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私的 芸術鑑賞

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・直感的に良いなと思った作品を選んでいます ・芸術に関しての知識はない素人です ・観て感じたことを文章化する練習として書いています
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記事一覧

Donati's Comet/ William Turner

高台から彗星を観測している。 眼下に見える平地に生える高い木々が、もう点の集まりにしかみえないくらいの高さだ。 おかげで空を遮るものは何もない。 日はしずみきっていなく、地平はまだ少し明るい。 枝葉を上にも横にもグネグネと大きく広げた木がしずみかけている太陽の光を遮るように立っている。 星達はまばらで輝きが少ないなかでも、彗星は尾がしっかりと確認できるほど明るい。 先端から湾曲した尾をひいている様子は一点から光を放出している手持ち花火みたいだ。 ここは人のよく通る道だろ

Wheatfield under thunderclouds/Vincent van Gogh

置き去りにされたような世界で広がる麦畑をみている。 空と大地はぴっかりと分けられている。 画面の六割ほどを埋める空は全体に青空であるが、薄い軽い雲が一定のリズムを持って塗られている。 青と白が薄く混ぜられた線が空の構成要素である。 画面左には絵の具も盛り上がるほどうねりを持って、雷雲が静かに力を溜めるように発達している様子が観察される。 果てはあるのか、青い空の奥は暗くなっていく。 そうして視線を下げていくと、突如大地があらわれる。 でこぼこと曲がった空と大地の境界。

Girl with Hay Rake/Winslow Homer

まばらに木の生えた斜面に農婦姿の少女がひとり立っている。 左手で熊手を肩にかつぎ、もう一方の手を腰にあてて背筋をのばしている。 熊手のかたちが現代にはちょっと見受けられないものでおもしろい。 斜面を登る途中で、ふと立ち止まったようにもみえる。 なにか一息ついているようにもみえる。 風がふいたからだろうか、草や葉が空中に舞っている。 吹き上げられているのか、木から散っているのかはわからない。 緑色の葉と黄色の葉が混じっている。 静止する人物と舞い踊る葉の対比がおもしろい。

Symphony in White and Red/James McNeill Whistler

全体を構成しているのは、線。筆をなめらかに走らせた跡だ。 そのひとつひとつに色がのせられて、この世界がつくられている。 近くでみるとやはり線の存在が目立っている。 こどものころに食べた細長いひも状のグミを思い出す。 グレープ味、リンゴ味、ソーダ味、コーラ味。 それらがうねうねと集って人物なり背景なりを形どっているようだ。 あいまいに描かれている人物と背景のせいで、ぱっと見ではどんな場面かもわからない。 赤い団扇のようなものが目立つ。なにやら舞台の上で人が踊っているのだろう

The Lonely Pine/George Inness

日が落ちかけ、赤黒く染められた地平線が見える。 黒く引かれた地平の向こうでは、沈む太陽が燃え盛る。 光が粘土になって、のっぺりと地平線に貼りついているみたいだ。 太陽の力強さを物語っている。 空に赤味を残し、平原はわずかに夜の黒さに侵され始めた。 平原には一本の松の木が立っている。 地平線と垂直に交わり、残光のあたたかさを感じながら立っている。 細長い三角形のシルエットをつくるのは豊かな葉だ。 限りなく拡散する空と大地の中で、木の葉達だけが幹と枝にぎゅっと収束されている。

The Concord Meadow/Childe Hassam

やさしい日の光とおだやかな風を全体に感じる。 アメリカのとある丘陵地帯。 遠くの稜線はゆるやかに空を食んでゆく。 視界をさえぎるものはなにもない。 丘へ向かうこちら側にはゆたかな草原が平面的にひろがっている。 おおきく蛇行した川が流れている。 季節は秋なのか、草は色の抜けたものが多い。 川沿いのものほど白くなっている。 川のそばで私はこの景色をみている。 手を伸ばせば冷たい川の水をすくえそうだ。 川面はフレームを超えた青空を映し返している。 平地だから、川のながれはとても