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おもいでの詩 5/?

難病の発覚から遡る事4年。
あの頃のぼくは親父と1年以上会話がなかった。

ぼくの兄貴は地元の中学校でバレー部に
所属し強豪と言われるチームだった。

小さな時から兄貴に憧れ
兄貴の真似ばかり。

スイミング
サッカー
野球
卵ご飯。

そしてバレーも。

兄貴の後を追うばかり。
そして気付く。
ぼくはバレーが好きじゃない。

けどぼくの評価はいつも兄貴の弟。
◯◯先輩の弟。

中学3年の頃。
兄貴の高校のバレー部監督が
家に勧誘に来る。

ぼくのバレーもたいして見たことないくせに。
兄貴の弟だから。

親父も嬉しそうにもてなす。

ぼくは親父と監督が決めたレールに乗る。
兄貴と同じ高校に進学し
同じくバレー部に入る。
それが理想。
そのレールがほぼ決まっていた。

それが中学3年の夏のこと。

ぼくはバレーが嫌いだ。
そして兄貴や親父の事は好きだ。

憧れの存在であり、褒められたい存在。

モヤモヤした感情を抱えながら
兄貴と同じ高校の入学式に立つ。
兄貴はもうバレー推薦で大学生になっていた。

腕立て伏せをしながら校歌を熱唱したのは
ある意味で良い思い出。

親父も監督も上機嫌。
2人でぼくの事を褒め
そして未来の話をしている。

入学から数日して
入部届を記入する紙が
回ってきた。

兄貴と同じレールを夢見て
親父と監督が敷いたレール。

先の決まったレールの上を走っていたはずの
ぼくは、入部届の紙に名前だけ書いた後に

ボーッと窓の外を眺める。
あとは「バレー部」と書くだけ。

窓の外には弓道場が見える。
誰もいない。

そういえば先週のこち亀は
弓道の回だったな。

特に思い入れも
感動もあったわけじゃないけど

キレイな女性が弓道をしていたなぁ。

ぼくはほとんど無意識のうちに
「弓道部」
と、記入していた。

この日を境に
ぼくと親父は1年半の間
絶縁状態となった。

つづく。

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