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ヤマタノオロチの謎?

九條です。

皆さま。日本神話に登場する「ヤマタノオロチ」という怪物ご存知でしょうか?

漢字で書くと「八岐やまたの大蛇おろち」などとなります(『日本書紀』)。この字を見ていただくとお分かりのように「オロチ」とは「大蛇」の事です。

さて、このヤマタノオロチはどのような大蛇かと申しますと『古事記』の伝承では…

【原文】
爾問其形如何   答白   彼目如赤加賀智而  身一有八頭八尾  亦其身生蘿及檜榲  其長度谿八谷峽八尾而…

(『古事記』より)

【読み下し】
その形いかにと問ひ答えてもうさく。彼の目は赤かがちの如くにしてしかるに身一に八の頭、八の尾あり。またその身に蘿(こけ)及び檜榲(ひすぎ)生(お)ひ、長かるは谷は八谷に峽は八尾に度(わた)りて…

【意味】
そのヤマタノオロチというのはどういう形をしているのですかと(スサノオノミコトが)お尋ねになったので(クシナダヒメが)答えたところ、その目は鬼灯(ほおずき)のように真っ赤で身一つに頭が八つ、尾が八つあります。またその身体には苔や檜や杉の類が生えていて、その長さは谷を八つ峰を八つ越えるほどもあり…

とあります。すなわちヤマタノオロチは出雲に棲息している大蛇の怪物で、

○目はほおずきのような形
○胴体は1つ
○頭が八つある
○尾も八つある
○体の表面にはコケや檜や杉が生えている
○大きさは谷を八つ峰を八つも越えるほど大きい

などとされています。

ヤマタノオロチのイメージ

神話ではその後、このヤマタノオロチはスサノオノミコト(須佐之男命)によって退治され、その尻尾の中から「草薙剣くさなぎのつるぎ」が取り出されます。

この「草薙剣くさなぎのつるぎ」は後に「天叢雲剣あめのむらくものつるぎ」と呼ばれて、古代王権の権威の象徴である「三種神器さんしゅのじんぎ」のひとつとされるようになります。

【豆知識】
剣と刀
皆さまご存知の事かと思いますが…

つるぎ
身の両側に刃がついている。
「突き刺す」ときに威力を発揮する。

かたな
身の片側に刃がついている。
「斬る」ときに威力を発揮する。

※我が国の古代においては剣も刀(大刀たち太刀たち)もありますが、どちらかというと刀よりも剣のほうが権威的で、剣は権威・権力(支配)の象徴とされる傾向があります。

さて、この「ヤマタノオロチ」なのですが…
皆さま、

あれぇ?
おやぁ?

よぉ〜く考えてみてください。

(1)頭(首)が8つということは…その間の又の部分は7つ。

(2)尾が8つということは…その間の又の部分も7つ。

ということで「又は7つ」ですよね。ですからその姿は、ほんとうは「ナナマタノオロチ」となるはず。不思議ですねぇ…。

もしかしたら、頭が8つということで「八頭大蛇」すなわち「八頭の大蛇(ヤアタマ ノ オロチ)」が「ヤマタノオロチ」となったのでしょうか?

面白いですねぇ。^_^

【おもな参考資料】
○倉野憲司『古事記』岩波文庫 1963年
○三宅和朗「八岐大蛇神話成立に関する一試考」慶應義塾大学 1981年
○松田葵「産鉄伝承としての龍 : 九頭竜とヤマタノオロチ」清泉女子大学 2018年
○平藤喜久子「八つの頭と尾を持つ大蛇ーヤマタノオロチ」國學院大學 2020年

©2022 九條正博(Masahiro Kujoh)
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