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パーソナリティ

パーソナリティをどのようなものとして捉えるかは、研究によって多様です。精神分析的理論、人間性主義的理論、類型論、特性論、社会認知的理論などがありますが、今回はこの中で重要な類型論と特性論を扱います。

1. パーソナリティの類型論

類型論とは、性格をいくつかの典型的な例に当てはめて分類する方法です。
長所としては、大雑把に人をとらえてイメージし、知らない人に説明したり、異なる類型の人と比較したりするのに便利です。しかし短所としては、個人のすべての側面を特定の類型でとらえようとするには無理があります。

それぞれの理論について見ていきましょう。

Galenosは、人間の体液によって性格を4つに分類しました(体液説)。黄胆汁質(愛想がよい、社交的、陽気など)、多血質(短気、衝動的など)、黒胆汁質(心配性、悲観的、内気など)、粘液質(用心深い、冷静、堅実など)の4類型です。

精神科医Kretschmerの類型説は、精神疾患の患者を臨床的に観察する中で見出されました。体型性格論と呼ばれ、躁鬱気質(社交的、活発など)、分裂気質(内気、神経質など)、てんかん気質(几帳面、堅いなど)の3類型に分けています。

これと類似した考え方として、Sheldonは体格と気質の関係を対応づけた胚葉起源説を唱えました。外胚葉型(神経緊張型、内気、過敏など)、内胚葉型(内臓緊張型、社交的、楽観的など)、中胚葉型(身体緊張型、活動的、自己主張が強いなど)の3類型があります。

Jungは、精神分析学的な知見から、リビドーの向かう方向によって内向型(自己の内界に関心がある)と外向型(外界に関心がある)の2類型を区別しました。更にその下位分類として、思考、感情、感覚、直感という4つの心理機能があり、計8種類の組み合わせによって性格を分類しました。タイプ論と呼ばれます。

また、性格をタイプA~Dの4種類に分類する説もあります。
タイプAは、時間に追われてせっかち、攻撃的で積極的な人です。Friedman & Rosenmanがかつて冠動脈性心疾患の患者にみられやすいと提唱しましたが、現在ではこの説はかつてほど強く主張されてはいません。
タイプBは、マイペースに行動することを好み、穏やかで目立たず非攻撃的な人です。
タイプCは、周りに気を遣い、常に良い人を演じており、自己犠牲的な人です。否定的な感情を自分の中に押し殺しています。
タイプDは、不満や苛立ちを感じやすいのですが、他者からの批判を恐れてそれを表現できない人です。


2. パーソナリティの特性論

個人の一定の行動傾向を特性といいますが、その特性の量的な差異によって性格を記述する考え方が特性論です。
長所としては、性格を詳細に記述することができることと、特性の差異を量的に比較できることです。一方短所としては、類型論と比べて全体像が把握しにくいことがあげられます。

こちらも理論をいくつか見ていきましょう。

Eysenck(1967)は、性格は生物学的な要因を基盤として学習や経験によって形成されていくという考え方に基づいて、3つの根源的な性格特性を示しています。これを3因子モデルといいます。3因子は、外向性(個人の意識がどの程度外界に向いているか)、神経症傾向(不安定さ)、精神病傾向(衝動の統制の程度や敵対心の強さ)です。

Cloningerのパーソナリティモデルは、精神疾患と性格の関連を調べていく中で構築されたものです。性格は4つの気質と3つの性格で構成されているとしました。
気質とは、刺激に対する反応であって遺伝要因から影響を受け、文化や社会的経験に関わらず一定であるものです。生得的なものといえます。新奇性追求(刺激を求める、ドパミンが関連している)、損害回避(行動を抑制する、セロトニンが関連している)、報酬依存(欲求の維持、ノルアドレナリンが関連している?)、固執(意志の強さ、グルタミンが関連している?)の4つです。
性格とは、社会的経験を通して表れる個人差であり、気質と経験の相互作用の結果として発達するものです。後天的に築かれていきます。自己志向(目的に応じて行動を制御する傾向)、協調(他者を受容する傾向)、自己超越(スピリチュアリティに関する性格)の3つがあります。

一番有名なのはCosta&McCraeビッグファイブ理論でしょう。神経症傾向(不安、神経質、抑うつなど)、外向性(社交的、活動的)、開放性(想像力が豊か、変化を好む)、調和性(他者への信頼、思いやり)、誠実性(勤勉、慎重など)の5因子を想定しています。
質問紙にNEO-PI-Rというものがあります。もともとは1985年に外向性、開放性、神経症傾向の3因子を測定するNEO-PIというものが作られて、1991年に調和性と誠実性を追加してNEO-PI-Rとされました。全部で60項目あります。

最近は6因子モデルというものが出てきています。Ashton&Lee(2001)などによって提唱されたモデルで、ビッグファイブに謙虚性を加えたものです。

最後にもうひとつ、Dark-Triadも知られています。他者に対する配慮に欠け、攻撃的で、対人関係上にトラブルを起こしやすい3つの性格特性を指します。マキャベリアニズム(他者を自分の思い通りに操作しようとする傾向)、自己愛、サイコパシー(冷淡で共感性が欠如している傾向)の3つです。


3. 双生児研究から明らかになったこと

ところで、パーソナリティはどのようにして決まるのでしょうか。
Turkheimerは、双生児研究を通して、行動遺伝学の三原則を提唱しています。①遺伝の普遍性、②共有環境の希少性、③非共有環境の優越性です。要は、パーソナリティは遺伝と非共有環境(学校や個々の友人関係など)でほとんどが決まり、共有環境(家庭)の影響は非常に小さいということです。



以上、性格特性の分類とおまけでした。分類方法だけでなく、人名も一緒に覚えておく必要があります。第1回公認心理師北海道追加試験でも問われているので…
参考↓


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