ーもうひとつの かた想いー #詩のようなもの
シチリアで 川魚をすなどる 少年たちが
南風にさらわれ 海をわたったという
とおいとおい東方の都からきた 黒髪の商人のおさは
耳元でささやく 楼蘭へ と
黄金の熱いあついタクラマカンを うねうねと渡り
緑にさわさわと風がそよぐ 楼蘭をたずねるように
とおくとおくの 崑崙の山やまを巡る星たちを追い
槎を漕ぎつづけようとするように
渇いたそらに 雲鳥はなく
振り返っても 草木はみえるはずもない
ともに旅だった 同胞たちは もうまみえることもない
たどりつくさきは 灼けたダイム硬貨だけ
でも ふるさとで釣った魚鱗の輝きが
ひたすらなつかしい わけでもない
乙女の横顔ばかりに とまどって
ひたすら佇んだのは ほんのさっきのこと
あの沈黙に
聾者のしゃべり
ひたすら ダイムの女神をすがめみる
ききょう おみなえし せんにん草 つゆ草 ゆう顔
花の名は 指おるばかり
夏をすぎ 冬をこえ
つぎの夏を 待ちわびながら
花占いの野アザミをかざし
さあ 弔え!
シチリアの少年たちを