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南国気質のサングラス🏝(ビバ!アロハシャツの似合う女への道2021🌺改題)

思えばあやしい傾向は、ずいぶん前からあったのだ。

今までに一人で敢行した旅は屋久島へ2回と、沖縄へ1回だけだったけれど、共通するのはどちらも南方の地域、特に島だったこと。その時の直感で決めたとはいえ、その2つの選択に関連性がないとは言えないのだろう。

気に入りのテレビ番組に「モヤモヤさまぁ~ず」がある。さまぁ~ずの二人が、アナウンサーと一緒に毎週様々な場所を訪れ、モヤモヤポイントを探すバラエティ番組だ。独特のシュールなナレーションも楽しみに、録画をしておいて休日の夕飯のお供に必ず観ている。

さまぁ~ずの二人はコンビ名のせいなのか、アロハシャツの印象が強い。さすがの真冬には、もこもこした原色のジャンパーを着ているけれど、暖かい季節には白いシャツに、カジュアルなアロハシャツのような柄物の上着を羽織っている。

羨ましいと思う。彼らの纏っているどこか気だるい、日向の匂いのする空気を、何と表現したらいいのか。しばらく考えていて、「南国気質」という言葉が私の思う感覚にぴたりとはまった。

数年前の夏、友人と訪れた鎌倉でオレンジ色の縁のサングラスを買った。私にしては思い切った買い物だった。一人だったらいつものように眺めて終わりだったかもしれないが、一緒にいた彼女は私よりずっとずっと遠い場所をたくさん旅している、私にとって世界の窓のような存在だった。だからなのかもしれない。彼女に比べてだいぶ行動範囲が控えめな私も、大胆になれたのだ。

私は愉しい気分に浮かれて、縁とレンズがピンク色のサングラスを選びかけたが、友人の助言に従い、結局オレンジのそれを選んだ。彼女は、大きな夢を持つと同時に現実的な眼を持っている。

私は自分だけの新しい世界の窓を手に入れたような気がして、このサングラスを旅行や近所や、はたまた職場までの道のりにまで連れ出した。

オレンジの縁のサングラスは、ある時、引き出しの奥に引っかかって折れてしまった。この時は、泣きそうなほど残念だった。だが、私の中にはいまだ、あの南国気質が生きているのを感じられるのである。

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※この文章は2021年春にアロハシャツの似合う女を目指しかけ、挫折したため、書きかけのままだったエッセイをまとめたものです。

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