【感想】いきなり本読み!に行ったときのこと
九月のことは九月のうちに。
ちょっと前のことだけど、記録がてら残しておこうと思う。
最近のSNSには、おすすめ機能なるものがあって、そこではときどき見も知らなかった興味深い情報と出会える。
ある日そこに表示されたものの中に、こんなイベントがあった。
「いきなり本読み!in EX THEATER ROPPONGI」
あ、高橋文哉さんだ。
へえ、内容はタイトルそのまま、お客さんを入れた会場で、いきなり本読みをすると。ちょっと面白そうだし、他の出演メンバーも豪華だ。
気が向いたのでふらりとサイトを覗いてみると、チケットがまだあった。
カレンダーを見て、予定を確認。問題なし。
ふうん、これも縁だしじゃあ行ってみよう。そんなこんなで、行ってみることにした。相変わらずのノリと勢い、大事。
内容は、過去に開催されたときのものがYouTubeにあったので、これを参考にしてみてほしい。
いやもう本当に、タイトルそのままの即興舞台。
俳優さんたちは、内容の知らない台本を渡され舞台上でみることになる。
その台本の内容がまたなかなかトンチキで、「普通」ならあり得ないものなのだ。
舞台の上の彼らは、老人も女の子も、何だかサイコパスな役も、「もう少し大人っぽく」とか「もっと荒くれ者でいいよ」とか、そういう注文を取り込みながら、物ともせずに自分の「役」として飲み込んでいく。
A・B・Cと役を割り振って演じていき、次の場面ではAしてた人はBを演じてね!Bしてた人は新キャラのDをしてね!とランダムで展開していくものだから、前につけられた注文を把握してないとキャラの一貫性が保てなくなる。
そういったところにも気を配り、しっかりその場でメモをしながら、話は進んでいく。
観客側が「何じゃそりゃ!」と笑ってしまうような役でも、舞台上の彼らは一切動じずに演じていく。
まるで、Tシャツを脱ぎ着するように、役を着たり脱いだりしていくのだ。それをリアルタイムで観られる…すごい…!
当たり前だが、そこに照れとか恥じらいは全くない。
それらは多分「外側」の人のリアクションなのだろう。演じる=その人の「内側」になるということだから、照れる必要がないのだと理解した。
ぶりっ子の役も、日本昔話に出てきそうなヨボヨボなおじいちゃん役も、性別年齢関係なく「そう見える」ように演じていく。
先に述べたように、台本は本当に「トンチキ」で、平常で考えるとあり得ないような台本なのだ。
どんな役もむちゃくちゃな注文も、二つ返事で「わかりました」と受け取っていく。そしてそれを、ほぼ即時自分なりに解釈して、演じていく。
いや、本当に何でできるの…?月並みだけど、プロってすごい。
女の子が筋肉ムキムキの岩みたいなマッチョだったり、それが突然バケモノに変化したりなんてことが、「あり得る」ように演じられることで、あっという間に「あり得る」世界になる。
台本が「トンチキ」であればあるほど、俳優組は「演じたことのない役」をぶっつけ本番で演じることが求められる。
それらが見事「あり得る」ように見えたとき、本当に「俳優業」という仕事の凄さに触れることができた気がした。
終始、「私は何かすごいものを観ている…!」と心が動きっぱなしだった。
「あり得ない」を「あり得る」ように見せることが、「演じる」という仕事なのかもしれないと、少しだけ本質に触れることができたような気もした。
今回きっかけをくれた高橋文哉さん、ありがとう!本当に素晴らしかった。
ベテラン勢に囲まれながら、物怖じせずユーモアも忘れず、全力でいろんな声を出し、本当にいろんな役を演じられる俳優さんなのだと感動した。
喉が柔らかいと褒められていて、なるほどいろんな声を出すには喉が柔らかくないといけないのか、なんて気づきも得られた。
先日見たブルーピリオドのユカちゃんや、こないだまでのドラマで見ていたヤンキー役や、アニメの声優をしていた悪役が、全部彼の財産になっているのだなとその芝居に見入ってしまった。
そう思うと、私は結構彼が出ている作品を選んで観ているな。これからも観られたらいいなあ!
いやあ、俳優さんって本当にすごい…!
ちなみに言うまでもなく、小泉今日子さんも板垣雄亮さんも、小林聡美さんも素晴らしかった。
可愛い役は可愛く、おっかない役はおっかなく…。
観客にも、一部台本を読ませるような仕掛けもあって、主催の岩井秀人さんをはじめ、みんなが場を盛り上げながらストーリーを広げていく様子が、もう本当に楽しくて最高だった。
客席が、場所ごとに結構細かく値段分けされていたのも良かった。
こういう即興劇みたいなもの、初めて観たからもう本当にお腹いっぱいに味わった。
何はともあれ、プロって、やっぱりすごい。
大変いい刺激をもらった、とても良い機会だった!
また何かこんなチャンスがあれば、勢い任せに飛び込んで見ようと思う!
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