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[Portugirl]~EU最西端での小娘ひとり旅奮闘記~[008]

前回の続き。 ( 最初から読む

2018年5月1日

 8時に用意された朝食に合わせて起床し、朝からまたInesとの不思議な会話をまるでラジオから流れてくる番組を聴いているかのように聴きながら、まだ覚めきってない寝起きのまま用意してくれたオーガニックな朝ごはんを平らげた。シャワーを浴びて、身支度を済まして外出したのが11時前。また昨日と同じくメトロに乗ってトリニダーへ。今日もよく晴れた雲ひとつない晴天だった。こういう天気のうちに街の景色を写真に収めてしまおう。


 本当はレロ書店に行きたかったが、この日が祝日だということに着いてから気づいた。ここは屋内、明日は天気がイマイチなので明日にしよう。

 そのまま坂をドウロ川に向かって下りながら、ポルトのサインを通り過ぎ、宮殿の横を通り抜けたら見晴らしのいい展望スポットに出た。

 そこでひとしきり写真を撮っていると、「ひとりなの?写真撮るの手伝ってあげるわよ」とやさしいドイツ人のお姉さんが手を差し伸べてくれた。こういうのは一人旅をする者にとって嬉しい。


 坂を下りきって川沿いに出た。目の前のドウロ川は大西洋とすぐそこでつながっており、川上にあるドウロ渓谷はポートワインの名産地。ワインが川の流れに乗った船で運ばれてきた街、そこを起点に輸出されていたことからポート、ポルトとなった。


川には両側を結ぶ6つの橋を眺めることができるクルーズツアーの船が多く出ていた。せっかく天気もいいので私もチケットを買い、乗ってみた。

 クルーズ船は少なくとも200人は乗れるキャパの船だった。乗船前、指示された時間に列に並ぶと、なぜか列の途中からツアーガイドを筆頭に横入りし始めた。ちょうど私の並んでいる付近にそやつらはやってきた。アジア人1人でこのツアー客に太刀打ちはできない。

この大人数の後ろに入ることになると、甲板のいい席はすぐに埋まってしまう・・・。と途方に暮れていると、

私の前後にいるスペイン人たちが猛抗議。

 フランス人ガイドを英語で捲し立てると、「私フランス人ガイドだし英語わからないわ」と抗戦。「いやいやお前さっき船のスタッフと英語で話してたじゃないか」「あんたも見てただろう⁉︎」と突如聞かれ、あまりの気迫にうんうんコクコク頷くしかできなかった。間もなく乗船が開始し、前後のスペイン人たちと協力プレイで体をブロック塀のようにし、無事勝利した。

乗船した時にはもう甲板の席はどこも満席だったが、ひとりものの利点を発揮。席を詰めてもらい、甲板の席を確保できた。


 この船はドウロ川にかかる6つの橋の下を旧市街から大西洋までぐるっと円を描いていくクルーズツアー。正直まだまだ寒く、ポケットから手を出してカメラのシャッターを切るのは少々辛かった。ひと通り見終わると船は対岸で繋留。先ほど乗船した元の場所にも戻れるが、私はここで降り、ポートワインのワイナリーへ。


 ポートワインで有名なポルトガル、ポルトだが、もうここポルト市内にあるワイナリーでポルトガル人の経営するポートワインは数少ない。

 私はその中でもTaylor'sというワイナリーへ。直射日光の降り注ぐ坂を登り、たどり着いたらまずはチケット売り場へ。受話器型の耳に当てるタイプの音声ガイドを受け取り、順路に従って見学。日本語があってホッとした。

 一人旅でも安心。この大樽の前にカメラと連動する機械があり、名前と国籍、メールアドレスを入力すると上にあるカメラから写真を撮ってくれる。撮影したデータは入力したメールアドレスに添付して送ってくれる。館内にはWi-Fiもあるのですぐにチェックできた。

 ポルト市内にあるドウロ川を上流へと遡るとワインを作るのに最適な土地と言われるドウロ渓谷がある。世界遺産にも指定されるほど綺麗なブドウ畑と豊かな大地。そこで作られるワインを船に乗せ、港のあるポルトへ運ぶ。そこでいちど倉庫に貯蔵され、また船に乗せられ、国外に出荷される。

見学が終わり、さぁお待ちかねの試飲だ!と思った矢先、Wi-Fiでメールを受信。送信元はまさかのエールフランス。

嫌な予感。

 その予感が的中。またもや私の帰国便はストライキで欠航のフラグが立っているらしい。なんだんだまったく。けっきょく旅の始まりから終わりまでトラブル続き。お家に帰るまでが旅ということか。一体私は帰るまであといくつのトラブルと戦えばいいのか。


 旅先でいつも買ってしまうワイン。今回試飲したポートワインなるワインは他のワインとは少し違い、度数が高い割に味は濃厚で甘い。つまり美味しい。ついつい試飲したワインと、もう一本自分の生まれ年のワインを見つけてしまったので高かったが記念に購入。(半ばヤケクソ)

 ストライキの知らせで落ち込んでいてはもったいので、見学という名の試飲(やけ酒)を終え、両手で大事にワインを抱えて坂を登った。

 坂を上り下りしてたどり着いたMiraportoというカフェは対岸の旧市街も、ドウロ川も、ついでに言うと目の前の渋滞する道路(どうろ)も見渡せる絶好のロケーション。


 そこではポルトガルビールと、地元B級グルメのフランセジーニャをいただいた。フランセジーニャは食パンにその作り手思い思いの具を挟んで上から熱々のサルサソース?トマトソース?のようなものを、食パンの上に乗せたチーズのさらに上からかけてとろとろにして食べる。

 私がいただいたここのフランセジーニャは、予想外にチョリソーが沢山入っており、辛いものが極端に苦手な私の唇は食べ終わる頃にはアンジェリーナジョリー並にセクシーな口元になっていた。(辛くて腫れた。)

 お腹を満たして今度は歩いて橋を渡り、またRua Da Floresのお店を見て回った。大学時代の知り合いに「もし晴れた日にポルトにいるなら夕日は本当に綺麗だから川沿いに行ってみてほしい」と強く勧められたので日が沈む頃まで時間をつぶすことにした。

さてどこで時間を潰そう。


 サンベント駅はアズレージョでも有名。日の差し込むサンベント駅構内を写真に収め、カフェで旅行記を書き進める。

 集中してキーボードの上に手を走らせていたらあっという間に時刻は20時を過ぎた。そろそろ夕暮れの時間。旅行記を書く手を止め、iPad miniとキーボードを閉じた。

 サンベント駅からそのままドン・アルフォンソ・エンヒケス通りを歩いてドン・ルイス1世橋へ。ずっと買ったワインを抱えてるのでそろそろ肩と腰が痛くなってきた。おまけに橋の上は風が強く気温も冷え込んできた。寒い。ポケットから手を出すのも辛い中、バッグからカメラを取り出し、ファインダーを覗き込んだ。

 ファインダー越しに見下ろしたポルトの街は、徐々に灯がともり、青とオレンジが入り混じるノスタルジックな街並みに変化していた。

 先ほどの寒さは忘れて少し歩いてはカシャ、ウィーン、アングルを変えてはカシャ、ウィーンとポラロイドのシャッターを切り、カメラをGoProに持ち替えてポチポチっと撮り、また今度はスマホでカシャっと忙しくカメラを変えて、とにかく無心でこの夕暮れの一瞬を写真に残した。

 日も暮れて息も白くなった21時過ぎ、重くて手に持つのを諦めたワインを足元から手元にホールドし直した。もう歩いてトリニダー駅に戻る気力もなく、目の前のJardim do Morro駅からメトロに乗ってトリニダーで乗り換えてステイ先へと戻った。

 家に戻るとまた猫たちがドアの前でお出迎え。部屋に荷物を降ろしてトイレに行こうとした時、部屋の鍵を閉め忘れた私のミスだが、猫たちが部屋のドアを巧みに開け、入ってしまった。黒猫ピースとトラ柄サシミ。ベッドの下に入り込んでしまったためこの二匹を外に出すのに数十分格闘した。

 ベッドのマットレスから逆さまに乗り出してのぞき込みながら靴紐で誘い出し、ぴゃっと出てきたところをお尻を押してシャーっとドアの外にスライディングさせてドアを閉めた。ドアの外からはニャーオと猫なで声が聞こえるが、作戦に成功したのでシャワーを浴び、やっと就寝。


つづく

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