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#3【ZWIFT・ロードレース】エアロor軽量化 どっちを取るか?コースによって最適なフレーム・ホイール選択を考える~富士ヒル編~

今回は、実践活用として富士ヒルのデータを検証したいと思います。
#1でZwiftの特徴として、ブレーキのエネルギーロスがない事を挙げました。
その為、総出力から空気抵抗が求まる事について記載しました。

現実のレースでもヒルクライムレースだとブレーキをほぼ使わずに走り切る事ができます。よって前回と同じ手法で機材検討していきたいと思います。

1.富士ヒル実走データ

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富士ヒルのコースは、高低差1255m、距離24kmと長めですが、平均勾配は5.2%と国内のヒルクライムレースとしては低めでそれなりに速度が出るので、空気抵抗もそこそこあると言われています。

表は2018年の私の結果です。
 タイム 1:12:02
 平均出力 237W
 体重59.5kg+装備1.5kg
 PWR 3.98W/kg
使用機材
 Trek Emonda SL6(2017)
 Mavic Ksyrium Pro UST(+チューブレスタイヤMavicイクシオン プロ UST)  ※ペダル込・ボトルなしで7.2kgです。

Zwiftと違って、不確定要素がいくつかあります。まず転がり抵抗係数で、Zwiftは0.004と言われていますが、これは現実的にはかなり低い値のようです。ここはえいと0.005として計算します。

あと大きいのはパワーメーターの誤差です。逆に計算結果で妥当な結果が出てこれば、ある程度パワーメータの値が信頼できると言えます。
※特にヒルクライムは、絶対に必要なエネルギー量が決まっているので検証がしやすい。

■Zwift
 パワーメーターの値⇨走行結果 ・・・誤差がない

■現実世界
 人間の出した出力⇨走行結果   ・・・誤差がない

結果を見ていくと、空気抵抗は平均で24.4Wとなりました。平均20km/hの値よりやや低めと思われる値ですが、ドラフティングの影響・標高の高さによる空気密度の低下を考えてと、そこそこ妥当な結果と思われます。

比較Bで機材重量が”-1kg”となった場合は出力を3.1W減らすことができ、タイムに換算すると約56秒削減できます。

比較Cで機材のエアロ効果を5%改善(空気抵抗を5%削減)した場合は、約22秒削減できます。

2.”1kg”減量のタイム削減簡易計算

これは上でやっている事と同じですが、簡単に計算できるように書いておきます。

1kgをスタートからゴールに運ぶのに必要なエネルギーは以下計算で求まります。

①転がり抵抗消費エネルギー
 Crr×m×g×L
crrは転がり抵抗係数、mは重量(体重+機材)、gは重力加速度、Lは距離
転がり抵抗係数を0.005とすると
0.005×1kg×9.8×24000m=1,176(J)

③登坂抵抗消費エネルギー
m×g×H
Hはスタートとゴールの高低差
1kg×9.8×1255m=12,299(J)

1kgをスタートからゴールに運ぶのに必要なエネルギー
①+③=1,176(J)+12,299(J)=13,475(J)

もし1kg減量できれば、これだけのエネルギーが削減できることになります。

もし平均200Wで登るとした場合は

13,475(J)÷200W=67.4秒短縮

★1kg削減時のタイム短縮効果は以下の式で求まります。
13,475÷平均出力(予定)(W)

3.エアロ化した新型Emonda

2021年新型Trek Emondaの謳い文句として、

・平坦を1時間走行した際のタイム差は60秒

・8%の勾配を1時間走行した際のタイム差は18秒

これってどういう事なのか考えたいと思います。

 3-1.平坦を1時間走行した際のタイム差は60秒ってどういう事?

時速40km/hの場合、1時間で進む距離40km。タイムを60秒短縮なので、59分で40km進む時の時速は40.68km/hになります。

(空気密度×Cd×A×v^3)/2=P
速度vの3乗に比例 
空気抵抗係数Cdと前面投影面積Aに比例

旧エモンダをCdA,v 新エモンダを(CdA)',v'とすれば

(空気密度×CdA×v^3)/2=(空気密度×(CdA)'×v'^3)/2
(CdA)'/CdA=v^3/v’^3   これを計算すると・・・

(CdA)'/CdA=0.95

何が言いたいかと言うと、新エモンダの空気抵抗は旧エモンダの95%に減少していると言っています。

時速35km/hの場合 タイムを60秒短縮 ⇨時速35.6km
時速30km/hの場合 タイムを60秒短縮 ⇨時速30.51km

これらを同じように計算すると

(CdA)'/CdA=v^3/v’^3=0.95 と全く同じになります。

何が言いたいかと言うと、1時間走行した際のタイム差60秒はどの速度で走っているライダーでも同様に60秒短縮できる

5%空気抵抗削減と言ってもユーザーにはいまいちピンとこないので、1時間60秒早くなると言った方が分かりやすい&どの速度のユーザーでも同じなので余計な説明もいらない、という訳です。

 3-2.8%の勾配を1時間走行した際のタイム差は18秒ってどういう事?

ヒルクライムと平坦の時間削減の計算は少し違います。上述の通り、ヒルクライムは登る為に必要なエネルギーが決まっています。ざっくり言えば、同じ体重で、平均200Wのライダーと平均100Wのライダーはタイムで2倍の差がつきます。

速度は低いので、この領域で数秒のタイム変化で速度が変わっても、空気抵抗はほとんど変化しません。
よってエアロ効果(空気抵抗削減)分のエネルギーを登坂抵抗に回せばその分タイム削減ができるという仕組みです。

例えば平均200Wのライダーが18秒タイムを短縮できたということは
200W×18秒で3600(J)のエネルギーを削減できたということです。

1時間(3600秒)で3600(J)のエネルギー削減ということは、

3600(J)/3600秒=1W    毎秒平均1W 削減できたということになります。

上の結果から、新型エモンダの空気抵抗削減率は5%なので逆算してやれば

1W/0.05=20W

旧エモンダで8%の勾配を200Wで走った場合の空気抵抗は20Wで、新型エモンダだと空気抵抗が19Wになるので、1時間で18秒タイムを短縮できる

300Wで計算した場合は、300W×18秒=4800(J)
4800(J)/3600秒=1.33W
1.33W/0.05=26.7W
300Wで走れば、200W時よりも速度が上がるので、空気抵抗は26.7W。
だいたい合ってそうです。

旧エモンダで8%の勾配を300Wで走った場合の空気抵抗は26.7Wで、新型エモンダだと空気抵抗が25.4Wになるので、1時間で18秒タイムを短縮できる

上の結果に戻ると、私の結果で5%の空気抵抗改善があった場合のタイム削減率は22秒です。先程のエモンダの事例から見ても割と妥当な数字だと思います。

4.まとめ

★富士ヒルの機材選択に関して
■1kg減量のタイム改善は下の式で求まる
  13,475÷平均出力(予定)(W) 
  ※240Wで計算すると 56秒

■空気抵抗を5%削減できれば、タイムを約22秒短縮できる。

この場合は、
 空気抵抗を5%削減=400g減量相当

空気抵抗を5%削減ってどれくらいの話かと言うと旧Emonda⇨新Emonda
で実現できているとすると潤沢な資金があれば不可能な数字ではなさそう。
※共に最上級グレードの比較 。

↓作成した計算シートは公開しておきます。



 


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