ピカソは普通に絵を描いても上手い
カメラを初めて買うときは、レンズ付きのものを買う。当然だ。カメラ本体だけを買ってもレンズがなければしょうがない。写らない。(レンズ付きのコンパクトカメラのようなものは除く)
私はキャノンのEOS5 QDと一緒に28~105mmのレンズを購入した。
最初はズームレンズがいいと思う。単純に楽しいし、寄ったり引いたりすることで画角とは何かを学べる。
ある程度ズームレンズをつけて撮ることに慣れてくると、2本目のレンズが欲しくなってくる。
2本目にどのレンズを買うか。これは何を撮りたいか、個人の嗜好によって分かれるところ。
単焦点レンズ
私は単焦点のレンズを購入した。ただし、50mm、35mm、24mmのどれを最初に買ったかは覚えていない。(この3本はいずれ所有することになる)
永遠の命題である、50mm(標準レンズ)と35mm(準広角レンズ)、どちらが、基準となるべき、実際レベルでの標準レンズなのか?
まっその論争はいずれやるとして、今回は50mmと35mm(40mmレンズでもOK)そのどちらでもいいから、単焦点レンズを使おうぜって話。
写真を始めたばかりの頃は、広角や超広角でぐわーっと寄って撮ったり、あえて斜めにして撮ったりしたいもの。あるいは色を派手にビビッドにしてみたり、コントラストを必要以上に上げてみたりとか。いわゆるインスタ映えというようなもの。
俺ってセンスあるわー
かくいう私もそうだった。敢えて斜めにして下から煽って撮ってみたり、粒子を荒らしたり露出オーバーにしてみたりして、「俺ってセンスあるわー」と悦に入っていたものだ。その頃の写真を見ると大概が恥ずかしいものばかりだ。
自己顕示欲が出すぎていて正直きつい。あるいは承認欲求、いまでいうところの「いいね!」が欲しい感がつらい(笑)
私の場合は写真だが、映画などを撮っている人の、学生の頃に作ったような初期の作品を見ても、概ね似たような感じに仕上がっていることが多いので、そういう意味では誰しもが一度は通る、通過儀礼のようなものなのかもしれないが...
しかし、ずっと撮り続けていると、むしろ余分なものを省いたまっすぐな写真を好むようになっていく。シンプルで強い写真。一見誰にでも撮れそうなんだけど、そうでもない写真。実は一番難しい。
そういう写真を撮れるようになるには、標準の単焦点レンズを使うべきである。
画角が平凡であるがゆえに、広角レンズのように、レンズが勝手に遊んでくれない。案外焦点距離も中途半端だから、自分から動かなければならない。その結果、自分の目で見て、自分で動くという、撮影行為において当たり前のことが身につく。
標準レンズで良い写真が撮れるようになれば、広角レンズはもちろん、望遠レンズでも上手く撮れる。
千利休の茶室
例えるなら、古典落語を習得しているから新作落語が創作できるように。
ピカソが普通に絵を描いても上手なように。
土台となるベースがしっかりしていれば、崩すことはできる。
目指すは限界まで無駄を省きつつも趣のある、千利休の二畳の茶室のような写真。
でも、それじゃあwebやSNSで写真を見せるのが当たり前となった昨今、「いいね!」は付きづらいけどね(笑)
でも、良い写真てそういうもの。
頂いたご支援は取材費に充てさせていただきます。その体験を写真や文章を通じ、みなさまにフィードバックできたらなと考えます。