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第三者割当増資を通じた資本業務提携

第三者割当増資と資本業務提携の事例についてまとめます。

第三者割当増資と資本業務提携について

第三者割当増資と資本業務提携の定義

  • 第三者割当増資とは、特定の第三者に対して新株を発行し、その引受けを通じて資金を調達する手法です。この方法は、既存株主以外の特定の第三者に新株を割り当てることで、資金調達を行います。上場企業や未上場企業の資金調達手段として広く用いられ、特定の第三者に対して有償で新株を発行することが特徴です。

  • 資本業務提携とは、企業間で資本の移動を伴う業務提携を指します。具体的には、ある企業が他の企業に出資し、互いに資本を提供し合うことで、業務提携を強化する手法です。資本提携は、株式の取得を通じて行われ、業務提携は生産、技術、研究開発、販売などの分野で協力関係を築くことを目的とします。

第三者割当増資と資本業務提携の関係性

第三者割当増資は、資本業務提携の一環として行われることが多いです。資本業務提携において、企業は互いに資本を提供し合うために、第三者割当増資を利用して新株を発行し、相手企業に引き受けてもらうことがあります。これにより、資本の移動が実現し、業務提携の強化が図られます。例えば、企業Aが企業Bに対して第三者割当増資を行い、企業Bが新株を引き受けることで、企業Aは資金を調達し、企業Bは企業Aの株式を取得します。このようにして、両社は資本業務提携を通じて協力関係を強化し、共同でビジネスを展開することが可能となります。

第三者割当増資と資本業務提携のトレンド

第三者割当増資のトレンド

2021年の国内上場企業による第三者割当増資は112件であり、特に「サービス業」「情報・通信業」「小売業」が多くを占めました。新型コロナウイルスの影響で財務状況が悪化した企業が、運転資金の確保や借入金の返済を目的に第三者割当増資を実施するケースが多く見られました。また、将来のM&Aや株式取得に資金を充当する案件も少なくありませんでした。

資本業務提携のトレンド

資本業務提携は、異業種間の連携やスタートアップへの出資を通じて、自社の提供価値を多角的に向上させる動きが増加しています。特に、デジタルソリューションや新規事業領域への投資が活発化しており、企業は新たな成長の種を模索しています。例えば、アイスタイルとトレンダーズ株式会社の資本業務提携では、SNSを活用した新サービスの開発を通じて、化粧品業界の活性化を目指しています。このように、第三者割当増資と資本業務提携は、企業の成長戦略や財務改善の手段として重要な役割を果たしており、今後も多くの企業がこれらの手法を活用していくことが予想されます。

主な相違点

目的

  • 第三者割当増資: 主に資金調達を目的とし、特定の第三者に新株を発行することで迅速に資金を得る。

  • 資本業務提携: 資本の移動と業務提携を同時に行い、企業間の協力関係を強化し、シナジー効果を狙う。

方法

  • 第三者割当増資: 新株を特定の第三者に発行し、資金を調達する。

  • 資本業務提携: 新株の発行や株式の取得を通じて資本を移動させ、業務提携を行う。

影響

  • 第三者割当増資: 株式の希薄化が生じ、既存株主の持ち株比率が低下する。

  • 資本業務提携: 資本と業務の両面での協力により、企業間の関係が強化されるが、経営権の移動は一般的には伴わない。

第三者割当増資 + 資本業務提携事例

2023年6月 TBS ⇒ U-NEXT(非上場)

  • 資本業務提携契約あり

  • 調達額:243億円(発行諸費用 0.07億)

  • 使途:調達資金はアジアドラマ、スポーツ、ライブ配信を中心としたコンテンツ拡充とM&A

  • 発行後保有比率:TBS 0% ⇒ 20%

  • なお、将来において当社と TBSHD との間で本資本業務提携に伴い期待される協業シナジー の創出が相互確認できた場合には、更なる連携強化及び U-NEXT 事業の成長に向けて、TBSHD の U-NEXT に対する議決権比率を 10%増加させるまでの範囲において U-NEXT が追加で第三者割当増資を行い、資金調達を実施する方針につき両社間で合意

  • 参考URL: https://ssl4.eir-parts.net/doc/9418/tdnet/2305620/00.pdf

2023年5月 クレディセゾン ⇒ スルガ銀行

  • 資本業務提携契約あり

  • スルガ銀行もクレディセゾン株を第三者割当により取得 ★

  • 調達額:171億円(発行諸費用 2.5億)

  • 使途:資本業務提携で記載の使途

  • 発行価額:前日終値 vs 過去1ヶ月平均 -4.50% / 過去3ヶ月平均 +3.83% / vs 過去6ヶ月平均 +9.91%

  • 希薄化率:15.12%

  • 発行後保有比率:クレディセゾン ?% ⇒ 15.70%

  • 参考URL: https://www.surugabank.co.jp/surugabank/kojin/topics/pdf/230518_02.pdf

2023年5月 サイバーエージェント・東急等 ⇒ 楽天

  • 公募・第三者割当の同時実施

  • 調達額:計3,322億円 (国内募集1,453億円 / 海外募集 1,451億円 / 第三者割当 418億円)

  • 使途:社債償還資金、楽天モバイルへの投融資資金、

  • 発行価額:前日終値を参考に-9.97%

  • 直近の株価が現時点における当社の客観的企業価値を適正に反映していると判断

  • ディスカウント率(9.97%)につきましては、割当予定先は取締役会決議日から払込期日までの約2か月間における株価下落リスクを甘受せざるを得ない立場にあること、本第三者割当増資により希薄化が生じること、本第三者 割当増資によって迅速かつ確実に資金調達を行うことで中長期的な企業価値及び株主価値の向上が見込まれること等も総合的に勘案

  • 当社と割当予定先が協議の上、当社の財務状況、業績予測、事業環境等を考慮しつつ、決定

  • 希薄化率:(第三者割当) 4.95%, (公募) 34.33%

  • 参考URL: https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2023/0516_01.html

2023年4月 TKP⇒ 識学

  • 資本業務提携契約あり

  • 調達額:5億円(発行諸費用 0.1億)

  • 第三者割当の選択理由:間接金融: 自己資本比率低下 / 公募増資: コスト高・期間長 / 新株予約権: 発行時に必要額調達できない

  • 使途:1.販売提携, 2. ハンズオン支援ファンド・VC ファンド事業におけるノウハウ・リソース提供

  • 発行価額:前日終値 vs 過去1ヶ月平均 +0.87% / 過去3ヶ月平均 +0.17% / vs 過去6ヶ月平均 -4.13%

  • 希薄化率:10.40%

  • 発行後保有比率:TKP 0% ⇒ 9.62%

  • 参考URL: https://global-assets.irdirect.jp/pdf/tdnet/batch/140120230120591431.pdf

2023年4月 SMFG⇒ SBIグループ

2023年4月 ソニー ⇒ ニューラルポケット

  • 資本業務提携契約あり, 優先

  • 調達額:6.7億円(発行諸費用 0.07億)

  • 使途:AI エンジニア等の人件費を主とする研究開発費と して充当

  • 発行価額: 前日終値 vs 過去1ヶ月平均 -5.62% / 過去3ヶ月平均 -7.36% / vs 過去6ヶ月平均 -8.41%

  • 希薄化率:4.77%

  • 発行後保有比率:ソニー?% ⇒ 4.56%

  • 参考URL: https://kabuyoho.jp/discloseDetail?rid=20230426553683&pid=140120230426553683

2023年4月 商船三井・三井物産 ⇒ 三井海洋開発

  • 業務提携契約あり

  • 調達額:151億円(発行諸費用 1.2億)

  • 第三者割当の選択理由:間接金融: 自己資本比率低下 / 公募増資: コスト高・期間長 / 新株予約権: 発行時に必要額調達できない

  • 使途:油田開発のための浮体式海洋石油・ガス生産設備に必要なSPCへの投融資

  • 発行価額:前日終値を参考に-9.97%

  • 直近の株価が現時点における当社の客観的企業価値を適正に反映していると判断

  • ディスカウント率(9.97%)につきましては、割当予定先は取締役会決議日から払込期日までの約2か月間における株価下落リスクを甘受せざるを得ない立場にあること、本第三者割当増資により希薄化が生じること、本第三者 割当増資によって迅速かつ確実に資金調達を行うことで中長期的な企業価値及び株主価値の向上が見込まれること等も総合的に勘案

  • 当社と割当予定先が協議の上、当社の財務状況、業績予測、事業環境等を考慮しつつ、決定

  • 希薄化率:21.16%

  • 発行後保有比率:商船三井 0% ⇒ 14.86%, 三井物産 14.86% ⇒ 14.86%

  • 三井物産が本件前も主要株主であったことから、自主的に特別委員会から意見を入手

  • 参考URL: https://www.mol.co.jp/ir/data/pdf/news_230428.pdf

2022年12月 SBI ⇒ gumi

2022年10月 セプテーニ ⇒ and factory

  • 資本業務提携あり、売出しあり

  • 本資本業務提携契約におけるその他の主たる合意事項の開示あり

  • 調達額:500億円(発行諸費用 0.1億)

  • 第三者割当の選択理由:間接金融: 自己資本比率低下 / 公募増資: コスト高・期間長 / 新株予約権: 発行時に必要額調達できない / CB:負債比率の上昇

  • 使途:マンガアプリ分野及びその周辺領域への成長投資、 財務健全性の強化及び将来的なM&A及び資本業務提携等に係る資金

  • 発行価額:過去1ヶ月平均 vs 前日終値. -3.01% / 過去3ヶ月平均 -8.03% / vs 過去6ヶ月平均 -10.08%

  • 希薄化率:14.29%

  • 株主総会決議取得

  • 発行後保有比率:セプテーニ ?% ⇒ 21.29%

  • 筆頭株主(創業者)の売出し 34.37% ⇒ 21.29%

  • 参考URL: https://production-mkdd-news.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/urn%3Anewsml%3Atdnet.info%3A20221025549222/140120221025549222.pdf

2021年10月 電通 ⇒ セプテーニ

  • 資本業務提携あり、セプテーニによる電通子会社株式取得あり

  • 調達額:326億円(発行諸費用 3.6億)

  • 使途:本株式譲渡による電通デジタルの株式取得のための資金

  • 発行価額:過去1ヶ月平均 vs 前日終値. +9.93% / 過去3ヶ月平均 +6.90% / vs 過去6ヶ月平均 +3.56%

  • 希薄化率:54.70%

  • 株主総会決議取得

  • 発行後保有比率:電通 19.36% ⇒ 52.01%

  • 参考URL: https://www.septeni-holdings.co.jp/ir/irnews/Ad_211028.pdf

2021年8月 楽天・SHIFT ⇒ ぐるなび

2021年5月 SanSan⇒ Fringe81

  • A種優先株式(取得請求権付株式)発行 (取得資金は全額借入金)

  • 当社は当該取得請求 権の行使等通じて、Fringe81 社を当社の連結子会社とすることを検討

  • 資本業務提携契約あり

  • 調達額:0.2億円)

  • 使途: 「Sansan」と「Unipos」の連携 / 広告サービスの連携 / 営業・マーケティングノウハウ提供 / 役員等の派遣

  • 発行後保有比率:SanSan 3.07% ⇒ 3.07%

  • 当社は、Fringe81 社の社外取締役候補者 2 名を指名する権利を保有(本件前から保有か)

  • 参考URL: https://ir.corp-sansan.com/ja/ir/news/auto_20210519422715/pdfFile.pdf

2019年12月 ヤマダ電機 ⇒ 大塚家具

  • 資本業務提携あり、新株予約権発行あり

  • 調達額:43億円(発行諸費用 1.6億)

  • 使途:設備投資・ブランディング投資、運転資金

  • 発行価額:前日終値-10% vs 前日終値 -10% / 過去1ヶ月平均 -9.56% / 過去3ヶ月平均 -11.79% / vs 過去6ヶ月平均 -22.79%

  • 希薄化率:105.41%

  • 発行後保有比率:ヤマダ電機 0% ⇒58.22%

  • 参考URL: https://www.yamada-holdings.jp/ir/press/2019/191212.pdf

2019年8月 トヨタ ⇒ マツダ

  • 資本業務提携あり

  • 調達額:500億円(発行諸費用 2.0億)

  • 使途:業務提携の一つである米国での完成車の生産合弁会社の設立に係る設備投資資金の一部に充当予定

  • 発行価額:過去3ヶ月平均 vs 前日終値. -4.7% / 過去1ヶ月平均 -3.3% / vs 過去6ヶ月平均 -0.4%

  • 希薄化率:5.32%

  • 発行後保有比率:5.05%

  • 参考URL: https://newsroom.mazda.com/ja/publicity/release/2017/201708/170804e.pdf

2019年5月 三菱商事 ⇒ 千代田化工建設

2019年2月 NTTドコモ・ソニー ⇒ エムスリー

2019年2月 ヤマハ発動機 ⇒ 新川

  • 公開買付、会社分割あり

  • 調達額:100億円 (発行諸費用1.7億)

  • 使途:公開買付けの買付代金、統廃合に伴う移転・新設費用等の構造改革費用

  • 発行価額:-

  • 希薄化率:-

  • 発行後保有比率:ヤマハ発動機 0% ⇒ 56.63%

  • 参考URL: https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2019/0212/pdf/consolidate.pdf

2015年6月 SMFG, SMBC, GMO ⇒ GMOPG

  • 資本業務提携あり

  • 調達額:80億円(発行諸費用 0.1億)

  • 使途:マネーサービス拡大に伴う運転資金 / 合弁会社設立のための運転資金

  • 発行価額:過去1ヶ月平均 vs 前日終値. +0.88% / 過去3ヶ月平均 +1.68% / vs 過去6ヶ月平均 +16.07%

  • 希薄化率:7.49%

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