夏1 本当に戻りたい夏

本当に戻りたい夏とはどんな夏だろう。

少なくともiPhoneはいらない。MacBookもいらない。GoogleマップもLINEもいらなければ、クーラーのきいたオフィスは不要だし、Netflixに甘やかされる必要もない。絶対ない。

本当に戻りたい夏とは、自分の足で道を走り抜けて、自転車があれば何処へでも行ける気がして、畳で戯れあって、小学生が将来の夢を話す時のような素直さを取り戻した夏かもしれない。

汗ばむ肌とか、飛び込んだ海とか、泣きそうになった縁側とか、太陽に照らされる水の輝きとか、帰り道の暗闇と静けさとか、思わず道路に寝て眺めた星空とか、堤防に立って見た海の青とか緩い風とか、そういうのをすごく、思い出す。

一回性の夏。どうしてこんなに懐かしいのかわからない。どうしてあんなに愛しかったのかも忘れた。でも忘れたことは全然忘れられない。一生忘れないと思うし、忘れたくないとも思う。


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