見出し画像

勉強も仕事も他人が興味のない分野なら一番になりやすい

学校という特殊な環境において、他者と自分をくらべてしまうのは仕方のないことだ。
学校の成績は絶対評価とは言っているものの、定期テストの点数で順位つけされてしまうし、競争意識を煽っているようだ。
そんな中で「一番になりたい」と思うのも自然なことである。

同じ中学から高校へ進学した私とHくんは、少人数の田舎の中学では1位2位を争う順位であったが、町から近くにある一応の進学校ではさすがにトップに近づくのは困難であった。

期末テストが近づき、より一層順位への意識がつよくなるころ、「オレ、家庭科で一番とるわ」とやけに張りきった様子でHくんは言った。
周囲のものは皆笑ったが、彼はけっこう本気だった。

家庭科の教科書なんていつも学校に置きっぱなしにするのが普通だ。
だけど、Hくんはそれを持って帰るようになった。
通学電車でみんなが英単語の本を開くなか、Hくんは家庭科の教科書を開いていた。

とくべつ彼が家事全般を好んでいたというわけではなかった。
今となっては何が彼を突き動かしていたのか、はっきりわからない。
しかし彼の行動からは異様な執着を感じた。

期末テストを終えて、一週間ほどたつと
定期テストの上位ランキングが貼り出される。

家庭科の一番上にはHくんの名前があった。
みごとに有言実行してみせた。

受験に勝つことだけ考えるなら、家庭科は受験科目ではないから勉強する価値は低い。
それを必死になって勉強して、一時のささやかな栄光を得る。
はたして、どれほどの価値があるのか、客観的にみれば無駄なようにも思える。

しかし、他人が気にかけない分野では一番になりやすいという好例だと思い紹介した。

ビジネスの世界では当たり前のように言われる。
ニッチな分野をせめろ、ブルーオーシャンをみつけろ、というやつだ。
つまり、Hくんの戦略は「1番になる」という目的達成においては大成功だったわけだ。

当時は「阿呆なことを」と笑っていたが、今思えば目のつけどころが非常に良い。
まず、数学や英語のような受験科目では有名大学を目指す上位陣には勝てない。
美術、音楽という分野も意外とこだわっている人間があるから勝ちにくい。
家庭科で満点をとろうという人はめずらしい。
めずらしいからこそ皆に笑われるのだ。そしてチャンスは大きい。

笑いたいやつには笑わせておけばいい。
自分は虎視眈々と成功を狙えばいいのだ。
とくにその領域が自分の興味関心のある分野であれば、なおさら周囲の評価など関係なくなる。

かくいう私にも「1番になりたい」と思い、1番になれた科目があった。
倫理である。
こちらはセンター試験で利用する予定であったから、家庭科よりは勉強する価値がありそうだ。
暗記項目が多くて、暗記が得意だった私には有利だったというのもある。
しかし興味関心があったからこそ力を入れられたのは間違いない。
また、倫理や哲学に興味を示す高校生もめずらしいものであり、家庭科と同様に競争相手が少ないのもよかった。

自分の興味関心があることや得意なことで、他の人がこだわらない分野なら一番になれる可能性は高い。

ほんとうはそういう分野なら順位なんて気にしなくていいんだけどね。

好きなことは好きなだけ学べばよいのである。

スキ、フォロー、拡散、購入、サポート、コラボ あなたができる最大の方法で、ご支援ください。