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とりぷるツイン第2話〜デート〜

【第1話はこちら】↓


とある住宅街にある一際目立つ大豪邸。
坂井姉妹の自宅だ。

坂井姉妹は両親のいないリビングで過ごしている。
両親は共働きで普段は夜遅くまで家にいない。
代わりに両親が帰ってくるまでの間、家政婦がいるようだ。

奈々はどんよりした顔をしていた。

「どうしたの?奈々」
心配した梨々が奈々に話しかける。
「皐様が…あんな平凡な女と…」
そう、奈々は、学校で皐がみくに付き合うと宣言したことでかなり落ち込んでいた。

「抜け駆けだよ抜け駆け!皐様が優しいことを良いことにあの女利用しやがって…!!」

「まあ」
奈々の様子をよそに、梨々はニコニコとしていた。

その時、

トゥルルル…

梨々の携帯から着信が鳴った。

「誰かしら…」

梨々は、携帯の画面をみると、

”金津 葵”

梨々は止まった。

そんな梨々の様子を見た奈々は、

「…出ないの?」

「出るわ。あっちでしてくる。」

梨々は部屋を出ようとする。

奈々は少し考え、

「梨々もある意味抜け駆けだよな。」
ピタッ

「皐…君と小学校から知り合いだったなんて…姉妹の私も知らなかったんだから。」

「……」

携帯の画面までは見ていない奈々は、皐からの着信と勘違いしたようだ。

坂井姉妹と金津兄弟は別々の小学校だった。
だが、梨々と皐は、小学校の頃から同じ塾に通っている。
奈々がそのことを知ったのは、中学校に入って皐と出会ってからだった。

トゥル……

鳴り響いていた着信音が止まった。

「ごめん、話しかけたから切れちゃったね。」

「いいのよ。おやすみなさい。」

パタン

梨々は自分の部屋に向かった。

ベッドに座ると、葵にかけ直した。

トゥルルル…

「葵くん?さっきはごめんなさい。すぐに出られなくて」

「あ…わざわざかけてくれたんだ…」
電話の向こうで葵の声がする。

「…かけない方がよかった?」
にこやかに返す梨々。

「あっいや、そうじゃなくて!」
焦る葵。
そして、顔を赤らめ、
「すげー嬉しいから…」

ストレートな葵の言葉に梨々も思わず照れる。
だが、すぐ冷静になり、
「葵くんじゃなくてもかけ直したわ。で?何か用かしら?」

「あ…その…」
照れながら話す葵。

「今度の日曜、一緒に出かけられたらな…って。…ダメ?」

葵の言葉に梨々は、
「…相変わらず友達いないのね。葵くん。」
と冗談まじりで返す。

「え?いや…そういう意味じゃなくて…。」
戸惑う葵。

「いいわ。付き合ってあげる。」

梨々の部屋の外では、奈々が聞き耳を立てていた。
(…葵と?)

◇◇◇

一方、芦原家。

「みくに、今度の日曜日、男とデートだって?」

武生がみくにの部屋に入ってくる。

「な、なんでそれを!?」
慌てるみくに。

「クラスの女子がみんな騒いでたぜ。」
「う…」
(だっていきなりあんなこといい出すから…)
みくには皐に「付き合ってみる?」と言われたことを思い出していた。

「そ、そんなことより武生の方はどうなのよ!」

照れながら武生の話題に切り替える。

「別に…」
武生は奈々のことを思い浮かべていた。


◇◇◇

日曜日。

みくには緊張しながら公園で皐を待っていた。

「みくにちゃん!」

学校とは違う私服姿の皐がやってくる。

「ごめん、待った?」
「ううん、全然!」
「じゃあ行こっか。」

2人は、駅前の方へ向かっていった。


その頃、梨々と葵も、駅前のモニュメント広場で待ち合わせしていた。

その様子を見ながら遠くから尾行している者がいた。奈々だ。
(……)

◇◇◇


数時間後。

「皐くん、このパフェおいしいよ!」
すっかり皐と打ち解けたみくに。
ファミレスでパフェを堪能していた。
「それは良かった。いい食べっぷりだね。」
皐もニコニコしている。

「そう!よく言われるの!小さいのに意外って言われるの!」
話が盛り上がるみくにと皐。

「この後どうする?近くにゲーセンや映画館あるけど。」
「行く行く!」
みくにはテンションも上がり楽しそうにしていた。


みくにたちが行こうとしているゲーセンには、梨々と葵の姿があった。

「あっこれ可愛い。」
UFOキャッチャーのぬいぐるみを見る梨々。

「…取ろうか?」
「…え?悪いわ…」
「…俺が取りたいから。」
葵は硬貨を投入する。
そして、真剣な目で、目的のぬいぐるみを取ろうした。

「あっ掴んだ!」
思わず声に出す梨々。

が、後一歩のところでぬいぐるみは滑り落ちた。

ズー…ン

落ち込む葵。

「…まあ、難しいわよ、これ」
必死で慰めようとする梨々。
「…もう一回やる!」
葵は意地でも取ろうとしていた。

そこへ…

「皐くん!UFOキャッチャーあるよ!」

隣に併設されていたもう1つのUFOキャッチャーにみくにと皐の姿が。

みくにの声に葵と梨々は気づいた。

みくにも横を見ると…

バッタリ

みくにと皐、梨々と葵、
それぞれのデート現場に鉢合わせしてしまった。

「…え?梨々さんと…金津葵?」

「あら、ごきげんよう。」

驚くみくにに笑顔で返す梨々。

「偶然だね…。お互い出かけているとはいえ、約束もしていないのに会うなんて…。」
どこか白々しく話す皐。
皐は今日葵と梨々がデートしていることを知っていたようだ。

「なんならこの後、一緒に行動する?」

「え?」

皐の突拍子もない提案に、一同驚く。

梨々はすぐ冷静になり、
「…別にわたしはどちらでもいいけど…。」
と答える。

「葵とみくにちゃんは?」
「あっ、えっと…。」
戸惑うみくに。

ちらっ

みくには、葵の方を見た。

(…こいつは、きっと梨々さんと2人になりたいよね…。)

すると、葵は、
「いいぜ。」
みくにには意外な返答だった。

みくには思わず空気を読んで、
「わ、私もどっちでもいいけどっ。」
と慌てて答える。

「よし、じゃ決まりだね。」

4人は一緒に行動することになった。

その様子を両替機の後ろから眺めている少女がいた。
奈々だった。

奈々は、梨々と葵のことが気になり、ずっと尾行していたのだ。
そして、偶然なのか、みくにと皐に遭遇する瞬間も見ることになった。
(…あいつら…。4人で遊ぶ約束してたのか?)
奈々にとっては予想外の出来事で少し戸惑う。

ふと、人の気配を感じ横を見ると…。
飴玉取りの影に隠れた武生がいた。

「…何してんだ、お前。」

奈々にみつかり、焦る武生。
「あ、いや、俺はその…。」

「ったく、お前も姉貴気になって尾行してたのかよ…。」
自分と同じようなことをしていた武生に奈々は少々呆れ顔だ。
「仕方ねえから、一緒に追うぞ!」

奈々は武生の服を掴む。

ドキン
「あっ、うん!」
武生は心の中でラッキーと思うのであった。


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