひとつ安心材料になりますよ、とお伝えしたいですね。

昨年8月に開催したプログラム説明会&物件ツアーイベントの様子

あとは、やっぱり野田千絵さんのブランディング基礎講座ですかね。「ブランディングって何だろう?」ってところからだったので、勉強になりました。個人的にはあまり講座みたいなものに参加することはなかったので、学校みたいで面白かったですし、講師の野田千絵さんも最初は色々と悩んだり、軌道修正したりした、みたいな話をしてくださったので、「みんなそうなんだ!」と思えて心強かったです。

全3回のブランディング基礎講座では、自らの事業コンセプトについてみっちり考えました

――思えばあの講座がメンバー同士も初めての顔合わせの場でしたね。講座をきっかけに、メンバー同士が仲良くなってくれたのは嬉しい誤算でした。

岩村さん:年齢も属性もバラバラでしたけど、事業実現の目的に向かって一緒に頑張ろうね、みたいな一体感は生まれていたのかもしれないですね。

これからの「ginger books cafe」

――オープンしてもうすぐで半年が経とうとしていますが、これからチャレンジしていきたいことはあったりしますか?

岩村さん:もっと在庫数は増やしたいなと思ってます。本も雑貨も今の倍ぐらいはあってもいいかもしれないですね。お店に入ってきてくれる方はだんだん増えてきたんですけど、何も買わずに出ていってしまう人もまだいらっしゃるので。ここに来たらつい何か買っちゃう、みたいな感じにしていきたいなって思ってます。そのためにも、もうちょっと選択肢があってもいいのかなと。

店内には岩村さんセレクトの本や雑貨が所狭しと並びます

例えば「LOFWA」さんの、三島のせせらぎをテーマにしたアロマミストはすごい人気があるんですよ。三島のお土産として買って行く人もいるし、三島の実家に帰省していた人が、三島の香りを今の住まいに持って帰ろうと買って行くこともあります。これからもできるだけローカルな雑貨とかは増やせたらいいなと思います。三島にはまだまだクリエイターがたくさんいらっしゃると思うので。

棚に陳列された「LOFWA」のアロマミスト

あとはまちなかエリアのマップを作成しようと考えてます。同じ独立系書店のヨットさんとか、よく行き方を聞かれますし、ランチの美味しいお店とかポイントで紹介できたらいいなと思って。コーヒー屋さんがここにあるよとか、まちなかを歩きたくなるマップにしようかなと。手書きで自分で作ったりもしたんですけど、次はちゃんとデザインのできる人に頼もうと思います!

岩村さん作・みしままちなかマップ

――岩村さんはもう完全に「みしますきー」ですね。自分たちもマップはずっと欲しいなと思っていたので、完成したらぜひ我々からも発信させてください!

店舗情報
ginger books cafe(ジンジャーブックスカフェ)
住所:静岡県三島市芝本町3-10
Insragram:https://www.instagram.com/ginger_books_cafe/

▽事業相談や物件活用のお問い合わせはこちらまで
machinaka@kawata.org(加和太建設 まちなか事業室)