見出し画像

『シャドウバース チャンピオンズバトル』がとっても「forme」だったという話

■はじめに

 こんにちは。今まで見た中で一番つまらなかった映画は? という質問には即答できる、花倉みだれです。
 逆にこれがゲームだと即答できないですし、それだけ映画のインプット量が少ないということなんでしょうね。多少でも詳しいと即答できなくなるんだなぁ、などとしみじみ思います。
 というわけで、今回は『シャドウバース チャンピオンズバトル』をクリアしたのでその感想なんかをつらつら書いていきたいと思っています。

■結論

 家庭用ゲームとして単品でまとまっていて、とっても「for me」なゲームでした。個人的な満足度は100点です。
 この記事が少しでもこのゲームの評価に寄与すればいいなと思いますし、企画を通して作り上げて流通に乗せてくれたことに感謝したいくらいです。
 なんなら、直近の時間をかなり奪われてしまったので手をつけたの後悔してるくらいです(笑)

 ただ、例えば私が忖度しないで書けるファミ通のライターだとしても、多分つける点数は7~8点くらいでしょう。

画像1

イメージ図。素材はこちら(https://www.pixiv.net/artworks/81246786)のをお借りしました。(お叱り受けたら消して作り直します)

 ものすごく「私(みたいな人)に向けて作ってくれた」という感覚があった一方で、手放しで全方位に絶賛できるタイプのタイトルでもありませんでした。
 この「私」というのは「初期~中期にシャドウバースSP版をプレイしていたTCG・DCG好きのユーザー」というところになるのかなと思います。
 間違っても現行のSP(PC)版ユーザー向けの作りにはなっていない印象でした。

■どれくらいやったの?

画像2

画像3

 ストーリー完走+サブクエスト完走+クリア後ボス撃破で、合計82時間弱ですね。
 RPGが直進で40時間、やり込んで80時間くらいのイメージなので、なかなかプレイしたなぁ、というのが実感としてはあります。

 ちなみにSP版は、あらゆるメディアの中で唯一、仕事以外では積極的に見たくないレベルで嫌いなIPとコラボしたイベントが開始されたタイミングでアクティブからは遠くなってしまっています(冒頭の伏線回収)。対戦ゲームで、嫌いなキャラクターの顔を見なきゃいけないのは本当に苦痛でしかないんですよね……。
 「十禍絶傑」「Altersphere 次元歪曲」あたりが最後の記憶なので、2年弱くらい非アクティブですね。

画像4

 ランクはマスターで、約5000勝。「昔熱中した」が嘘ではないくらいにはやっていたんじゃないでしょうか。

 「とっても自分向けだった」ということを言うためとはいえ、自分語りが続いてしまうのはちょっと難しいですね……。

■ゲームの内容

 既存タイトルで言えば「遊戯王タッグフォース」「カスタムロボ」などが近い印象です。

 ホビー(この場合はシャドウバース)のバトルを通じたストーリー・サブクエストが展開して、それらをこなすとカードがもらえて、それを使ってデッキを作り変えてボスに挑む……というようなものですね。
 RPGにおけるレベルアップの要素がカードプールの増加に置換されているだけなので、つまらないわけがありません。

「ちょっとずつカードを揃えてデッキを強くしていく」というのは本当に楽しい体験です。
 現実のTCG・DCGでは(かつ歴史が長いタイトルだとより顕著ですが)「ちょっとずつ調整」はあっても「ちょっとずつ強化」する機会というのは意外なほどに減っていきます。「明らかに弱い状態のデッキ」で大会などに参加してボロ負けするタイムロスのほうが大きいと考えられがちで、シングルで一気に揃えて挑むことが多いでしょう。

 『チャンピオンズバトル』では、対戦相手もしっかり徐々に強くなっていくので、ちょっとずつ強くしていく喜びややりがいのようなものがものすごく強く感じられます。この体験を0からやれるというのは、最初からネットに開かれているDCGよりも、買い切りのゲームだからこそだと思います。

 ただ、この時点でも「for me」が発生しています。
 私はこの「徐々に強くなっていく感じ」がとても好きなのですが、意外とこのフェイズを嫌うTCG(DCG)プレイヤーも少なくありません。
 最初から最強デッキ同士で、プレイング力で競いたい! というような指向ですね。
 これはDLCなどを交えることである程度希望に沿うこともできる一方で、買い切りゲームとしての面白さは損ねてしまう部分があると私は感じています。
 よくレベルデザインが調整されているソシャゲほど、ガチャをするとつまらなくなる……というありがちな現象がシンクロしますね。

 また、シンプルにカードプールが現行に対してとても狭い(第3弾まで+オリジナル)というのも、現在の超高速e-sportsとして発展している『シャドウバース』が好きなプレイヤーからすると物足りないものだと思います。
 とはいえ、リリース後~一年間くらいまでの間のシャドウバースのカードデザインは非常にシンプルで、クラスごとの違いも楽しめてバランスが良く面白いゲームだったのは間違いありません(と私は思っています)。
 これをベースにすることで「昔遊んだ」プレイヤーに対してのハードルや新規のプレイヤーに対してのハードルを下げた上で、各キャラクターのオリジナル新規カードで新しい体験を大きくバランス崩壊させない範囲でさせているのがとても良いですね。
 「特徴的な切り札を持つプレイヤー」というのは単純にキャラ立ち的にも良いものです。 

 「詰めシャドバ」的な特定の条件下で敵を倒せ! という問題が数多く収録されているのも良いですね。
 ゲーム性の奥行きを感じさせてくれますし、普段使わないカードの習熟にも繋がります。
 何より「答えを見ないでやる」というプレイスタイルに対して、買い切り型のゲームというのは背中を押してくれます。
 これが本家(SP/PC版)で実装されたとしても、報酬目当てでカンニングして速攻クリアするだけになってあまり楽しい体験にならないのは目に見えます。

画像13

上級の問題は本当に難しいです。プレイ時間のうち結構な部分を詰めシャドバに持っていかれています。

■ストーリーについて

 キャラクターや設定はアニメ版を概ね踏襲しつつ「主人公」「シャドバ部の部長」「生徒会長」のオリジナルキャラ3人を中心として進行します。
「シャドバ部廃部を、大会で優勝して撤回させる」という目的に対してシャドバ部部長のカードゲームに対するスタンスであったり、生徒会長のジレンマだったり、部員の成長だったりが絡んでいくドラマという形です。

■モチーフやテーマについて

 文字通りのモチーフは当然スマホ版『シャドウバース』なわけですが、若干抽象的に捉えた場合、ストーリーの中で一貫して描いているのはTCGコミュニティについてのドラマであると言えます。

 このシャドバ部部長が、真剣にリアル知人とTCG(DCG)をやっていた人にはまぁまぁ身につまされる造形となっているのがformeポイント高いですね。

画像5

シャドバ部部長。公式的には一応ネタバレ扱いっぽいですが、ゲーム開始後すぐわかることなので配慮してません。すみません。

 カードゲーマーコミュニティ(対人ゲームであればカードゲームに限ったことではないと思いますが、デッキ構築という前段階があるせいで表面化しやすいですね)においては、いわゆる「ジョニー」「ティミー」「スパイク」的なスタンスの違いで分裂することはおそらくアルアルだと思います。

 ジョニー・ティミー・スパイクはざっくり「自己表現をしたい」「楽しみたい」「勝ちたい」という志向で仮想客を分類したもので、あくまで開発側が想定するものであって、客自信が自称するようなものではないと私個人は思っています。
 ただ『勝ちたい』という気持ちに対する温度差はどうしたって出てしまうものです。

画像6

画像7

画像8

 結果、こんなやりとりが現実で起きているコミュニティはきっとたくさんあります。
 いつ誰に、というようなことを抜きにすれば言ったことも言われたことも私はあります(今は少なくとも言うことはないですけど……)。

 「自称するようなものではない」と言った直後にアレですが、私自身は競技的な大会なんかにも積極的に参加したい(した時期もある)『勝ちたい』気持ちはしっかり持っているプレイヤーではありますが、戦略として客観的にわかるような最適解を必ずしも選ばないスタイルなので、ゴリゴリのスパイクの人から見たら勝ちに対して意欲的ではない「ティミー」「ジョニー」のように見えることでしょう。
 結果、苛立ち半分に「そんなカード入れて勝つ気あんの?」みたいなこと言われるわけですし、なまじ勝ってしまったりすると「初見殺しに負けた」「わからん殺しだった」「ローグには弱いんだよな~」「引き弱だったな~」「ズリィ」などと言い訳されたりすることがままあります(そんなことは言わない紳士的なスパイク的プレイヤーも多くいますが、回数や比率はともかくそういうのはすごく印象に残るものなのです)。


 逆に最適解を選んで大会に臨んでいるスパイク的プレイヤーから見たら「最適解を選ばず楽しく勝とうとしていて、しかも勝っている」プレイヤーというのは、多少なりともうざったいものなのだとは思います(本当に強い人はただのカモが来たくらいにしか思わないでしょうけど……)。

画像9

 まさに、こういう心境になることでしょう。「何もかけていないのに強いなんて」という。

 こういった、TCGプレイヤーあるあるな汚い部分をしっかり描きながらドラマにしている点がとても面白かったです。
 とは言っても「同じような経験のある人間」以外にはピンとこないアルアルみたいなものであまり面白くないことでしょう。このあたりもformeとしか言えない……でも好き……面白い……みたいなポイントです。

画像10

レギュラー(https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=89)

画像11

はなわ(http://www.kdashstage.jp/profile/archives/15)

 シャドバ部は主人公入部以前に、この部長に部活クラッシュされています。
 主人公入部後は部長も心を入れ替えて「使えねぇカード入れやがって」みたいな言葉を必死に飲み込んで「次戦うあいつのメタカードはこれだからこんなデッキ使えば勝てそうだよ」みたいなすごく健全なアドバイスをするキャラになります。
 それでもやっぱり、最終的には裏切って、見た目も変えて、主人公に対しては敵対して「勝つのが楽しいんだ!」という姿で出てきます。
 最終的に、主人公に負けた後はむしろそのスタンスを強固なものとする……。
 そんな感じで最後までなんだか見てて痛々しいキャラクターであまり救いはないのですが、そういった点も含めてとにかく「いそう」「いる」という感じの実在性がすごくて、カードゲーマーを描いたドラマとしてはむしろすごく私には刺さりました。forme!

画像12

エンディングに、部長の姿はない。

 こういった「コミュニティあるある」は、現在進行系でトラブル中だったりすると楽しむ余裕もなかったりするものかと思います。
 そういった意味でもやっぱり、現行ユーザー向けのタイトルではないなぁ、と思ったりしました。

■まとめ

 そんなわけで、個人的には本当にものすごく面白くて熱中して遊んだタイトルです。
 同じような境遇の方、あるいはSP版『シャドウバース』に手を出していないながら、買い切り型DCG(カードヒーローやカルドセプトやタッグフォースなんか)が好きな方なんかは手を出してみると結構ハマれるのかなと思います。体験版もあるのでリスクも低いですし。

 楽しかった! 自分に向けて作ってくれてありがとう!
 みたいな気持ちは今後も言語化して残していきたいところです。

お気持ちを形にして頂けることは大変光栄で、勿体ないながら大いに感謝いたします。いつもよりちょっとおいしい飲み物や食べ物を頂きますね。