1.はじめに
今回紹介する書籍は、『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』になります。プロジェクトに関する数値や実例をもとに紹介されています。
2.この書籍の主題
この書籍の主題は、かなりの部分が以上の2つの引用部に集約されると思います。
3.印象に残った所
書籍の内容は冒頭に紹介した内容を実際に行われたプロジェクトを例に説明しながら、後半ではとんでもない失敗に陥りにくいプロジェクトタイプを紐解き、プロジェクトを成功に導くための方法を示しています。
この書籍では、2つの建物(シドニー・オペラハウスとグッゲンハイム・ビルバオ)を完成までの過程を比較して説明しています。引用部分にある通り、2つの事例は対照的な事例だと感じました。
プロジェクトと趣は異なりますが、個人的な経験則として読書も「経験」(≒読んだ本の数)が生きる場面があると思います。例えば、"本を買う際の判断基準"や"本を理解するための理解力"も「経験」として得られると思います。
"本を理解するための理解力"を説明する例として、視覚的に分かりやすい例として、本書のスクリーンショット画像を掲載します。赤色、青色、黄色でのマーキングは読んだ際に私がつけたもので、マーキングの仕方として、赤色でマーキングされた"では、エンパイア・ステート・ビルは、~価値がおとしめられただろうか?"の内容は、次に続く"とてもそうは思えない。~――不要なリスクを負わずに――勝ち取った。"の文章で否定されているので、青色でマーキングし、その次の"すべての大型プロジェクトが、~、経験を最大限に活用することである"が重要なポイントであると判断し、黄色でマーキングしています。このように文章の構造を読み解き、その部分の文章が何を言いたいかを理解する際に「経験」は活用できると思います。
もちろん単純に知識量が増える他に、"新しく読んだ本の内容が過去に読んだ本の内容を補強・補間される"といったことが発生します。
なお、スクリーンショットした部分に名前が挙がっているエンパイア・ステート・ビルに関するデータも紹介されています。
余談ですが、"ファットテール"という用語を検索したところ、資産運用に関するページが引っかかったので、その辺りの分野では知られた用語であると考えられます。
参考 裾の重い分布
自動車ではありませんが、モジュール性という観点だと米国のM4中戦車のモジュール性の高さを思い出しました。
このレベルのモジュール性の高さを第二次世界大戦の時点で可能だったという所はなかなか重要だと思います(これは当時の米国の発達したモータリゼーションと工業力がなせる技であったと思います)。
4.感想・誰に勧めたい本か
この書籍では、計画立案の重要性と、なぜ計画立案がおなざりにされるのかということが説明されており、非常に参考になります。特に権力のある方の「思い付き」は止めることが難しいので、そのような意味でも、そのような立場の方は、この本は読んでおいた方が良いと思います。
なお、この書籍には、似たような事例として、スティーブ・ジョブズ氏の事例(パワーマックG4キューブ)も掲載されています。
また、別の書籍でも似たような事例が掲載されていましたので、その書籍の紹介noteにて該当部を引用しているため再度引用します。
参考note:『崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男』について
ジェフ・ベゾス氏、故・スティーブ・ジョブズ氏、故・岩田聡氏ほどの方でもこのようなことが起きるのであれば、我々でも起きてしかるべきだと考えた方が身のためだと思います。
また「プロジェクト」に携わる人(特にプロジェクトに関して重要な権限を持つ方や、プロジェクトマネジメントを行う方など)はもちろんのことですが、引用部にもあるように住宅のリフォームなどは個人にとって「大きいこと」ですので、普遍性のある内容ですので、それ以外の方も読んで損はないと思います。
また、後半に掲載されている発想(スモールシング戦略)は、私の感触とも合うと感じます。私は以前より特定の書籍に関するnoteを執筆していますが、元々、書籍に関するnoteを執筆し始めた時から"書籍を読む速度"と"書籍を紹介する文章を執筆する速度"の間にある程度速度差(前者の方が早い)があり、如何にnote執筆の速度を上げるか?という部分で試行錯誤を繰り返しており、その結果として全体的なボリュームを抑えて文章量をダウンサイジングしたり、noteの構造をある程度固定化したり、自分で執筆する部分を減らし、減らした部分を書籍からの引用に置き換えるなどしており("どこを引用するか?"に対する考慮が必要ですが、これは、"感想単独"より"感銘を受けた部分の引用"+"その部分を読んで感じた感想"の方が説得力が出るのではないか?"という執筆経験から得た考えによるものです)、本書に書かれていたアプローチと相性が良いと感じました。
5.余談
某メタバースプラットフォームの公式番組を長きにわたり、毎週見ている身としては、聞いたことのある単語が出てきたので若干ドキッとしました。恐らく何の関連もなく、単なる偶然の一致だと思います。
この余談のさらに余談になりますが、その"某メタバースプラットフォーム"つながりだと、提供している機能のうち、"ワールドクラフト機能"は触っていてモジュール性が高い機能だと感じました。
6.追記(2024年10月19日)
本noteを執筆以降、本書籍で触れられていた内容に関して、少し気になる動きがあったので、追記します。本note追記時点でホットなトピックである生成AIにも関わる内容です。
本noteで引用した書籍の内容に関して、「1つの大きいもの」型のプロジェクトとして挙げられていた中に、"原子力発電所建設"が入っていましたが、それに関する内容です。
引用部分に出てくる「小型モジュール炉(SMR)」に関しては、直近でいくつか気になるニュースになっていました。
生成AIでは膨大な電力が必要な技術ですが、その電力は発電方式によっては温室効果ガス(CO2)を生み出すため、それを避ける狙いがあると考えられます。生成AIに必要な電力を賄うため、SMRへの投資が進むことで、技術革新が起こり、有効な発電手段になりえる可能性はあると思います。
それに関連する内容として、旧来型の原子炉の再稼働のニュースとして流れてきました。
なお、引用部分に何度かお名前が出てきたビル・ゲイツ氏はアメリカのマイクロソフトの創業者ですが、現在は慈善家などとして活動されています。以下はビル・ゲイツ氏の書籍(地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる)からの引用です。
7.紹介書籍・関連書籍
BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか? Kindle版
崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男 Kindle版
地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる Kindle版