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「いちねん」 谷川俊太郎

「いちねん」
いちがつ いらいら
にがつは にくい
さんがつ さびしい
しがつ しらけて
ごがつ ごりおし
ろくがつ ろくろく
しちがつ しかられ
はちがつ はったり
くがつ くるって
じゅうがつ じがでて
じゅういちがつには じれじれじれて
じゅうにがつ じきにしんねんおめでとう 
(p.221-222)

はったりの8月が始まった。

昔は、はったりをかましているような男性が魅力的にうつった。

とにかくビッグマウスで、「もし自分が○○したら‥‥」と他者の批判をして、自分ならもっとうまくやるとひたすら語り続けるひと。
「○年前、―――で―――を達成したって、話したっけ」何度も聞いた武勇伝をさも楽しそうに語るひと。
他の人に聞くと大した話でもないことを、盛って盛って、自分がいかに貢献したかをアピールしてくるひと‥‥。

いま文字にしようとすると悪口のようにしか書けないが、当時はどの男性も魅力的にうつった。
向上心があって、頼りがいがある!
自分を持っていて、人生を謳歌している!
何でもできる人なんだろうなぁ‥‥!
なんて、目をキラキラさせて、話を聞いていた。

でも、いまは違う。
単純に、年をとったからだと思う。
成功者は、もうすでに何かしらで評価されているのだ。
30歳を過ぎたあたりから、検索するとその人の実績とともにヒットする男性が多くなってきた。
検索してヒットするか否かは職業等によるので、それだけではなんとも言えないが。

初めて出会った人の名前を検索するくせがついたのは、いつからだろう。
私の見る目の無さのあらわれだろうか。

「今年の目標を10個つくった」
なんて言っておきながら、1つも達成できなかった人もいたなぁ。。

まぁ‥‥
じきにしんねんおめでとう。

とりあえず、お酒でも飲んで、生きていきましょう。
どんな人格でも応援するわ。
でもゆるしてね、かげながらの応援でも。

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「いちねん」 谷川俊太郎 『朝のかたち 谷川俊太郎詩集Ⅱ』(角川文庫、1985)より

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