地方創生10年の陰鬱
△概要
地方創生が始まってから10年が経過しましたが、人口減少や東京圏への一極集中を食い止めることはできず、地方の衰退は続いています。政府はデジタル化や観光・農林業の拠点整備など多岐にわたる施策を実施しましたが、成果は限定的でした。首都圏からの移住促進や地方での雇用創出が思うように進まず、地方自治体間での人口の奪い合いが続いています。今後は、首都圏の大企業から優秀な人材を地方に派遣するなど、新たなアプローチが必要です。地方中核都市の機能を充実させ、地方創生を再スタートさせることが求められています。
□地方創生の現状と課題
○地方創生が始まって10年が経過しましたが、人口減少や東京圏への一極集中を食い止めることはできず、地方の衰退は続いています。政府はデジタル化や観光・農林業の拠点整備など多岐にわたる施策を実施しましたが、成果は限定的でした。首都圏からの移住促進や地方での雇用創出が思うように進まず、地方自治体間での人口の奪い合いが続いています。地方創生の基本目標である「地方での雇用創出」「地方への人流作り」「若い世代の結婚・出産・子育てを叶える」「魅力的な地域作り」の4つの目標は達成されていません。
□政府の取り組みとその評価
○政府は今年6月、2014年に始めた地方創生に関する報告書を発表しました。20年の国勢調査で5年前より人口が増えた自治体が317あるなど、「成果が一定数ある」と評価しましたが、「国全体で見たときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っていない」とも認めました。自賛と自戒が入り交じるかのような表現ですが、10年間の取り組みを振り返れば、認められるような成果につながった政策は少なく、抜本的な見直しが必要だと言わざるを得ません。
□地方人口増の裏側
○地方での仕事は思うように増えず、14年からの10年間で首都圏では就業者数が約11.5%増えたのに対し、それ以外の地域では4%増にとどまりました。政府が成果として挙げた一部自治体の人口増も自治体間の人の奪い合いにすぎません。例えば、北海道では23年に道内から札幌市に約1.1万人の転入超があったが、同市からは首都圏に2232人の転出超となりました。地方都市が人を集め、首都圏がさらにそこから人を吸引する構図は変わりませんでした。
□新たなアプローチの必要性
○首都圏などからの移住を優先課題にする従来の考え方を転換し、首都圏の大企業などに徹底して働きかけて補助金も付け、優秀な人材を兼業や副業の形で地方の中小・スタートアップ企業などの支援に回すといった手もあります。経営幹部やコンサルタントなどでの活用も考えられます。そうした人材のキャリア形成まで手厚く支援しながら、有能な人材の頭脳移転を図ることが重要です。
□地方中核都市の機能充実
○札幌や福岡などの中核都市の機能をもっと充実させ、首都圏への流出をそこで食い止める方策も重要です。地方中核都市に人材が残れば、意思決定を東京ではなく地元でできるので、その他地域との人材、資本の交流は進めやすくなります。地方創生を再スタートさせるためには、もっとできることがあるはずです。
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