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とりぷるツイン第1話〜出会い〜

《あらすじ》
中学2年生の3組の双子、芦原(あわら)姉弟・金津(かなづ)兄弟・坂井(さかい)姉妹が繰り広げる青春ラブストーリー。主人公・芦原みくには、双子の弟・武生(たけお)と共に、金津兄弟と坂井姉妹のいる中学校に転校してきた。金津兄弟の兄・皐(さつき)は、優しく聡明。弟・葵(あおい)はクールで近づきがたい存在。坂井姉妹の姉・梨々(りり)はお淑やかで生粋のお嬢様。妹・奈々(なな)はギャル体質。4人とも美男美女でみんなの憧れの的。みくには葵と同じクラスになり、武生は奈々と同じクラスになった。皐と梨々とも出会い、6人がそれぞれの感情を持ち、やがて想い合い、絆を深めていく青春物語。

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1.転校初日

新学期。
とあるマンションに引っ越してきた芦原一家は、朝食を囲んでいる。

「転校の挨拶、なんて言おうかな〜。」
芦原家の長女、みくにはウキウキしている。
そこへ、目の前に座っていたみくにと同世代くらいの男子が、
「あんま変なこと言うなよな。学年中広がっちゃうから。」
と、牽制。
双子の弟、武生(たけお)だ。

「父さんも今日から本社勤務だからあいさつ考えなきゃな。」
「頑張ってね〜。」
キッチンで夫婦の会話も聞こえてくる。父親は転勤して着任初日のようだ。

「じゃあ、俺先行くから。」
武生は玄関に向かう。
「あ、待ってよ、武生!」
追いかけるみくに。

2人はこの春、中学2年生だ。

◇◇◇

新しい中学校。
やや高級住宅街のため、公立ではあるが生徒の中にはセレブな生徒もいる学校だ。
みくには、2年3組になった。

「えっと…転校してきました、芦原みくにです。よろしくお願いします。」
教室の前に立ち、緊張しながらも、無難な挨拶でまとめたみくに。
教室の窓側の席には、みくにに見向きもせず、ずっと外を眺めている美少年が座っていた。

ところ変わって、2年2組。
武生のクラスだ。

「奈々!!今度来た転校生双子だって!しかも男女!」
「…マジ?」
クラスメイトに奈々と呼ばれたこの女子、態度はデカいがクラスで一際美人だ。
「その双子の転校生君、奈々の方ずっと見てるよ。」
「え?」
武生は自分の席からずっと奈々の方を見ていた。
「もしかして…奈々も双子だってこと知ってるのかな?」
「それか、奈々のこと気があるのかもよ。」
クラスメイトが口々に憶測を話し出す。
「まっ私にとっちゃどーでもいいけどね。」
奈々は興味なさそうにそっぽ向く。
そしてこう念押しした。
「わたしが好きなのは皐様だけ。」

◇◇◇

休み時間。
(えっと…2組は…)
みくには武生の教室を探している。弟の様子が気になるようだ。
と、その時。

ドンッ

みくには前を向いて歩いていなかったため、人とぶつかった。しかもみくには身長が低いため、その弾みで後ろに倒れ込む。

「痛たた…」

「大丈夫?」

すぐさま立ち上がるみくに。

「ご、ごめんなさい…。私、前を見てなく…」

「て…」

そこには、今までみたことのないような美少年が立っていた。

「君、見かけない顔だけど、転校生?」

「あっ、はい!2年3組の芦原みくにって言います!」

「俺は2年4組の金津皐。よろしくね。みくにちゃん。」
美少年・皐は、みくにに優しく微笑んだ。
みくには思わず顔を赤らめる。

そこへ…

「皐様に近づかないで!」

そこに立ちはだかったのは、奈々。

「やあ、奈々ちゃん。近づかないでって、俺ばい菌みたいだね。」
皐がにこやかに冗談をいうと、
奈々は嬉しそうにみくにを退かしながら、
「やだ、皐様ったら。皐様に近づく魔の手からお救いしようとしたのですよ。」
皐にそう返した。

「じゃあ、俺いくね。」
「は〜い♡」
その場から立ち去る皐。嬉しそうに手を振る奈々。「あなた、誰!?」
そこに突っ込むみくに。
すると、
「あんたこそ、誰!?」
と、ものすごい腱膜で奈々はみくにを睨んだ。

そこへ…
「おやめなさい、通行人の邪魔よ。」

長髪の可憐な少女がそこに立っていた。
よく見ると奈々と似ている。

(わぁ…きれい…)
彼女の美しさに見惚れるみくに。

「ごめんなさいね、妹が迷惑かけたみたいで。」
「妹?」
「私は2年4組の坂井梨々。奈々は私の双子の妹なのよ。」

「双子!?」
驚くみくに。

「あなたの名前は?」
「え…芦原みくにですけど…」
梨々に聞かれ、答えるみくに。

(…芦原?)
聞き覚えのある名前に奈々は少し考え込む。
そして…
「あ!」
「あんた、まさか双子の転校生!?」
「え…そうだけど…。」
「まあ、そうなの?奇遇ね。」

キーンコーンカーンコーン〜♪

「あら、予鈴。じゃあね。みくにちゃん。ごきげんよう。」
梨々は上品に振る舞いながら自分の教室に戻っていった。

(はあ〜なんかお嬢様って感じ…)
梨々の後ろ姿を見て感心しているみくに。
「…芦原みくにとか言ったな。」
「ん?」
奈々はまだいる。
「いい?私の許可なしに皐様に近づいたら許さないからね!」
奈々はそう言い残して去っていった。
呆然とするみくに。

(…姉妹なのになんなんだろ…この差。そして結局、武生の教室いけなかったし…。)

◇◇◇

自分の教室に戻ったみくには、黒板を消しながらため息をついていた。
転校初日だが、出席番号順のため日直に当たっていたのである。
「はあ」
(転校早々、いろんな人に会っちゃったな…)

みくにが黒板の上の方を消そうとしたその時、

ガシッ

みくにが持っていた黒板消しを後ろから男子が取り上げた。
教室の窓側の美少年だ。

「俺が消しとくから。お前じゃ届かねーだろ。チビ。」

!!
(ち…チビ!!??)

気にしていることを…!!

怒りが込み上げるみくに。しかしすぐに冷静になる。
美少年は使っていない黒板消しを使わずに、わざわざみくにの黒板消しを取り上げていた。

ちらっ

みくには、美少年の顔見た。

(あれ…この顔…)

みくには慌てて黒板の隅の日直の名前を見た。

そこには、「芦原」「金津」と並んで書いてあった。

みくには休み時間に会った皐のことを思い出す。
(…そういえばあの人も「金津」って…。)

黒板を消し終わると、美少年は教室を出て行った。

それを見計らったかのように、クラスの女子が話しかけてきた。

「芦原さんも双子なんでしょ?」
「えっそうだけど…」
「この学年、これで双子3組目なのよ!」
1組目は坂井姉妹、そして2組目は…
「金津兄弟、皐様と葵様よ!」
「葵…?それってもしかして…」
そう、同じ日直の彼は、皐の双子の弟、葵だった。

坂井姉妹、梨々と奈々。
大手企業の社長の娘、つまりご令嬢。美人でみんなの憧れの的。ギャル要素もある奈々は友達が多いようだ。

金津兄弟、皐と葵。
医者の息子で厳格な家で育ったようだが、そのルックスで女子の視線を釘付け。優しい皐に比べ、葵はクールなため、近寄りがたいようだ。

何がともあれ、みくにの新生活は、波乱含みで幕を開けたのであった。


◇◇◇◇◇

2.告白

夕方。
とある進学塾。

「皐!」

塾の授業が終わり帰ろうとしたとき、皐は声をかけられた。

「梨々…」

「お疲れ様。一緒に帰りましょ?」

皐と梨々は同じ塾に通っていた。

◇◇◇

日も暮れた帰り道。
2人並んで歩く皐と梨々。

「…奈々から聞いたんだけど」
先に口を開いたのは梨々だ。
「みくにちゃんって子のことよっぽど気に入ったみたいだけど?」
梨々の言葉に少し戸惑う皐だが、
「…いきなり何?」
と、笑みを浮かべながらかわす。

「あら…気にさわったかしら。」
どことなくわざとらしく返す梨々。
「……」
「そういえば」
少し考えたあと、皐が口を開く。
「葵が気になるヤツがいるって言ってたな…。どんな子だろ?」
皐のこの言葉に梨々は、
「あら…その子も聞き出して奪っちゃうの?」
と皮肉った言い方で返す。
2人とも笑顔だが何処となくギクシャクしている。

(…そんなわけないだろ…)

皐はその言葉だけは口にしなかった。

◇◇◇

次の日。
2年3組の教室。
掃除の時間、みくには教室を掃除している。
「あれ?」
みくには葵がいないことに気づく。
「ねぇ、金津君って掃除の担当場所教室だよね?」
クラスメイトに確認するみくに。
「ああ、葵様?そういえば、いつも掃除の時間になるとフラっといなくなるわね…」

(…それってダメじゃん…!!)

「私、探してくるね!」
そう言ってみくには教室を後にした。

◇◇◇

グラウンドに向かう途中のピロティに葵はいた。
「葵君!」
声をかけてきたのは、梨々だ。

「どうしたの?こんなところに呼び出して…」

そこへ、葵を探していたみくにが遠くから葵をみつける。
(あ、いた!)
「かな…」
みくにが葵を呼ぼうとしたとき、

ドンッ

葵は壁を押して梨々に迫った。
「…この前の返事、教えてほしいんだけど」

(か…壁ドン!?)
2人の様子を見て戸惑うみくに。

「…その話はまた今度にしましょ」
「なんで…?」
切なそうに梨々をみつめる葵。
「だって…ほら、人見てるし」
梨々はみくにの方を指差した。

「お…おまっ!」
顔を赤らめ焦る葵。

「だ、だって、こんな人が通るようなところで、そんなことしてるから!!」
みくにも顔を赤くしながら必死で弁明する。

「掃除の時間だし戻るわね。」
梨々は涼しい顔で自分の教室に戻っていった。

「…は〜ぁ、またはぐらかされた…」
落ち込む葵。
「…告白しようとしてたの?」
みくにがそう聞くと、
「告白はした。返事待ち」

ドキン…

みくには胸の奥で小さな痛みを感じた。

(あ、あれ?なんだろ…この気持ち)

「てか、なんでお前ここにいるんだよ。」
葵が不機嫌そうにみくにに話しかける。
「え?なんでって、今掃除の時間じゃん!」
と、みくにが言うと葵は、
「ったく、掃除してなくたって、先生に見つからなければ、怒られねーってのに」
と、面倒くさそうに返し、教室の方に向かった。

(……は?)
呆れるみくに。
同時に怒りが込み上げてくる。

みくには葵を追いかけ、
「あのね、顔がいいからって何でも許されるわけじゃないからね!みんな何もいわないけど、私は言うから!!」
すると、葵もその言葉にキレた。
「はあ?何言ってんのお前。チビのくせに。」
「チビは関係ないでしょ!!」
2人は歩きながら、徐々にヒートアップしていった。
やがて、2年生の教室の前の廊下を通る。
葵とみくにの言い争いは生徒たちの注目を浴びていた。
「なんだ?なんだ?ケンカか?」
2組の教室から、奈々が廊下の方へ顔を出す。
「あれ?葵と…芦原みくに?」

「つーか、お前しつこいんだよ!」
「しつこいって何よ!」
いい争いが止まらない葵とみくに。

「ずいぶん騒がしいと思ったら、葵とみくにちゃんか…。」
皐が現れる。

「皐…」
葵は兄・皐の方を見る。

「みくにちゃん、弟の葵が無礼なことを言ったみたいだね。すまない。」
皐は頭を下げた。

「いえ、そんな…私はただ…」
慌てるみくに。

「…ったくこの女がしつけーから」

「ちょっと!皐君が頭下げてるのにその言い方!」
「別に俺悪くねーし」
「あのね!」
「ってか、そんなにしつけーの、俺に気が合ったたりして?」
「…なっ」
ドキン
「そ、そんなわけないじゃない!」
反射的にみくには否定した。

「…そうなの?」
それを聞いていた皐はすかさずみくにに問う。
「じゃあ、俺にも脈アリかな?」
「え?」
すると、皐はみくにの手を取り、
「付き合ってみる?」

瞬間、みくには固まった。

そして、女子たちの悲鳴が鳴り響いたことは言うまでもない…。



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