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『夜明けのヴァンパイア』アン・ライス 2024①



好きな映画は、原作も読みたくなりませんか?

映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を初めて観た時、トム・クルーズ、ブラット・ピット、キルスティン・ダンストがヴァンパイアを演じる、という豪華すぎる画面に圧倒されたのを覚えています。映画版↓

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ヴァンパイアものは映画でも本でも好きで、自分の蠍座味が出てるな、と思うポイントです😅
様々漁るうちに、ヴァンパイアと一口に言っても、バリエーションは豊かで、設定は各々バラバラなのだということが分かってきました。

作品によって違うヴァンパイアの特性

日光が浴びられないもの、棺では寝ないもの、鏡に映るもの、ニンニクOKなもの…といろいろです。

※最近読んだ中では、萩尾望都の『ポーの一族』(作中では「バンパネラ」という名前になっています。彼らは、人間の血液の他、バラを食べて生命を繋いでいるというオリジナリティがあります。)
「鬼滅の刃」も大きな括りではヴァンパイアだよな、とこっそり思っています。
映画では、パク・チャヌク監督の『渇き』を観ました。こちらは日光NGのヴァンパイアで、ラストシーンが切なかったです。でも潔い。

『夜明けのヴァンパイア』で描かれるヴァンパイアの特性としては、
日光ダメ、棺で眠る、鏡に映る、ニンニク十字架(たぶん)OK
で、比較的オーソドックスなヴァンパイア像と言えます。

あらすじ

弟を亡くし、自暴自棄に陥っていた25歳の青年ルイは、ヴァンパイアのレスタトに襲われ、ヴァンパイアにされます。主従関係のもと暮らしていた二人は、ある時、瀕死の孤児・クロウディアを見つけます。彼女に魅せられたルイを繋ぎ止めるため、レスタトはクロウディアをヴァンパイアにし、二人で育てることにします。三人の奇妙な家族生活は、悲惨な事件で幕を閉じ…といった内容です。

※二人の男が孤児の少女を引き取って育てる、という枠組みからは、昨年読んだ『雪の断章』が思い出されます。二人の男たちの関係性には、やはり同性愛的な要素が、含まれるように見えます。

映画はすごかった

原作の本書を読んで、映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』は、凄かったんだな、と思い知らされました。役者の演技の力。キルスティン・ダンスト演じるクロウディアの、幼いながらの魔性の女っぷりにゾクゾクするし、トム・クルーズのレスタトなら、たぶん何をしても許せるし、ルイも完全には、彼との鎖は断ち切れないのだろうなと、共感できます。原作を裏切らない素晴らしい脚本は、さすがアン・ライスの手によるものでした。

原作になく、好きだった映画のシーンは、ルイが映画館で夜明けの太陽を浴びるところでした。ヴァンパイアになったら、二度と本物の日光を浴びることはできないのですが、世の中の技術の進歩によって映画が生まれ、ルイは再び夜明けを迎えることができたのでした。

ヴァンパイアを殺すのは孤独かもしれない

レスタト(またアルマン)がルイを、ルイがクロウディアを心の底から求めたように、ヴァンパイアは、人生の伴侶と呼べる相棒を持とうとします。同類は増やせても、自分の子孫を残す手段を持たないヴァンパイアは、永遠の生命を生きる孤独に耐えられないのか、共に生きる誰かを必要とするのです。それは一対一の存在の結びつきであり、他の誰かと愛を分かち合うことを赦さないほどに、深く強いものなのでした。

思えば幸せだった? 三人の生活

ほんの子供の姿のままヴァンパイアにされてしまったクロウディアは、大人の女性に憧れ、自分をこんなふうにしたレスタトとルイを憎むようになります。まるで思春期の娘のように、なぜ自分はこうなったのか、と繰り返します。

しかし、クロウディアのことを「娘であり愛人」と呼ぶルイは、最後まで彼女のことを愛していました。「あたしたちは三人でやっと完璧だったのよ」とレスタトと別れた後に語ったクロウディアの言葉は、ルイだけでなく、私の心にもグサリと刺さりました。あれほど憎み、逃げ出したかった三人の生活は、彼女の言葉通り、物語中で最も輝いて見えるのです。

最も「人間的な」ヴァンパイア

人間を殺さずには生きていけない自分は、悪魔から生まれ落ちたのではないだろうか。そもそもヴァンパイアは、どこから来たのか。自分という存在の謎を解き明かすため、ルイはクロウディアと共に旅立ちます。
ルイは、私がこれまでに浴びてきたヴァンパイアものの中で、一番人間的苦悩を持ったヴァンパイアだったのではないかと思います。
作中でも、ルイほど人間を殺すのを厭うヴァンパイアは他になく、異質な存在としてあります。
でも人間の目を失わなかった彼だからこそ、あれほど客観的にインタビューに応えられるのですね。

まだまだ、ヴァンパイアの沼は深いようです。

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