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【前編】「復興の輪」の思いを込めて故郷・富岡町で理容室をオープン

2020年11月、福島県富岡町の国道6号線沿いに理容室がオープンします。オーナーは富岡町夜ノ森出身の草野倫仁さん(25歳)。ひょんなことからSNSで繋がり、プロフィールを拝見すると「福島県富岡町で理容室をOpen予定」の文字が。

富岡町は現在も一部地域が帰還困難区域に指定され、バリケードがはられています。そんな富岡町で理容室をオープンする決断をした草野さんにぜひお話をお聞きしたい! とさっそく連絡を取り、インタビューしました。

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高校の寮で友達の髪を切り始めたことがこの道のはじまり

—草野さんは理容師になられてどのくらいですか?

草野:18歳から働き始めたので、8年くらい経ちますね。

—いつ頃から理容師になりたいと思っていたんですか?

草野:目指した時期は遅かったですね。意識しだしたのは高校3年生くらいからです。学生時代はずっとサッカーをしていて、親にも「大学に行ってサッカー続けたら? 」と言われていました。

でも、怪我をしてしまって、高校最後の大きい大会に出場できなかったんです。そこからサッカーを楽しめなくなってしまって。

それまでも怪我が多かったので、大学に行って続けてもまた怪我してダメになるんじゃないかとか、高校よりさらにレベルも上がるし……とか考えて、自分で自分に限界をつくってしまったんですね。

そんな時に、中学の頃から治療で通っていた接骨院の方に「将来どうするの? 接骨師(※柔道整復師)になれというわけじゃないけど、やっぱり手に職をつけるというのはいいよ。」とアドバイスされて。

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(サッカーに打ち込んだ高校時代 写真提供:草野倫仁さん)


—そこから理容師を目指し始めた?

草野:そうですね。それもあるんですけど、実は震災の影響で高校(※福島県立富岡高等学校)が福島市に移って、寮生活になったんですね。親から仕送りをもらって生活していたんですが、高校生なのでそんなに多くはもらえないじゃないですか。

もちろんそれは僕だけじゃなくて、周りの同級生もみんなそうで。でも遊ぶお金は欲しいから、「自分たちで髪切っちゃえばいいんじゃね?」って、お互いの髪を切って散髪代を浮かせてたんですよ。高校生なりのひとつの知恵ですよね(笑)。

僕が友達の髪を切る担当になることが多くて、素人なりにYouTubeを参考にしながら、見よう見まねで切ってて。それがなんか楽しかったんですよね。

—お友達から評判が良かった?

草野:「わりといい感じじゃん!」とか言われてました(笑)。これが本当にいいのか自分ではよくわからなかったですけど(笑)。

—そこから本格的に理容師になる道を考え始めたんですね。

草野:そうですね。先ほどの接骨師さんの話に戻りますけど、その方はもともと楢葉で開業されていたんですね。震災で避難していわきに移ってからも仕事を続けられていて「手に職があったから違う場所でもやっていけた」と言っていて。

その話を聞いて、僕もすごく納得したというか。何もできない自分だったら、震災のようなことがあったときに仕事を無くしてダメになってしまうんじゃないかって。

それと、スーツ着て仕事する自分を想像できなかったんですよね。もっとラフに仕事したいなぁって。理容師や美容師って髪も服も自由じゃないですか。そういう部分で縛られることもないし、いいかもなって、そのときは思ってました。

実際に働くと、理想と現実は違うんですけどね。でも、この仕事はやってて飽きない。お客さんは一人ひとり個性も髪も違うじゃないですか。その人に合わせて自分なりに考えて髪を切っていくというのが自分には合っていると思います。

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働きながら専門学校に通い理容師免許を取得

—高校卒業後に専門学校に?

草野:働きながら通信で資格を取るという方法もあったんですけど、それだと資格を取るのに3年半くらいかかっちゃうんですよ。通信だと働きながら勉強するから技術を覚えるのが早いという人もいたんですけど、でも結局資格がないうちはカットできないじゃないですか。

それで高校の先生に「働きながら通信か、学校に通うかで迷ってる」と相談したら、全日制だけどお店で働きながら通える学校を探してくれて。

—じゃあ学校に通いながら働いていたんですね。

草野:9時〜16時くらいまで学校に通って、そこからお店に出勤していたので働く時間は平日で3〜4時間くらいでしたけど。土日はフルで働いていました。

—休みなしで!

草野:そうですね。だからその時が一番きつかったですね(笑)。平日働く時間が短い分、月に1日くらいしかお店の休みをもらえなかったので。

でも、そのかわり2年間アシスタントとして働けば、資格取得と同時にカットに入れると分かっていたので頑張れましたね。

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(草野さん愛用の仕事道具)


自分で決めた道を途中で投げ出すのはダサい

—くじけそうになったりしませんでした? 辞めたいと思ったこととか。

草野:ありましたね!(笑)。お店に就職せず、学生だけにしておけばよかったなとか(笑)。

—どうして続けられたんだと思います?

草野:結局は自分で選んだ道なので、途中で辞めるってダサいなと思って。正直美容の業界って離職率高いんですよね。アシスタント期間が長いとか、給料が安いとか、理由はいろいろあるんですけど。かけた時間と給料が比例しないことが多いので。

それでも、やってて楽しいし、仕事している時間は苦じゃなかったんですよね。確かに初めの頃は大変だし辞めたいなと思ったこともあったんですけど、技術を覚えていくとできることがすごく増えるので、やっていくうちに楽しくなって。自分でできることが増えるって楽しいじゃないですか。

それに、誰かに言われて進んだ道ではないので。自分がやりたいと思って選んだ道だから、途中で辞めると応援してくれてる親にも迷惑かけちゃうし。福島を出て埼玉で就職して、資格もとってるのに途中で投げ出せないなと思って。

—ご両親に理容師になりたいと伝えたとき、どんな反応だったんですか?

草野:反対されることはありませんでしたね。「自分がやりたいって思うんだったら頑張ってみたら?」って。

—それは嬉しい言葉ですね。

草野:そうですね。もしかしたらあまり良くは思われないかもしれないと少し不安だったので、「頑張りなよ」って言ってくれる親で本当によかったです。

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(関東で働いていた頃 写真:草野倫仁さん提供)

後編に続く。
後編では、故郷・富岡町にお店をオープンすることになった経緯や思いをお聞きします。

撮影:白圡亮次
撮影場所協力
Guest House & Lounge FARO iwaki
〒970-8026
福島県いわき市平三町目8-2 やまとビル
TEL:0246-25-7188
URL:https://faro-iwaki.jp/



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