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#小説

北極星

北極星

砂粒の混じる風が頬を強く打ち、熱の籠もる痛みが唇を震わせた。草木の萌える土はなく、乾いた地の裂け目は暗く深い。とうの昔に枯れ果てた灌木にとまる黒々とした鴉(からす)の群れの、虚しい笑い声だけが残響するさまは、しかし現である。
果てない荒野を歩みながら、わたしは外套の内にかくす青い星の存在を常に想った。「この仄青くかよわい光を、守ってゆかねばならないのだ。」唯一残された使命の断片と、傍若無人な風だけ

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駆ける詩人

駆ける詩人

詩人は駆ける
天蓋の閨にねむる
貴方の烟る横顔
薔薇色の頬のため

綴られた韻律
揺れ惑う抒情
斬り閃く散文
円やかな調べ

蒼ざめた唇に
匙でそっと
親鳥のように
言葉をはこべば

たちまち
春が咲きこぼれ
冬が雪解けて
頬に紅みさす

夢見るような瞳と
慈しみのまなざしは
焚べられた詩の
其々が灯す炎

金星の差延べる手をとり
詩人は旅する
腕一杯の詩篇と倶に
銀色の砂浜を駆け

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飛翔

飛翔

時は満ちた

遠く鐘の音が
告げるのは出奔

絡む蔦を剥ぎ
門を開け
傷ついた手は
光芒をつかむ

金色の血が
奔流となり
褐色の瞳を
希望に燃やす

鳴り響く鼓動
溢れだす生命の躍動
長い行路の始まりに
おまえはいる

おまえには翼がある
明くる大空へ
地を蹴って飛ぶ翼が

冒険と愛が
青空の遥か高み
雲の向こうに待つだろう

透明な追い風が
必ずやおまえを助ける

新しい未来の

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白き路

白き路

雪原と紛う
白妙の砂漠
砂粒はすべて
諦念の化石である

氷河のように
永い時をかけ
生の淵へむけ
悠然と流れ往く

空と地平線の狭間
一羽の鳥が
白い翼を瞬かせ
光の線を引いた

逃げ水を追い
虹の都を夢見
少女たちは旅を続ける

この世界が
巨大な砂時計であると
知りながら
#詩 #散文詩 #自由詩 #文学 #哲学 #小説

夜明けのゴンドラ

夜明けのゴンドラ

幽かな波音に呼び覚まされた
昨夜から降り続いた雨音はなく、
月の女神によって
夜気のヴェールがかけられた世界は
静寂のエーテルで満ちていた

満月の明かりが室内を朧げに照らし、
天井には光の波紋が仄かに揺らめく

レースのカーテンを開けると、
潮騒と海の香りが、恍惚を伴って
わたしを抱擁した
髪の、耳の、あらゆる隙間に
潮の甘い風が指をすべらせる

わたしは出窓に腰掛け、
ネグリジェの裾を垂

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忘れられた青たち

忘れられた青たち

薄青いステンド硝子が、
寂寞としたサンルームに水面のような光を映す。
その水源は、此処から遥か遠くであった。

立ち枯れた観葉植物は隅で静かに眠り、
埃をかぶった八角形のテーブルと椅子は、
あの女(ひと)が立ち去ったときのまま
何も言わずに佇んでいる。
こちらに向いたままの椅子が、なにかを言おうとして押し黙っているように思えて、わたしはたまらず目を逸らした。

邸の部屋から部屋へうつるたび、

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