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悪趣味な ~ショートショート~


「ねえ。あたしといて、シアワセ?」


カレは答える。
「幸せだよ」
真っ直ぐに、あたしの目を見て。
カレはいつも素直に、率直に、あたしに答えをくれる。


微笑みかけて、唇を合わせる。
その勢いのまま身体を重ねる。
カレとのそれは、いつも最高に甘くて、あたしは何度も悦びに啼く。
そしてお互い満足して、脚を絡めて眠る。いつものルーティン。



眠りに落ちたカレの傍からそっと抜け出す。


「さようなら」
と、声に出せないまま。


終電はもうない。
タクシーを拾って、その中でひっそりと泣いた。

後悔はしない。
あたしは、あたしと一緒にいてシアワセなオトコに興味はない。
ただ、あの身体のぬくもりをなくしたことは、素直に悲しかった。


家に着く。玄関の扉を開ける。
目を刺すのは、リビングの明かり。


「おかえり。どこ行ってたの」
彼は少し不安げに、寂しげに、そう問う。


「ただいま。あたしもう寝るね」


彼の目線がじっとりとあたしを追いかけるのを感じる。



これが、あたしのシアワセ。


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別サイトで投稿していたものを加筆修正しました。


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