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#4 「こうなりたい」に向き合い、付き合っていく:平井 綾乃(臨床心理士)

メザニンのカウンセラーに広報室スタッフがインタビューをする本企画。
第4回は臨床心理士の平井 綾乃カウンセラーです。力を入れているという不妊治療にまつわる心の支援や、心の内面に着目する心理療法の関わり方についてお伺いしました。

ー まずは平井さんと心理の出会いやきっかけを教えてください。

小さな頃から些細なことで悩みやすい性格だったんですけれど、私以外の家族はすごく楽観的な人たちで、なかなか話を聞いてもらえませんでした。それが出発点だったと思います。

悩み事を一人で抱えるしかない、そんな人たちの役に立ちたいと思うようになったことがきっかけでした。

高校生の時の自分の悩みが一番深かったんですよね。

いま思えば大したことない悩みかもしれないですけれど、「自分は平凡だな」という悩みがずっとあったんです。
何をやっても「凄いね」と言ってもらえるところまで行けない。

中学生の頃は英語と、書道と、お絵描きが割と好きだったんですけれど、高校に進学したら3つ全部自分よりも遥かに上手い人がいました。
高校入学当初、私は勉強ができる方でも無かったので、「私って将来、役に立つ人になれるのだろうか」と思うようになりました。

心理学的に言うと、アイデンティティの確立の問題ですね。
自分は何者なのだろうか、とグラグラ揺らいでいました。


ー 臨床心理士として活躍されているところは決して平凡ではない気がしますが……。どういった経緯で心理士になられたのでしょうか。

最初は学校の先生になろうとしたんです。
同じような悩みを抱いている高校生の力になりたいと思っていました。
なので教育系の大学に入ったんですけれど、心理学の授業も興味深くて。

学校の先生よりもスクールカウンセラーに興味が傾いていき、大学を卒業した後1年間浪人して心理学の大学院に進みました。

途中から心理学を学び始めた形でしたけれど、高校生の心理を中心に研究したいと思っていたので、大学院では高校生の「学校適応感」をテーマにしました。
自分がどれくらい学校に対して適応できていて、居場所だと感じているのかを母校の高校にアンケートを取らせてもらいました。

その結果、「褒めてもらいたい」とか、「集団の役に立ちたい」と思っている子は学校を居場所だと思いやすく、反対に「誰にも否定されたくない」という気持ちが強いと、なかなか学校を居場所とは感じにくいようです。

仮説通りの結果が得られた反面、考えれば考えるほど研究の余地のある深いテーマだと感じました。


ー いま現在は、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

心療内科のクリニックと、個人的にも開業してカウンセリングを承っています。
最近は企業の依頼を受けて、社員の心理支援にも携わらせていただき、ありがたいことに色々な分野で心理業務に従事させていただいています。

クリニックでは若い方だと高校生から、年上の方だと60代くらいまで、幅広い方が来られます。

病態もさまざまです。
眠れない状態が長く続いていたり、慢性の統合失調症だったり、あとは休職された方の復職支援もしています。

個人では、不妊治療のお悩みを抱えた女性の心理相談を承っています。
もちろん産婦人科さんで治療に関して相談できるのですが、改めてご自身のお気持ちをゆっくり整理したいという方も多いので、そのお手伝いをさせていただいております。

不妊治療を始めると、いのちに対する価値観を何度も考えさせられるだけでなく、治療段階ごとに治療や検査をするかしないかの選択を迫られるという特殊な状況下にも置かれます。

身体面だけでなく心理的にも負荷がかかりやすいので、その心理面でのサポートですとか、パートナーやご家族とどのようにコミュニケーションを取りながら進めるか、あるいは進めないかなどをご相談いただけます。

近年は男性不妊という言葉も徐々に一般に認知されるようになったので、男性不妊のお悩みの相談も承っています。

もちろん、その他の悩みにまつわるカウンセリングも対応しています。


ー 平井さんはどのような心理療法を学び、得意とされているのでしょうか。

私は、精神分析を参考にした関わりが比較的得意です。
一言で言うと、心の内面をじっくり掘り下げたり、心と向き合うようなアプローチです。

心の奥底には、「実はこうしたい」あるいは「実はこうしたくなかった」といった思いが存在します。

内面を掘り下げていく過程は、少し時間がかかりますが、その分、本来の思いに寄り添うことができます。
最終的には、その方が納得してご自身のことを決める、私はそのサポートをすることに関心をもって対応しています。

もちろん、目に見えている現実的な問題に対しては、適宜アドバイスや助言も行います。
例えば、極度に疲弊状態の社会人のクライエントさんがいらしたときは、まず先に休養をとることをすすめますし、その方の状態や緊急度合いに合わせて対応を変えています。


ー 平井さんは今後、どのような心理士になっていきたいと考えていらっしゃいますか?

自分がカウンセリングの参考にしている精神分析の理論は、かなり理解が難しい学問です。なので、もっと深く学んで日々のカウンセリングに還元できるようになりたいと思っています。

それから、常に自分が自分には足りないところがあると自覚して研鑽を積む。そういったところでしょうか。

ー 真面目ですね。

ですよね。つまんないって周りの人からも言われます。
そう、結局平凡なわたし。でも、もういいんです(笑)。

平井 綾乃
臨床心理士・公認心理師・キャリアコンサルタント。
大学院修了後、医療・教育・産業領域をメインに臨床心理士として業務にあたる。カウンセリングでは精神分析を参考にした心の内面に寄り添うかかわりが特徴。
近年は面接室内での業務の他に、企業や大学にて心理学や対人援助にかかわる研修・コンサルテーションなども行う。

インタビュー、文:メザニン広報室


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