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人の名前が入った英語表現



アンテナ耳がビヨン!

アメリカのベーカリーでパンを焼くのが私の仕事ですが、先週、仕事中に足の指がつってしましました。経験したことがある人も多いと思いますが、本人の意に反して足の指が交差してしまう(感覚の?)現象ですね。耐えられないものではないので、ごまかしごまかし仕事を続けていましたが、これはどうにもというレベルになったので、ちょこっと裏へストレッチに。現在、乳がんの抗癌剤治療真っ最中の私は、副作用としてむくみが出やすい状況です。むくみを軽減するポイントのひとつが、余分な塩分の排出を促すカリウムとのこと。ということもあり、最近バナナは毎日欠かさず食べているのですが、その日は前半戦のオーブン仕事でいつも以上の汗をかいたので、それが足のつりを引き起こしたのかもしれません。ストレッチをしていると、たまたま通りがかったパンチームの同僚が「大丈夫?」と声をかけてくれました。幼少期に両親がともに癌に罹患したという経験があるうえ、薬局での処方係という職歴をもつ彼は、治療と仕事を両立させている私にとっては何かと心強い存在です。定期的に「今のエネルギーレベルはどんな感じ?」とチェックしてくれたり、時には私の隠しきれない疲れを察知して手を貸してくれたりと、本当にありがたい。「I got a cramp (足がつった)」という私に、「カリウム不足なんじゃないの?カリウムには…云々閑雲…」と続く説明をウンウンと聞き流していた私でしたが、彼が口にしたある言葉に私のアンテナ耳がビヨンと反応。反応した言葉は「Charley horse」。

①Charley horse

「Charley horse」とは、「こむらがえり」のことです。「I got a cramp」で「つった」という意味になりますが、もう少し具体的に表現するには「My leg is cramping (足がつっている)」のように言うことができます。「Charley horse」は「足がつった」のスラング的言い方で、まさに「こむらがえり」にあてはまりますが、言葉のままに直訳すると、謎の「チャーリー馬」。
一体なぜ???
調べてみると、諸説あるようですが、1880年代の足が不自由な(年老いた?)チャーリーという名前の馬にちなんでいるのだとか。
「Charley horse=こむらがえり」ということを知らなければ「え?何?何の話?」みたいなことになりそうですよね。

いい機会なので、こんな風に人の名前が入った英語表現をいくつか紹介します!

②Achilles' heel

まずは「Achilles' heel」。英語の発音はアキリーズヒールとなりますが、これは「アキレス腱」のことです。日本語だとアキレス腱はアキレス腱でしかないかもしれませんが、英語にするとAchillesのheelとなり、直訳ではアキレスさんの踵ということに。
その名の由来はギリシャ神話。赤ちゃんのアキレスを不死身の体にするために、アキレスの母親が冥府の川ステュクスにアキレスをドボンと浸したした際、アキレスの踵の部分を掴んでいために、その部分だけが生身のまま彼の弱点として残り、後にこの弱点を矢で射抜かれて命を落とすことになるのですね。これはちょっとしたアキレス腱トリビア。

⓷Adam's apple

続いては「Adam's apple」。直訳は「アダムさんのリンゴ」。
はて、何のことでしょう?
これは、「のどぼとけ」と言う意味の英語です。
アダムというと旧約聖書「創世記」に記された、最初の人間の男性の方ですね。女性はイヴ。エデンの園で禁断の実を食べてしまい、自分たちが裸であることに気づき…という話は有名でしょう。「Adam's apple」というのは、彼らが食べてしまった禁断の実がアダムの喉に詰まった状態に由来しているのだとか。禁断の実=りんごとはなっていないようですが、Adamの喉につまったリンゴ→のどぼとけというのは覚えやすいですね。
話はそれますが、私はAdamという名前に好印象を持っています。同僚のAdamを筆頭に、病院でお世話になった看護師のAdamさんなど、私がアメリカで出会ったAdamさんはみんな、根が真面目でフレンドリーないい人たち。ちょっと大雑把なところはあるものの、嫌味がなくて、とにかく愛されキャラ。あくまでも私の印象ですけどね。

④We are even Steven

次はちょっと様子が違うものを。
「We are even Steven (ウィー アー イーヴン スティーヴン) 」と言うと、どういう意味になるでしょうか?
まず、「even」には、「平な、平等な、均等な」という意味があります。例えば「even number」というと偶数のことになります。ちなみに奇数は「Odd number」。
つまり「We are even」と言うと、「私たちは平等だ」ということになります。では、おしりについた「Steven」は一体何???
これは特別な意味があるというよりも、あくまでも語呂がいい、調子がいいからついたものっていう感じです。英語でよくある、韻を踏むってやつですね。とは言っても、Stevenをつけることでニュアンス多少なりとも変わってくるところもあって、ちょっと気軽な印象になるのも確か。近い日本語だと「おあいこだね」ってところでしょうか。

⑤Karen

最後は比較的新しい変わりどころを。
「She is a Karen」と言ったらどういう意味でしょうか?
「彼女はキャレンさんです」確かに。
ところが最近では、この「Karen」が、スラング的に使われることがあり、
知らないと「へ?」となりそう。
どのように使われるのかというと…

スラングでは、無礼で、怒りっぽく、必要以上の権利を求める中級階級の白人アメリカ人女性が「Karen」と呼ばれるのです。イメージしやすい例としては、必要以上の難癖をつけるモンスタークレイマーだったり、モンスターペアレンツ(この場合は母親)でしょう。自分の社会的地位、白人としての特権などをかさに着て、いや~な感じで「マネージャーを呼んでくれる?」と要求する、傲慢で、高圧的、かつ差別的な態度をとる中年女性のことを、「She is a Karen (彼女は❝キャレン❞だ)」とか、「What a Karen!(なんて❝キャレン❞なの?)」という風に言うのです。
それにしてもなぜ、「Karen」なんでしょうね。
私は素敵なKarenさんを知っているだけに、勝手にちょっと申し訳ない気すらしてしまいます。素敵なKarenさん本人に直接聞いたことはありませんが、きっと笑い飛ばして終わりでしょうけど。
ちなみに、調べてみると、Karenという名前は、デンマーク生まれの女性の名前とのこと。あら、私の素敵なKarenさんのお母さんはデンマーク人だわ。フォーマルなキャサリンを縮小したのが「Karen (キャレン)」で、「純粋」を意味して、子供時代の素晴らしい無邪気さと、愛情深く純粋な性質を指しているとのことです。
こっちこそ私のKarenさん。

こんなに素敵な名前なのに、妙に広まってしまった「Karen」のスラング的使用のせいで、今後、自分の娘にKarenと名付ける親は減ってしまうのかもしれないですね。
まったく…

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