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映画『The PROM』〜ミュージカルが好きだ!〜


全てのミュージカルファンへの賛歌!
閑古鳥が鳴くブロードウェイの輝きを取り戻す、パワフルなエナジームービー!!

Gleeのライアン・マーフィ監督、主演にあのメリル・ストリープ、あのジェームズ・コーデン、さらにニコール・キッドマンにアンドリュー・レイノルズという意味不明なくらい豪華な大スターを結集させたミュージカル映画である。

原作は2016年〜2019年にブロードウェイにて上演された同名ミュージカル。
現地で公演を観た人のブログを読むに、そのオリジナルキャストにまつわる小ネタも映画の中でユーモアたっぷりに描かれている。


ミュージカルファンが喜ぶ小ネタも満載だ。
メリルとジェームズが共演した映画『INTO THE WOODS』にかけてかソンドハイムの名前が出てきたり、女子高生エマの自室にレミゼのコゼットの絵が飾られていたり、シカゴのオマージュがあったり。
SNSを通じて若者が自己表現し多くの共感を得ていくシーンは明らかにDear Evan Hansenを意識したカメラワークで感動もの。
音楽や演出面は、後半からは学園ものということもあり全体的にハイスクールミュージカルやGleeを思わせるフレッシュなダンス、カラフルな照明を使って盛り上げる。
同時にバランスよくヒットミュージカルのジャンルを横断していて、楽曲の聞き応えもある。


それを歌い上げるスター達の見所を紹介しよう。

メリルは言わずもがなだけれど、今回もひたすら歌いまくりで全く衰えない美声を遺憾なく発揮する。圧倒的なスターオーラを放つ超ナルシスト、でもどこか憎めないおばちゃんを魅力たっぷりに演じてみせる。やっぱりいくつになっても少女のように恋をするメリルが可愛くて大好き!あと衣装が全部死ぬほど素敵。

ジェームズは天才コメディアンながら、いつも天真爛漫だからこその深い悲しみの芝居が本当に素晴らしい。傷ついた少年が21年かけて夢を叶える彼のソロには号泣。

ニコールはセクシーで優しいお姉さん。なんといっても彼女の"ザズ"は鳥肌。さすがとしか言いようがない。

ブックオブモルモンのアンドリューも出番は少ないながらコミカルに華を添える。抜群のスタイルと運動神経とパワフルな美声を活かしたモールでのダンスシーンは思わず体が動いてしまった!

彼らが応援する、田舎の何者でもない少女を映画初出演の新人が演じるというのもニクい!
今回のシンデレラガールであるジョー・エレン・ペルマンも素晴らしい!歌声も申し分なし、初々しくもすでにオーラを放ちまくっていて、今後爆発的に売れそう。

彼女役を務めるアリアナ・デボーズも安定感があるしどこかで見たな、と思ったらハミルトン出演女優にして、今年末公開のリメイク版WEST SIDE STORYでアニータを演じる正真正銘の実力派だった。

忘れてはいけない社会的テーマがLGBTQだが、これを扱うミュージカルはごまんとあり、特に新しいものではない。
しかし、おざなりにせず苦悩と理解をしっかり描いているところも好感度が高い。ゲイが主人公の物語は多いが、レズビアンは比較的珍しいのでそこは挑戦だっただろう。


私が一番ぐっと来たのは、田舎町の校長がメリル演じる落ちぶれブロードウェイスターのディー・ディーを前に、自分にとってミュージカルとはどれほど救われる存在かと説くシーンだ。

お金を貯めて退屈な毎日を飛び出し、はるばるブロードウェイへ出かけてミュージカルを見まくる。
ネオンが輝く街並みを見上げながら劇場に足を踏み入れると、ふわふわした絨毯に美しい天井、そこはもう異空間。
幕が上がり、煌びやかなショーに身を委ねる。なぜ突然歌い踊り出すのか?そんな理由はもはやどうでもいい。
どっぷりと非日常に浸かり、全身でエンターテイメントを感じ、立ち上がって惜しみない拍手を送る。

それはまさに私がやってきたことだった。

仰ぎ見る役者の輝きは、スパンコールに彩られた衣装と眩しい照明のせいだけではない。
その姿にどれほど力をもらえるか。
熱っぽく語る彼のキラキラした眼差しに、どうしたって自分を重ねてしまった。

夢の場所、ブロードウェイ。
歌があれば、人はどんなに孤独でも生きていける。やがて繋がれる。

エンターテイメントは、ショーは、生きる希望だ。人間に与えられた最大の喜びだ。
コロナ禍の今だからこそ、このダサくてカッコよくて温かい物語を見られたことに、大きな意味がある。

世界はまだ死んでいない。
小さなブルーベリーみたいな心臓は、まだ鼓動している。
まだ熱狂できる。
久しぶりにその感覚を思い出し、多幸感でいっぱいになった。

コロナが落ち着いたら、真っ先にブロードウェイに行ってミュージカルを全身に浴びよう。
あの熱狂を心の中に隠し持って、今をエネルギッシュに生きよう。

生きる力が湧いてくる名作です。
Netflixで独占公開中。ぜひご覧ください。

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