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【読書感想】「HSPブームの功罪を問う」言葉との付き合い方

●名前をつける、言葉を使う

前回、5月病をテーマにした記事では、自己理解を深めるために自分の状態に「名前をつける」ことについて書きました。

私たちは人やもの、ある出来事に対して、名前をつけることで理解しようとします。
また、自分が感じていることを他の人に伝えたり、自分で考えるために言葉にしようとします。

言葉は非常に便利なツールです。

しかし、使い方次第では反対の結果をもたらすこともあります。
そんな「言葉との付き合い方」について、『HSPブームの功罪を問う』と、いう本がヒントになりそうだと思い、今回、取り上げることにしました。

●HSPブームの「功」と「罪」

「HSP」は、ご存知の方も多いと思いますが、「Highly Sensitive Person」の略称で、医学的な診断名ではなく心理学者が提唱した概念です。筆者は、「とても感受性の高い人」と説明しています。

「HSP」について特筆すべきこととして、筆者は感覚が過敏であることを捉え直した点をあげ、人より感覚が過敏で疲れるなどの生きづらさを感じている方にとっては、そんな自分に「HSP」という説明がつくことによって
「自分の状態を言葉に出来て、スッキリ」すると述べています。
これは、言葉のポジティブな側面だと言えます。

一方で、「HSP」は医学用語ではなく明確な基準がないため、都合よく解釈されてビジネスに悪用されているという、「ブーム」に対する批判がされていました。
また、「HSP」という言葉を使って自分や他人を理解したつもりでいると、かえって自己理解や他者理解を狭めてしまうと指摘しています。
「HSP」と名付けることが、目に見えない生きづらさを言語化してくれる反面、その定義や基準が曖昧なために「説明した気になれる」言葉としても機能してしまっているのです。

●言葉は世界をすくいとる入れ物

同じようなことは他にも言えそうです。

例えば、「自分は、人よりも時間に厳しいところが、A型っぽいなぁ」と思ったとします。

科学的根拠に関わらず、本人が「A型」というラベルを貼ることで、「私は人よりも時間や待ち合わせに厳しい性格だ」と認識できるのであれば、それはそれで人間関係を円滑にできそうです。
これは、言葉を有効に活用しているといえます。

しかし、「対人関係が苦手なのはA型だから」「仕事がツラいのもA型だから」と様々な自分の側面を1つの言葉に無理やり押し込んでしまうのは、自分を理解できているとは言えないかもしれません。

私が、本書から受け取った「言葉」との付き合い方のメッセージは、

人間って多面的だから、1個のラベル(言葉)だけじゃなくて、もっと色々な自分の面を見て下さいね

と、いうことのように感じました。

●貼ったラベルを剥がしてみる

言葉との付き合い方の見直し方として、貼った言葉のラベルを再度剥がしてみる手法が役に立つかと思います。
以下2点を意識すると、やりやすいかもしれません。

①定義を明確にする
②他の言葉を使って、説明してみる

上記の、血液型の例でいえば

①「A型」っぽい性格、って言葉を使っているけど、自分は普段どういう
 意味で使っているかな?
 →時間に厳しい、対人関係が苦手、仕事がキツいetc…
 棚卸ししてみると、意外と曖昧だったり、広い意味で使っていることに
 気づくかもしれません。

②「A型で、対人関係が辛い」って、具体的にどんな場面で、何を、
 感じたんだっけ?
 →上司にミスを指摘されて、自分はダメだと思った。
 「A型」とは関係がなかったり、苦手と感じることがごく一部で、
 実際は他に上手くいっている場合に気づくかもしれません。

と、一つひとつ自分に問いかけていくことで、自己理解がより一層深まっていくかもしれません。

言葉のラベルをつけたり、剥がしたり、自分の多様性・多面性について誰かと探してみたい時は、カウンセリングがお役に立てるかと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
メザニンカウンセラー:SATOMI
編集:メザニン広報室

<引用>
表紙は下記の版元ドットコム様よりお借りしました。


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