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友には摩訶不思議な旅先での出来事(2013年44歳)

夏の八丈島。今回は珍しく女二人旅である。
パートナーは、故郷在住の同級生。私に関して言えば、いつもの「風水開運旅行」も兼ねている。(ちなみに友にとっても吉方位だったので、開運となったはず!)

宿泊先は、海を見下ろす緑豊かな高台のリゾートホテルであった。
どこまでもまっすぐにのびる水平線と、南国の日差しにキラキラ輝く“八丈島ブルー”の大海原が絶景である。

で、いきなりだが、旅行最終日朝、外側一面窓からのオーシャンビューを楽しめる、ホテルの広大なレストランにて、友とのんびり朝食バイキングをとっていた時のこと。(※残念ながら海が望める窓際席ではなかった)

そろそろ食事も終えようかという段になって、誰かが向こう奥の窓際からスタスタと一直線に私たちのテーブルに近づいて来られた。
そして、開口一番おっしゃったのだ。
「今、すごく大きな船が近くに停泊してるんですよ!!(興奮)」
『は!?』
突然の速報に、私たちは声も無く発言主を仰ぎ見た。
するとそこには、ちょっと得意顔なホールスタッフのおじさまが、ハツラツと立っていらっしゃった。

『…………?』
起きがけなうえにお腹いっぱいで、限りなく反応が鈍かった我々。
謎に勢いのあるおじさまとの間に、かなりの温度差が生まれた。

しかし、おじさまは全く気に留めることなく、少し離れた海一望の大窓を指さして更におっしゃるのだ。
「ほら、見えますか!?」
促されるままにグイッと身を乗り出し、指の先に目を凝らす。
……おお!確かに大型客船らしき姿がある!
しかも、そのシチュエーションというのが、なんともシュール。港も桟橋もない島近くの海上に、唐突にピタリと浮かんでいるのだ。
それがまた、悠然たる佇まいでとても美しい。

「あ、ホントだ!すごく大きいですね!」
「昨日から停まっているみたいですよ」
「へぇぇーそうでしたか。気づかなかったー!外国の船ですかね!」
ようやくおじさまのテンションに追いついた私たちは、にわかに盛り上がった。

にもかかわらず、意外にもおじさま、「どうなんですかね…観光で来られているみたいですが…」という曖昧な言葉だけを残し、これまたスッと一直線にキッチンへ。

その潔い引き際に唖然とする私たち。
ただ、おじさまの表情が非常に満足げであったことを、私は見逃さなかったのだった……。

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その後、しばし友と船について語り合う。
……が、彼女はそれより何より、「他にもお客さんが沢山いるのに、どうして私たちだけに教えに来たんだろう……?」と言ったことが、どうにも気になって仕方がない様子。
私は「ね、何でだろうね……」とだけ返した。

そう、私からしたら、見知らぬ人に話しかけられるのは慣れっこなので、今回のこともさして気にはならない。
けれど、何故なのかは自分でもよく分からないのだ……。
(※ちなみに、互いの住まいが遠く離れて久しい今回の友は、私が話しかけられやすいことを知らない)

私と一緒に居たがために、せっかくの南国旅行を謎な思い出で締めくくりつつある友。
そんないぶかし気な彼女を見守りつつ、『そうか、やっぱり他の人はそんなに話しかけられないのか……。だったら、あまり気にしないでね』と心の中で告げ、共にレストランを後にしたのだった。

朝食後、ホテルの屋上にて友としばし船を鑑賞。
写真だとイマイチ大きさをお伝えにくいのだが(しかもボケてるし…)、
おじさまの興奮もごもっともな、かなりの大型船であった。