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公共施設「マネジメント」を改めて考える

公共施設マネジメントが進まない

全国の自治体が頑張って進めているはずの公共施設・インフラの老朽化やニーズとの乖離、更新経費不足等を解消しようとする「公共施設マネジメント」、残念ながら現在も完璧に解決し、日常的なマネジメントの段階へ移行できている自治体は全国にひとつもないと思います。

ということは、もしかしたら『公共施設「マネジメント」そのものを履き違えていないだろうか?』という気がしてきました。
今回のコラムでは、少し概念ベースで改めて公共施設「マネジメント」を考えてみたいと思います。

総務省主導の公共施設の「総量見直し」

総務省が2014年に公共施設等総合管理計画の策定要請を出してから、既に7年もの時間が過ぎています。

地方公共団体にとって、2000年の地方分権一括法の施行により国と地方の関係が対等となったなかでの「要請」は命令に近く、ほぼ全ての自治体が「要請」に従い公共施設等総合管理計画を定めました。
その後も、総務省の方針に従い個別施設計画の策定や2021年度末までの総合管理計画の見直しなどを進めています。

しかし、「PPP/PFIに最初に取り組むときに読む本」で様々な角度から記しているとおり、残念ながら総量縮減にフォーカスを絞った公共施設の「総量見直し」は、あれほど先進自治体として紹介されていたさいたま市、習志野市、秦野市等でもうまく進みません。
(横手市・福知山市等の一部の自治体では施設総量もこの数年間、本当に関係者が努力して削減していますが、これらの削減した施設のうちかなりの部分は老朽化・合併による重複等で「既に何らかの財産処分が必要だったもの」です。)

1,700以上の自治体が総務省からの異例とも言える「要請」に従い、公共施設の総量見直しを進めても、量を減らすことも難しく、更に量を減らしても大半の自治体では人口減少に歯止めはかからず、まちは加速度的に衰退してしまっています。
総務省の主導するのは机上の理論・財政上の制約をベースとした公共施設の「総量見直し」であって、公共施設マネジメントとは本質が異なります。

量産型PPP/PFI事業

2015年度に内閣府・総務省の連名による「多様な PPP/PFI 手法導入を優先的に検討するための指針」が、これも人口20万人以上の自治体を対象に総合管理計画と同様に「要請」されました。

https://www8.cao.go.jp/pfi/yuusenkentou/tsuuchi/pdf/yuusenyousei2-0.pdf

この要請に記されたモデルケースで「総事業費10億円または年間の維持管理費1億円以上」の事業がPPP/PFIの対象となること、更に簡易的な検討ではPFI法に基づくPFIが前提とされていることから、サービス購入型のPFI-BTOが注目されることとなりました。

https://www8.cao.go.jp/pfi/yuusenkentou/sakuteitebiki/pdf/sakuteitebiki_12.pdf

こうしたなかで、前述の公共施設の改築・集約・複合化等を目的とするPFI事業も各地で広まってきました。しかし、残念ながらこうした「事業」の多くはハコとしての公共施設を、ハコとして「新しくする・寄せて集める」ことが目的で、「点」としてのハコモノ更新にしかなりません。
また、(こうした事業の大半は、旧来型行政の思考回路をベースとした仕様発注に近いため、)従来型の公共サービスを踏襲して提供しているに過ぎず、本当の意味で民間事業者が創意工夫を働かせる余地は少なく、経営的なメリットも発生しにくいものとなってしまいます。

Park-PFIも同様で、本来は民間の経営感覚を都市公園にビルトインすることで魅力的な公共空間を創出することを目指していたはずですが、(制度としてはPark-PFIではありませんが、大阪市のてんしばなど魅力的な都市公園も急増していることは間違いないですが、)膨大な税金を投下して基盤を整備し、ナショナルチェーンのカフェをリーシングしているだけの事例も全国で拡大してきています。

やってます行政≠「マネジメント」

このように、「計画を作ること」や「制度を使うこと」が目的化してしまい、公共施設「マネジメント」になっていないのではないかということが、このコラムであり、弊社としての問題意識となっています。

バブルの頂点までの右肩上がりの時代の行政は、国の指針に沿うことや委託先のコンサルタントが作成する報告書に沿って恙なく事務・事業を進める行政運営で成立してきました。そして、これらを体裁良くこなしているまちが評価されてきたと思います。

次第に都市間競争という概念が広まり、様々なメディアで自治体のランキング付けがされるようになってくると、「その政策がまちへどのようなリターンをもたらせているか?」という本物の費用対効果ではなく、「何をやっているか」の表層的・短絡的な事象が評価軸と捉えられる風潮が広まってしまいました。
このようにして、「やってます行政」たる文化が全国に浸透し、その一端が公共施設の分野にも波及し、計画策定や割賦払いに近いハコモノ整備をしている自治体が先進事例として紹介されてしまっているのではないでしょうか。

しかし、人口減少、少子・高齢化に加え東日本大震災や毎年のように発生する自然災害、更にはコロナ禍と社会経済情勢や自然環境が激変するなかで、旧来型の「行政運営」、「やってます行政」では全くリアルな社会に太刀打ちできません。
これまでの総量縮減を中心に据えたザ・公共施設マネジメントも同様です。

要は、これまでのやり方では公共施設(やインフラ)を「マネジメント」することはできませんし、この数年間でほぼ全ての自治体がそのことに明確に、少なくとも朧げながらも気づいてきているはずです。
冷静に考えればわかると思います。量を減らすことだけが「マネジメント」であるはずがありません。

原点に戻って「マネジメント」とは?

ドラッガーのマネジメント

マネジメントといえば、やはりP.F.ドラッガーのマネジメント(エッセンシャル版)ですね。かなり難しいので、自分も「もしドラ」と並行してかなり前に読みましたね。

ニュアンスは異なるかもしれませんが、自分の理解によると「マネジメント」や「企業の役割」については次のように記されていると思います。

(マネジメントの3つの役割)
1)その組織に課された特有のミッションを達成する
2)仕事を通じて働く人の自己実現を図る
3)社会の問題の解決に貢献する
(企業の目的)
企業は社会の機関であり、目的は社会にある。したがって、企業の目的として有効な定義は一つしかない。顧客の創造である。
(企業の二つの基本的な機能)
マーケティングとイノベーションである。この二つの機能こそ企業家的機能。

公共施設に当てはめると

これらを総合して公共施設「マネジメント」に、組織・企業としての自治体(≠執行機関としての行政)を当てはめてみると、

1)特有のミッション≒まちを経営すること
2)働く人の自己実現≒職員だけでなく市民・民間事業者等も(直接だけでなく間接的・反射的にも含み)公共資産を利活用して自己実現できる
3)社会の問題に貢献≒少子・高齢化、人口減少(→正しくは人口流出)、財政逼迫、空き家・空き店舗。。。等のまちの課題の解決に公共資産の利活用で貢献

することがマネジメントになるでしょう。

このように考えてみると、公共施設マネジメントの目的を一昔前の行財政改革の思考回路で「カネがないなら減らせばいい」と短絡的に総量縮減に据えること自体が、問題を矮小化しているように感じられないでしょうか。
このような概念では、もはやそこに「マネジメント」におけるクリエイティビティは介在する余地が残っていません。

量を減らすだけでは利用者を中心とした一部の市民にとって「生活を行政に一方的に切り取られる」ので反発するでしょうし、そもそも納税をきちんと行い設置管理条例に従って施設を予約し、定められた使用料・利用料を支払っている市民は何も悪いことをしていません。残念ながら、公共施設の問題を発生させたのは行政が経営感覚を持っていなかったからであり、市民に責任転嫁しようとするから怒られるのです。
「財政が苦しいから」「将来の子どもたちに負担を残さないように」と言われても、そこから発生する事象が目の前のハコモノを壊す(≒自分の生活・コミュニティの一部を切り取られる)もので、暗いものだったら賛成・賛同・理解のしようがありません。

だからこそ、本当の意味での「マネジメント」が求められます。
「特有のミッション≒まちを経営する」ことだと捉えなおせば、行政の保有するハコモノをクリエイティブに利活用することで、サービスの質が向上するだけでなく新たなサービスが創出されます。それに伴う新規ビジネス、雇用の創出、エリア価値の向上、魅力的なエリアになっていくことで発生する感性に呼応した人口の流入等が発生するかもしれません。
その結果、固定資産税・法人税・市民税・都市計画税などの税収も増加し、「財政が苦しいから」といって廃止する予定だった施設を保有し続けることができるかもしれません。凍結していた政策や新たなプロジェクトも動かすことができるかもしれません。

まちをクリエイティブに経営すること、それこそが本当の意味での「マネジメント」ですし、市民から期待されていることではないでしょうか。

マーケティングとイノベーション

「マーケティング」は自分のまちをきちんと把握し、強みと弱み、今やるべきことを明確にしていくことです。

公共施設「マネジメント」では「データの見える化」に該当するでしょう。確かに公共施設の用途・延面積・築年数・光熱水費・修繕履歴等の基礎データは様々なプロジェクトを検討していくうえで重要なものです。
実際に、公務員時代には公共施設マネジメントに特化したシステムを業務委託で構築し、全施設の毎月の光熱水費、全ての修繕履歴、毎年の施設アンケート結果などのデータを蓄積していました。
これを活用することで、東日本大震災後の緊急節電では17,000千円/4か月の電気使用料の削減につなげたり、保健センターや庁舎等の7施設包括型などの各種ESCO事業、包括施設管理業務委託などの検討が可能となり、非常に役にたちました。

公共施設の適正管理や「自分たちの襟を正す」ための様々な事業のためには、ザ・公共施設マネジメントの範疇となる基礎データがあれば十分かもしれませんが、ザ・公共施設マネジメントだけでは公共施設マネジメントはできません。
公共施設に関する基礎データは、当たり前のことを進める(≒自分たちの襟を正す)ための必要条件となりますが、本当の意味での公共施設マネジメントを進めるための十分条件にはなりえません。

土地利用状況・高低差・路線価・人口集積や推移の動向・用途地域・道路網・各種計画におけるエリアの位置付け等、行政が通常業務のなかで保有・意思決定・誘導・調査できるデータがレイヤーとして加わることで、まちを多面的に考えることができるようになります。
それだけではなく、そのまちにある物販店・飲食店・スポーツクラブ等の立地状況やそこでビジネスを展開する地域プレーヤーの意向、そのまちのホンモノの地域コンテンツ、歴史や文化等。従来型の行政は持っていない(、必要とされていなかった)けれども、まちに現実として存在するレイヤーも、プロジェクトベースで「まちを経営」するためには必要なデータ、マーケティングの一環となってきます。

「イノベーション」は技術革新と訳されることが多いと思います。
日本では、膨大な開発コストを投下して長期にわたる研究開発の結果として生み出される「新しい革新的な技術」を、イノベーションとして扱っているのではないでしょうか。

しかし、「創発的破壊」(米倉誠一郎著)によると、必ずしも新しい技術ではなくとも「やり方の工夫」や「発想の転換」により爆発的に効率性が飛躍したり、成果が向上することを創発的破壊≒イノベーションとして取り扱っています。

包括施設管理業務委託は、地方財政法の原理原則である事業別予算やそれぞれの施設所管課が個別に施設管理を行なっていた非効率的な施設管理を、予算を一本化して包括発注するだけでなく、巡回点検や小破修繕のビルトインによる管理水準の向上など「効率化」以外の多くのメリットが創出されます。
そうした意味では、小さなイノベーションと呼べるかもしれません。

ESCOも同様ですね。「PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本」でも紹介していますが、シェアード・セイビングス契約の場合は、空調・照明等のエネルギーを民間資金・ノウハウによって総合的にマネジメントし、その光熱水費等(←ここに関連する保守関連コストなどの固定費相当額も見込むのが流山方式)の削減相当額をフィーとして支払っていく仕組みです。
古い空調・照明設備を新たな財政負担なく更新するだけでなく、長期間にわたってエネルギー負荷をコントール・保証してもらえるので、オーナーからみても大きなメリットがあります。

一般的に建築物は、設計段階でどのように使うか想定が難しいため安全側に設計され、結果的にオーバースペックになっていることが多いです。これをESCOでは経済合理性・環境負荷・温熱環境などを総合的に分析し、ダウンサイジングしていきます。このあたりが通常の設備更新やリースとは大きく異なる点となります。

流山市で実施したESCO事業では、保健センター(延べ面積2,310㎡)などの小規模な施設を対象とするため、民間事業者にとっての事業としてのスケールメリットが不足します。そこで、みかけの事業費を大きくするため小規模補填として事業費の一部を発注者(流山市)が負担することで事業を成立させています。
更に、市役所等7施設を一括発注したバルクESCOでは、小規模補填に加え7施設をバンドリングすることで800〜1,000㎡程度の施設でもESCO事業の導入に成功しています。
生涯学習センター、ケアセンター、森の図書館では、指定管理者が管理(光熱水費も指定管理委託料に含む)している施設でもESCO事業により空調・照明を更新するとともに、総合的なエネルギーマネジメントが提供されています。
慣例とされていたフィージビリティスタディの代替として、省エネルギーセンターの無料省エネ診断と、簡易な条件でプロポーザルを実施し事業の詳細は優先交渉権者との交渉で構築していくデザインビルド型を採用し、効率化が図られています。

このように考えると、ESCO事業そのものも「やり方を変える」という面でのイノベーションですし、「小規模補填・バルク・指定管理者への導入」も同様に小さなイノベーションと言えるでしょう。デザインビルド型の採用も、細かい部分ではありますが、従来の慣例にとらわれず「できる方法」からブレイクダウンしたイノベーションと考えられます。

イノベーションは「どうやったら目の前の課題を解決できるか?」から持てるリソースとにらめっこして考えていけば生まれる可能性があるのではないでしょうか。

ホンモノの公共施設マネジメント

まちの再編と公共施設マネジメント

多くの自治体の公共施設等総合管理計画では、目的を「施設総量を◯年で◯%削減すること」と、前述のように量を減らすこととしています。
施設総量の縮減は、合併等で重複した施設、社会ニーズにあわなくなった施設、老朽化して利用に支障が生じている施設など、人口減少や社会経済情勢の変化に伴い粛々と進めることが不可避で喫緊の課題であることは間違いありません。

ただし、こうした「施設総量を縮減」することはまちを再編していくための途中経過であり、まちの新陳代謝を促していくための必要条件でしかありません。
点としての公共施設を削減していくだけのザ・公共施設マネジメントばかりでは、まちに失望した動ける人たち(お金を持っている人・他のまちでもビジネスできる人・若くてゼロからやり直しができる人)、まちを支えてくれる人たちから流出していきます。結果的に税収も減っていくので、更に公共施設を廃止したり事務事業を凍結していかなくてはならない負のスパイラルに陥っていきます。
この負のスパイラルを行政が政策≒ザ・公共施設マネジメントで助長させてしまっているのは、皮肉ですが残酷な現実です。

行政に求められているのは、持続可能な自治体を経営することです。
公共施設・インフラの更新経費のために他の公共サービスが提供できないまちでは困りますし、通学・仕事・医療・商業等の環境が整っていないために不便を生じるようなまちでは物理的に生活できません。持続可能性とはSDGsのような標語の問題ではなく、一人ひとりのミクロな生活レベル、そしてまちとしてのマクロなレベルでの問題だと思います。
だからこそ、公共施設マネジメントは「まちの新陳代謝を促しながら、まちを再編」し、まちを魅力的にしていく手段のひとつになる必要があると考えます。
このスパイラルのなかで新しいビジネス・雇用・人の流れが生まれ、サービスが充実することで居を構える人・本社を構える企業が増加し、エリアの価値が高まり固定資産税・都市計画税・市民税・法人税等が増加していく。エリアとしての都市機能の集積・経済の循環が発生するから学校などのサービスも提供できる。
そのときの媒介になりうるのが、公共資産ではないでしょうか。

公共資産は存在することや点として公共サービスを提供することだけが価値ではなく、「まちを魅力的にしていく媒介」です。つまり、公共施設はまちのなかで存在しているのであり、公共施設・民間施設と分けて考えていること自体がナンセンスなのです。
公共施設を自治体経営・まちづくり、そしてまちの再編のために本格的に利活用しようとすれば、公共施設等総合管理計画でもそのまちにある民間類似施設は当然にプロットされているはずです。

流山市_公共施設等総合管理計画_民間施設のプロット(福祉施設)

常総市_保育所を小学校へ

常総市では耐震診断の結果、緊急避難が必要となった保育所を小学校に機能移転・集約しています。公共施設マネジメントの観点で考えれば集約・複合化となるわけですが、常総市が広報や公式noteで案内すると全く異なる文脈となります。

施設の建設から40年以上が経過した保育所を、子どもたちの安全を最優先させるとともに小1ギャップの解消などを目的に、保小連携の取り組みをより一層子どもたちの成長に繋げるため、小学校の余裕教室を改修した保育所の移転工事を進めてきました。

https://joso-city.note.jp/n/n162dd21c2fb8
広報常総_2020年12月号

これらの媒体では公共施設マネジメントの「こ」の字も出てきません。保小連携を目指して保育所を小学校に入れることでどのような効果があるのか、今までよりも何が良くなったのか?そこにフォーカスを絞って案内をしています。
別に公共施設マネジメントを「都合の悪いもの」として隠しているわけではありません。市民に対して伝えるメッセージとして何が重要なのかを考えれば、大切なのは公共施設マネジメントではなく、「サービスがどう変わったのか?」「子どもたち・親御さんにとってどんなメリットがあるのか?」です。

そもそも、公共施設の問題は行政が経営感覚を持たなかったことで発生させてしまった問題です。原因者である行政が「公共施設マネジメントで。。。」などとドヤ顔で自慢することではありません。テクニカルなことはプロとして粛々とやれば良いことなのです。

こうした面でも公共施設マネジメントとは、点としての公共施設の統廃合などではなく、それぞれのプロジェクトを行うことでどのようにまち・サービスが変わっていくのかがポイントですし、クリエイティブなものであるはずです。

南城市_トライアル・サウンディング

南城市では、庁舎等複合施設を活用してトライアル・サウンディング(民間事業者がやりたいことを試行的に実践しながら本格的な利活用の可能性を探る仕組み)を実施しています。

南城市の庁舎等複合施設は60億円をかけて整備した巨大な施設で、敷地内・建物内には多くの余裕スペースがあり、十分に活用されていない状況でした。
「市民に親しまれる庁舎」を目指していたことから、手続に訪れるだけでなく民間ベースで市民に身近なサービスも提供できる場にしていく可能性を探るため、トライアル・サウンディングを沖縄県内では初めて、そして庁舎では全国で初めて実施することとなりました。

南城市がウェルネス(健康)に力を入れていることもあり、キッチンカーなどの「よくあるコンテンツ」だけでなく早朝ヨガ、マッサージ、エステ、簡易託児所、ネイルサロロンなどのコンテンツが次々と庁舎のあちこちで行われています。

南城市_庁舎トライアル・サウンディング_早朝ヨガ

更に、本来はトライアル・サウンディングの対象ではなかったはずの庁舎に隣接する公共駐車場ではドライブインシアターも行われています。

南城市_公共駐車場_ドライブインシアター

このような取り組みを積み重ねてきた結果、公共駐車場の一部にはなんと完全民間資金でスケボーパークもオープンしています。

南城市_公共駐車場_スケボーパーク

南城市の庁舎は22:00までフリースペースを開放していることや地域公共交通であるNバスの発着点を兼ねていることもあり、中高生がフリースペースで談笑したり勉強しています。
もはや、ここが公共施設なのか民間施設なのか、その境界線が良い意味で曖昧になってきています。これもトライアル・サウンディングをやり続けたことによる副次的な効果ですが、公共施設マネジメントが「まちの再編」を目指すものであれば、このようにまちに公共資産が溶け出す、民間コンテンツを公共資産に積極的に取り込むことも大切でリアルなプロジェクトのひとつになると思います。

ちなみに、何十もの民間事業者がトライアル・サウンディングに参加しているわけだが、これは「待っていて集まった」のではなく、南城市の職員の方々がまちなかに出向いて営業してきたことが大きな原動力になっています。

随意契約保証型の民間提案制度

このように、ホンモノの公共施設マネジメントを進めていくうえでは行政だけで、しかも旧来型の思考回路・行動原理や計画行政だけではうまくいきません。柔軟な発想でまちとリンクしながら、公共資産を媒介としながらまちをどう再編していくのか、そうしたことが求められます。
つまり、そのまちの持つ地域コンテンツや地域のプレーヤーの方々と連携しながら、地域課題にあったプロジェクトを蓄積しながらまちの新陳代謝を促していくことが大切です。当然、そのためには民間事業者の方々と行政がビジネスベースで手を組んでいくことが必要となります。

2021年12月現在、約40の自治体で随意契約保証型の民間提案制度が事業化されています。流山市のFM施策の事業者提案制度では次のように書かれています。

流山市では、他自治体や民間事業者からの提案・アイディアを基に「2つのPPP(Public Public Partnership:官々連携/Public Private Partnership:官民連携)による各種FM施策を展開しています。
「FM施策の事業者提案制度」は、この発展形として「本市のファシリティを使ってできること」について民間事業者のノウハウを生かした提案を求め、採用された案件について、本市との協議(デザインビルド)により詳細協議を行い、諸条件が整った場合には提案者と随意契約して事業化します。
(FM施策の事業者提案制度の特徴)
FM施策の事業者提案制度は、流山市の「2つのPPP」によるFMをより効果的・効率的に進めていくための重要な制度です。協議成立時に提案者と随意契約を締結して事業化することが最大の特徴と成っています。
(流山市の通常のFM施策との違い)
通常のFM施策は、(他自治体や民間事業者からの提案も受けつつ)流山市として対象施設・事業概要等の条件整理を行い、できるだけ早い段階でプロポーザルコンペを実施し、詳細は優先交渉権者との協議(デザインビルド)により決定しています。
「FM施策の事業者提案制度」は、テーマ(対象施設・事業概要等)を定めず、民間事業者から「流山市のファシリティ」でできることを自由に提案してもらうものです。
(市場化テスト・行政サービス民営化制度との違い)
市場化テストや行政サービス民営化制度は、あらかじめ行政が「既存の行政サービスの枠内」で既存の事務事業のパートナーを募集するものですが、「FM施策の事業者提案制度」は、流山市のファシリティを活用する事業であれば、内容や規模は問いません。
市場化テスト等と比較して、「行政では思いつかない・民間ならではのノウハウを活用した」自由で広範な提案を期待するものです。

https://www.city.nagareyama.chiba.jp/information/1006912/1006966/1006978/1006979.html

民間事業者はそれぞれ自社ならではのノウハウ、知的財産を保有しています。
民間事業者の方々に知的財産を活用して、公共資産でクリエイティブなプロジェクトを展開していただくのが随意契約保証型の提案制度のポイントです。
(もちろん、小手先だけでやっては全く意味がありませんが、)行政がまちとリンクしていくための手法として非常に有効なものだと思います。

そして、この随意契約保証型の民間提案制度も流山市・我孫子市などが始めた頃は行財政改革や公共施設マネジメントがターゲットになっており、どちらかといえば民間事業者が「行政課題を解決するため」に「行政に寄せた」提案をすることが慣例になっていました。
しかし、ここ2〜3年で急速に随意契約保証型の民間提案制度が普及するなかで東村山市のように「東村山市に関連したもの」を全て提案対象にしたり、常総市のように「乳酸菌の活用」などハコモノとは全く異なる提案を採用する事例が現れています。南城市では、2021年の提案制度で「ポストコロナ時代を見据えた行政サービス」と市のテーマであるウェルネスから派生した「予防介護」をテーマとして設定しています。
公共施設マネジメントの枠を凌駕する自治体経営・まちの再編につながるものも、提案制度の範疇に入ってきました。

公共施設マネジメントを進めるために

ここまで見てきたように、公共施設マネジメントが進まないのは旧来型の行財政改革の事務事業・コスト・人員削減と同様に「カネがないから公共施設を減らせば良い」と、ハコの総量にフォーカスを絞ったことに原因の一端があると思います。
行財政改革では行政が自ら「身を切る」こと、「襟を正す」ことである程度の成果がコスト削減という面だけ考えれば見えましたが、公共施設は市民生活・まちとリンクしています。もちろん、(経営感覚を持たずにイニシャルコストだけを調達して整備してきた)施設総量を削減していくことは自治体経営上、不可避で喫緊の問題ですが、それ以上にまちの魅力を高めて新陳代謝を促していくことが重要です。

そのためには、行政が発想を転換していくことが欠かせません。庁舎に閉じこもり計画ばかり作ったり眺めたりしていても、そこにはヒントも解決策もありません。
公共資産はまちとリンクしています。
だからこそ、まちへ積極的に出ていろんなものを見て感じて、いろんな方々と話をしてつながっていく。それこそが本当の意味での生きた「マーケティング」です。
そして、目の前にある課題に真摯に向き合い、持てるリソースを分析しながら徹底的に手を動かして試行錯誤をしていく。そのなかでオーダーメイド式で具体的な方法論を見出すことが「イノベーション」です。
自治体≒企業に求められる2つの機能、マーケティングとイノベーション、これを公共資産を活用しながら行っていくことがマネジメントとなります。

更に、組織に特有のミッションが「まちを経営」することだと捉えれば、ハコモノとしての公共施設をどうするのか?といった狭い視野ではなく、公共施設マネジメントはまち全体を対象としたもっとクリエイティブで楽しいものになってこないでしょうか。

まちみらいでは、こうした思考回路・行動原理をもとにこれからも多くのまちで多くのプロジェクトに関わっていきたいと思います。

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