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【感想】ONE OK ROCKのDelusion:Allを聴いて

ここ最近で、一番衝撃を受けた一曲になった。

今の日本の中で、それなりの影響力を持つ存在が、ここまで赤裸々に「世の中に物申す」ような曲があっただろうか。

これまでにも述べているのだが、私は英語がからきしダメである。

単語も何もかもフィーリングでしか拾えない、中学三年生レベルの知識しかないのだが、そんな私の耳に残った単語が「democracy」だった。

「democracy」とは

「democracy」とは、民主主義という政治体制のことである。民主主義は、国民が政治に参加し、政治家や政策を選択する権利を持つ政治システムである。具体的には、選挙によって政治家が選ばれ、国民の意志が反映される。また、民主主義には、多数決や少数意見の尊重、権力の分散などの原則が含まれる。

weblio辞典より

いつも通り、作業用に適当なプレイリストを探していた際、そういえば少し前にワンオクの新譜出てたっけと思い出した。

特に何も考えずに再生を押して、その日の予定を組み出したあたりで、「democracy」という単語が聞こえてきて、思わず手を止める。

…今なんて言った?デモクラシー?
令和の時代の、このご時世で、日本のロックバンドが民主主義を歌ってるの!?

衝撃だった。

今どき政治的なことを言ったら、安直に右だ左だと騒がれるような、島国日本のこの世の中で、そんな挑戦をするアーティストがいようとは…!

そこからしばらくは、とりあえず真剣にMVを見て歌詞を理解することに時間を使った。

興奮のあまり、いつになく画像の多い、大変長い記事になりそうなので、お時間のあるときにでもお付き合いください。よろしくお願いします。

では、いざ。


作り手を見るに、複数の人が関わっている共同作品だとは思うのだけれど、その主張するものの核になっている部分は、間違いなくボーカルであるTakaが作っている。

そうだとするならば、本当にかなりの思いを込めて作られた曲なのだろうなと思った。

以降、私の主観を入れての話になるので、まず「あなた」が観てどう感じたかを、大切にしてもらえるとありがたい。

そのため、まずはMVを観てみて欲しい。

歌詞は全て英語なので、直接的に何を述べているかは訳を見ないとわからないかもしれないが、そこにある彼らの「感情」は明確に受け取れると思う。


こういうとき、原則として私は公式の動画を貼ることを心がけている。
自分が良いと思ったものの、公式MVの視聴回数などに貢献したいからである。

それでも公式に歌詞そのものや、訳がないので(本当にもったいない、せめて歌詞をつけてもらえたら自分でも訳しやすいのに…!)、いくつか日本語訳をあててくれている動画を探した。

その中で、非公式ながら公式をリスペクトした丁寧な仕事がされていると感じられるものがあったので、個人的に最もしっくりきたものを共有させてもらう。

「Delusion:All」は、映画キングダムの主題歌ということで、訳の動画はそれに沿ったものになっているが、今回そこはさほど重要ではないので、とりあえず和訳そのものを見てほしい。

…すごい歌詞だと思わない?

ものすごく熱量のある言葉が並ぶ。
この世への怒りというか、やり場のないフラストレーションというか。

あまりに、「ロック」だ。

そういう彼らなりのメッセージを目一杯詰め込んで、かつ映画のタイアップの役割もしっかり果たして。Taka、本当にすごい…。

開始三十秒で一番盛り上がる、そして一番言いたいことが詰まっているだろうサビの部分に入るのにも圧倒される。


以降、曲の中で私の心が拾ったものを抜粋。公式のMVより。

どれも、私の主観、憶測での感想になります。
私がこのMVを観たらこう感じたよというだけなので、ふうん…くらいで見てみてください。

冒頭、合掌して頭を下げるTaka。
祈りのような、日本人としての挨拶のような。
(暗すぎたのでこの一枚の明度のみあげています)
暴動。荒れた世界。
今この瞬間、この地球上のどこかで起きていること。
荒れた空間で歌う彼ら。
周りの通行人は彼らを「見ない」のか
そもそも「気づいていない」のか。
曲の隙間にちょくちょく挟まれる、豪華そうな食卓。
争いからは遠い、「当事者意識のなさ」を感じる。

荒れた場所で、怒りを露わに暴動を起こしている人たちのシーンと、その対極にありそうな豊かな場所で、楽しそうに食事をする人たちのシーン。

もうすでに、この落差に私は頭を抱えた。
これはどちらも「現実」なのだと思うと、混乱もする。

破壊行動は激化する。
怒りは渦巻き、とどまるところを知らない。
正義の名の下に、「POLICE」を背負った人たちが
怒れる人たちとぶつかる。

荒れた人を止めるには、どうしたらいいのだろう。
暴力なくては自衛ができない。そうなると…正義って、なんだろう。

そんなこともどこ吹く風と、
穏やかそうな食卓には笑顔がある。
何が、「悪」で何が「正しい」のか。
楽しそうな食卓が次の「ステージ」に。
カメラが少し引くと、
周囲には多くの通行人が見える。

豊かな食卓の楽しい食事も、見る人にしてみれば無関心の対象。

何ならこの世は「無関心」に溢れていると言わんばかりの、皮肉やメッセージが込められたようなシーン。

彼らは歌い続けるが、
やはり周囲の人は立ち止まらない。
通りすがりにぶつかるくらい「意識」していない存在みたいだ。
豊かさの象徴のような、赤い車を
怒りで壊してひっくり返し、拳をあげて喜ぶ人たち。

どれも世界のどこかで、並行して起きている「事実」なのは間違いない。

そんな中で傘をさして、
我関せずの姿勢を貫き続ける「人々」
外界を遮断するような印象を受ける。
傘もささず、歌いかけるメッセージは
果たしてどれだけの人に届くのか。

この傘のシーンの前あたりから、ポイントカラーというか目に入る色が「黄色」と「青色」になっている。

どこまでのメッセージがあるかはわからないが、どこかの国の国旗の色だと、私は思った🇺🇦

静かなシーン。
蝋燭を掲げてたくさんの人が並ぶ。
老若男女問わず、祈るような顔で並ぶ。
その中で、精一杯の想いを込めて歌う。

争いを好む人なんて、そういないはずなのに。
それは、世界中きっと共通の認識のはずなのに。

正義の顔をしている「POLICE」に
駆けて向かっていく「子どもたち」の姿。
荒れ果てた地で、歌う姿。
彼らの込めたメッセージを、
私はどれだけ受け取れただろうか。

国外に出て、アジア人として差別を受けたり、いろんな国を見たりしたと、インスタライブかどこかでTakaが語っているのを聞いたことがある。

それらの経験全てを込めて、「このままでいいのか」と改めて訴えている曲だと感じた。

右とか左とか、そういう次元の話をしているわけではないということが、どれだけの人に伝わるだろうか。


私は、いつだって音楽の根本には、感情があると考えている。

喜びや、悲しみ、怒り、そして祈り。

きょうび、言葉選びは本当に慎重さを求められるものになっている。全方向に配慮した「優しい言葉」が求められて、言いたいことをうまく言えないようなことも多い。

そんな中で、こんなにも真っ直ぐ、切に感情が届く音楽は久しぶりだった。

But maybe we’re delusional
もしかしたら私たちは妄想(幻想)を見ているかもしれないけど

Delusion:Allの歌詞より

それでもなお、明日はくる。

自分の目で真偽を見極めて、この混沌とした世の中を「生きていかねば」という気持ちになった。

ひどく励まされた曲となったし、音楽のあるべき姿を久しぶりに体感した気がする。

良い、音楽に触れられた。

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