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読み終わって、「いい加減な客であろう」と思った本


なぜ働いていると本が読めなくなるのか:三宅香帆


…なんでなんだろう。



まさにそう思ったことをきっかけに、手に取り読んだ本


それは、私が30歳を越えたあたり、育児と体調不良をきっかけにして正社員→時短正社員→フリーランスと、働く形態・時間・業務内容を変えていき、その中で起こった自分自身の読書への感じ方の変化と重なったから。

時間自体は、探せばある。その時間スマホはいじれるけど、本は読めない。

自分から遠く離れた文脈に触れること一それが読書なのである。そして、本が読めない状況とは、新しい文脈をつくる余裕がない、ということだ。自分から離れたところにある文脈を、ノイズだと思ってしまう。

なぜ働いていると本が、読めなくなるのか


まさにそう。小説のあらすじにある「◯◯町に住む青年△△の、、」なんて目に入ったときには、
「その地域も、青年のことも、今の私の生活には一ミリも関係ない!」とはっきり思った覚えがある。まさにノイズ、雑音。「うるさい」と思うのに近い感情が湧いた。



小説が好きだったのに、自分は変わってしまったなと自分で思い、がっかりした。


ようやく読書を再開できるようになったのは、自宅フリーランスになって、2年目くらい。


フルタイム正社員の時と比べて労働時間は半分以下になったのに、頭の中身はすぐには変わらず。


時間ができて、今まで考えたくても余裕がなくて溢れ出てたものを頭に呼び戻して、それを消化したらそれとは別の溢れ出てたものも考えられるようになり、、を何度も繰り返して、消化しきったのかやっと頭に余白ができてきて


遂に、外に目が向いた感じ。


ずっとフルタイム正社員だったらどうなっていたんだろうと、今考えると少しゾッとしする。


余白がない人生は、もう嫌だと今は思っているけど、余白がないまま働いていたらそう思うこともなかったんだとも思って、またゾッとした。


全身全霊を称賛し過ぎる風潮をやめる

働きながら本を読める社会にするにはどうすればいいか。三宅さんは、「半身で働く社会を作る」という言い方をされてました。


燃え尽き症候群はカッコいいとどこかで思ってるなら、それはまずい。燃え尽き症候群は鬱にも繋がるもので、鬱は人を死に至らしめることもある恐ろしい病なのだから。


難しいとはわかっていながらも、半身で働いて、半身で読書(に限らず自己実現ができる好きなもの)に取り組むことをみんなが許す、そんな社会にしていきませんかと。

ほんと、これです。


ワークライフバランスって言葉は「仕事と家事育児の両立」ってのと同義に捉えられちゃいがちだけど、1日が仕事と家事と育児で埋まっちゃう生活、ずっと続けてられないでしょってずっと思ってた。


仕事で溢れかえって家事も育児もできないところがスタート地点。そんなの、最初っから異常なんですよ。


で、仕事を調整して、家事も育児もできる時間できたでしょ。良かったね。これで解決!ってなっちゃう社会。


そうじゃないんだよ。
(これで私は体調崩しました)


睡眠もできて、食事もゆっくり取れて、かつ、自分の時間も取れてこそ、仕事と家事と育児を頑張れるんだよ。


人によって睡眠や自分の時間がどれくらい必要かは違うから、それは自分の状況に応じてみんなが選べる社会であって欲しい


今の自分はもちろん、今小学生の息子が大人になったとき、そんな社会であってほしいと本当に思います。


で、この半身社会のお話を読んだ瞬間は、自分を働く側の立場にだけ置いて考えてしまったけど、


この社会を実現したかったら、自分がお客側、つまりサービスを受ける側になったときのことも考えないといけない。
お客として、働く人に寛容な人間であるようにしなければいけない。


自分の家族が怪我や病気をしたとき、医師がいないってなって「そうだよね、お医者さんだって休むわよね」とか流暢なことは言えない、だからやっぱり難しいことではあるんだけど


せめて、宅配便では、時間指定した時間にうっかり家を留守にしてしまって再配達になってしまうことは絶対に避けるし、システム上できるなら全部置き配にする。
何ならこれからは宅配ボックスを玄関に設置して(戸建てなので)、ゆくゆくは時間指定すらせず、いつでも好きな時間に持ってきていただけるようにしたい。
あす楽とか、縛りが出るものを多用しない。


客がいい加減、とまではいかずとも、システムに甘えず、自分にとって十分といえる「良い加減」のラインに気付いて実行に移していけば、働く人にも少しずつ優しくなれるんじゃないかなと思う。


お客様は神様なんかじゃない。1人の人間が働く人でもありお客でもある場合が多い今、お客の立場でどれだけ寛容な人が増えるかに、半身社会はかかってるんだと思う。







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