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もうしばらく日本画のマイブーム( after展覧会No.9)

久しぶりの美術館へ。

島根県立美術館で開催されている、
東京富士美術館所蔵「日本美術の巨匠たち」(6月1日~7月5日)
の鑑賞レポートです(会期末になってしまいましたが)。
今回の展覧会では、東京富士美術館に所蔵されている桃山・江戸時代から明治・大正・昭和までに活躍した日本画家の巨匠たち、34名の作品(展示総数は57作品)を見ることができます。
その中から気になった作品、ベスト8を図録の紹介順で発表します。

1、《象図》伊藤若冲(1716-1800)
  1790年 紙本墨画・軸装・一幅 縦155.5cm×横77.3cm
2、《蘭亭脩契図 らんていしゅうけいず》呉春(1752-1811)
  1782-89年頃 絹本着色・軸装・一幅 縦175.1cm×横135.4cm
3、《青緑山水図 せいりょくさんすいず》谷文晁(1763-1840)
  1822年 絹本着色・軸装・一幅 縦160cm×横110.4cm
4、《富嶽三十六景 江都駿河町三井見世略図 えどするがちょうみついみせりゃくず》葛飾北斎(1760-1849)
  1830-32年頃 木版多色刷 横大判錦絵
5、《獅子》竹内栖鳳(1864-1942)
  1901-02年 紙本金地着色・屏風装・六曲一双 各縦169cm×横363cm
6、《朗羅 ローラ》鏑木清方(1878-1972)
  1933年 絹本着色・額装・一面 縦96cm×横42.5cm
7、《山家早春 さんかそうしゅん》川合玉堂(1873-1957)
  1942年 絹本着色・軸装・一幅 縦75cm×横87cm
8、《朝雪(雪) ちょうせつ(ゆき)》川合玉堂
  1952年 絹本着色・軸装・三幅対のうち 縦54.5cm×横72.5cm

さて、このうちより1枚を選んで、本日のディスクリプションをしたいと思います。2作品ランクインしている川合玉堂、と考えましたが、選ばれたのは。

~ドラムロール音~

《青緑山水図》谷文晁(たにぶんちょう)です。
どのような作品かは東京富士美術館のHPに、収蔵品の項目があります。
これまでの出品歴がわかったり、興味深い内容になっています。


しかしながら、正直に言うと、この展覧会ではじめて谷文晁を知りました。
それなのに、どうして谷文晁を取り上げてみたかというと、7月7日から山口県立美術館で開催される「奇才ー江戸絵画の冒険者たち」で選ばれた35名のなかの一人であったからです。


なんといっても35人中、知っている名前の画家は16人でした。
たまたま日本画の展覧会が個人的に続いていますが、ただ漠然と見に行くよりも、今回はこの作品、この画家をテーマにしようとか、自分なりに展覧会を解釈して臨むようにしています。
「奇才展」ではまた新しい谷文晁作品に出合えます。
どんな人物か調べてみると、谷文晁は葛飾北斎より3歳年下であることがわかります。実際に交流や接点もあったようです。

本日のディスクリプション。

お題《青緑山水図》谷文晁

切り立つ崖のごとくに急峻な山の風景である。そんな切り立つ山の頂上のやや低い位置に、画面では左上方に建物の屋根が、町の姿が見える。そこから斜め右下には橋がかかり、その橋の下には川が流れのちに滝となっていく。水の流れをたどってゆっくりと下へ目線を移すと、いつのまにか川幅が広くなり、そこを渡るための木製の歩道が設けられている。馬を先導させる男性の姿が見える。おそらくは山の上の町を目指しているのだろう。不思議な構図の絵である。画面の左側に動きの変化を集中させている。右側には何が描かれているか、そちらは色彩豊かな木々がある。青、薄いピンク、深い緑、明るい緑、薄い緑とカラフルに色分けされている。
それにしても、馬を先に歩かせて大丈夫なのだろうか。

※ディスクリプションとは、作品の様態を言葉に変換する作業。作品の記述。

図録の解説文はこちら。

見上げるほどの大幅に、描くのは構築的な青緑山水。
大きく反り返る懸崖(けんがい)が見せる雄大な自然のなか、幾種もの広葉樹はさまざまに季節を彩り、渓谷の水流は絶えることがない。
たなびく雲霞(うんか)。
山上には城郭風の町並みが見え、天空の別天地を思わせる。
そこに向かうのか、下方には渓流の架橋を下馬にて渡る人物が小さく見えている。
東洋画の歴史における諸流派の画法に通じ、気宇壮大にして緻密な描写を可能としている。
落款から文政5年(1822)文晁60歳の作と知られる。

1822年
絹本着色 軸装 一幅
縦160.0×横110.4cm

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