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グシしつけについて

投げ銭スタイルなので最後まで読めます。
参考になると嬉しいです。
とはいえ、まだまだ私の個人的な考え満載です。
知っている言われや経緯など教えてください。

留袖とか喪服の掛襟にグシがかかっているのを見たことがありますか?
掛襟以外に、襟下や裾、袖口、内揚げにも入れます。

このグシは、返しグシと縫いグシあります。
Twitterの通り、その違いは、丸い点々か、ほんの少し長い点々かで
返しグシは返し縫いをしながらするので一針一針グシをかけていき
縫いグシは表に出る目が細かくなるように運針のようの縫いすすめていきます。


このグシというものを、取るか取らないか、という質問をよく見かけます。
取るという人と、取らないという人がいますよね。

返しグシしか知らなかった若い頃の私は、
え?どうやってとるの?そんな簡単にはとれないよ、とずっと思っていました。
また、返しグシは取らないけど、縫いグシはとると聞いていました。

ネットで全国の和裁士さんとお友達になって
縫いグシが今でもあるということも知りました。

ここで、返しグシと縫いグシは
いつ始まったのかという疑問が長く私の頭の中にあったものの
的確な答えがないまま何年もたちました。

少し寄り道して、グシよりも前に、新しく着物が仕立て上がってきた時に
袖や襟下、裾にかかっているしつけ糸についてお話ししたいと思います。

このしつけ糸、厳密には、しつけ糸がついているから新しいのではなく
しつけ糸をしないと仕立てられないのでしつけ糸をかけているだけなんです。
仕立てる途中で、しつけ糸をかけているわけで
仕立て終わってから、しつけ糸をかけているのではないのです。

私が読んだ本に
「着物のしつけは、家を建てる時の足場と同じ
建てたら取り外す丸太と同様、着る時には取るのがが当たり前」
と書かれてありました。
つまり、どんなしつけ糸も取るもの
縫いしつけ(グシ)も本来は取るものだったようです。

この、縫いしつけ(グシ)という方法は
ちりめんという織物ができてからだそうです。
折り目がつきにくいのでその補助的役割です。

それが、いつのまにか、細かくかけるのが丁寧な仕事と思われるようになり
本質を忘れ、縫いしつけ(グシ)は取らないものと一般が思うようになったと。
そういうことが一般的になったのは専門家である和裁士の責任と
和裁士である著者が書いていました。

それから、「縫いしつけの細かいのが上手な仕事の代名詞に使われることは
笑うべきこと」とも書かれてあり
不勉強な私は非常に恥ずかしくなったのはいうまでもありません。

著者は、東京の有名百貨店の呉服屋(店名は書かれてありません)との経緯も書いてあり
縫いしつけは取るものと何度も理由を説明していたにもかかわらず
一介の和裁士のいうことは信用してくれず
ずっと縫いしつけをかけていたのだそうです。
ところが、ある日突然、縫いしつけをやめると言ってきたのだとか。
特に細かい縫いしつけを誇りとしてきたお店なのに。
その理由は、どんなに美しくかけたしつけでも着装の際に取るのは礼儀だと
お客様に言われたからだそうです。

この話を読んで、東京の有名百貨店の呉服屋さんが
今は、縫いしつけをやっているのかいないのか
めちゃくちゃ興味が湧いてきてしまい
問い合わせようかと今でも思っているくらいです。
しないですけど…

長い間、グシを取る取らない問題で色々考えていたのですが
この本に行きあって、何となくですが納得できました。
グシを入れるのが既に一般的になっている地域もあるかも知れないので
このまま、続く仕立て方になるのでしょうね。
普通の着物には不要の作業だし
仕立ての観点から言うと入れなくても問題ないです。
呉服屋さんの商業ベースに乗っかってしまって
風習みたいになったのかもと、勝手に解釈しています。

読んだ本には、返し縫いによるグシは出てこないので
縫いグシよりも後の時代に、縫いグシとの差別化とか
より丁寧とか、取れないようにするとか
なんらかの理由で出てきた縫い方なのかもと、想像しています。
私が学生時代に、学校で受けていたお仕事は
呉服屋さんのものや系列企業のものだったのですが
着物にグシを入れるところと入れないところがありました。
なので、同じ地域でも、呉服屋によりけりだったのか
お客様が選んでいたのか
兎にも角にも、全てに入れるものではありませんでした。

グシが目立つのは、濃い色の着物で、薄い色の着物はあまりわからない。
(留袖や喪服はよく目立ちますね)
グシが入っていることを、ステータスのように思うなら入れる
そうでないなら入れなくても良いのかなぁと思います。
仕立て代が高くなるだけですしね。
地域差もあることですし、あくまでも、個人的な意見です。

もう一つ言うなれば、長襦袢のしつけ糸は、取らなくて良いのですよ。
今回読んだ本にも、そう書かれていました。
型崩れ防止のためにも取らないで着た方が良いです。
でも、どんなしつけ糸も取るものだという話が長襦袢に伝わっていて
取る人が多いのが現在です。

長襦袢のしつけ糸は着物より細かくかけるのですが
プレタだとすっ飛ばしてかけていて引っかかりやすいこともあり
取りたくなりますよね。それでオッケーです。
お誂えした長襦袢は取らないで着ても問題ないですよ
とだけ伝えていこうと思っています。
とらずに着ていて、引っ掛けて取れたら取りましょうと。


ちなみに、よく、オークションサイトやリサイクルショップで
「未使用品、しつけ糸付き」
という謳い文句が書かれていることがありますよね。
確かに、しつけ糸がついていたら、未使用品かも知れないし
もしかしたら、そうではないかもしれない…
某界隈では新品に見せかけるために、しつけ糸を後でかけることもあったり
丁寧な昔の人の場合、シーズンが終わって
箪笥に片付ける前に、袖の型崩れを防ぐため
しつけをかけてからしまっていた、ということもあったので
一概にしつけ糸がついているからと言って
新品とは限らない、ということ頭の隅に置いておくと良いかもしれません。

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