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星野富弘「風の旅」 〜本とのこと③〜

星野富弘さんの詩画集「風の旅」。

中でもずっと大切にしてきたのが
「二番目に言いたいこと」という詩である。 
この詩に出会ったのは二十歳の頃だった。

その頃の私は、見た目には普通に人付き合いをしていたが
自分は人に期待されることを言っているだけなのではないか、
そもそも、私の本当の思いとはどこにあるのだろう・・・と答えの出ない
むなしい思いを抱えていた。

そんなときに読んだこの詩は、いつも感じているもどかしさを言い得ているようだった。
私はこれでいいんだ、と思えるようになっていったのは、この詩がきっかけだったと思う。
詩や言葉との共感が人を支えるということを、私は知った。

作者の星野富弘氏は、事故が元で首から下がマヒしてまったく動かないという状態で、口に筆をもって絵や字をかいている。

しかし星野さんの詩画が、どのような状況から生まれたということを超えて、星野さんの真実の言葉が自分のこととして私の心に響いたのだった。

それから月日が流れ数年前のこと、星野さんの詩集を朗読する機会があった。

30年という月日と経て、私は星野富弘という人の生きざまの向こうに、本当のことへの一筋の光が輝いていることを、より深く感じるようになっていた。

しかし、それでいて読むときの瑞々しさはまったく失われることはなく、時間によって変わらない真実はあるのだ、と実感している。
 


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