【謎】恐竜を絶滅させた隕石はどこから来た?暗黒物質が絡む、リサ・ランドールの驚愕の仮説:『ダークマターと恐竜絶滅』
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恐竜を絶滅させた隕石は、一体どこからやってきたのか?
本書はタイトルの通り、「恐竜絶滅」と「ダークマター」に関する仮説の話だ。「ダークマター」については後で触れるが、「まだ存在するかどうか分かっていない未知の物質」ぐらいに今は理解しておいてほしい。そんな物質と「恐竜絶滅」を結びつけるというのだから、なかなかアクロバティックな話だ。
著者のリサ・ランドールは、基本的には「恐竜絶滅」とはまったく関係がない。第一線で活躍する素粒子物理学者であり、デビュー作である『ワープする宇宙』は、20世紀物理学を概説しながら宇宙に関するある仮説を提示するという野心的な作品だった。
そして本書では一転、宇宙の話と恐竜の絶滅を結びつける。本書では、著者らが「ダブルディスク・ダークマター(DDDM)理論」と名付けた理論が提示され、これが「恐竜絶滅」と関係しているのではないか、と示唆される。物理学の話だけではなく、古生物学に関する知見もふんだんに盛り込まれており、相変わらず知的好奇心が刺激される作品だ。
しかしなかなか難しい作品で、ついていけない箇所も多々あった。この記事では、あくまでも私が理解できた範囲内のことにしか触れられないのでご容赦いただきたい。
「隕石によって恐竜が絶滅した」と認められたのはごく最近のこと
本書を読んで最も驚いたのが、以下の記述だ。
恐竜を含めた多数の生物が絶滅した出来事には「K-Pg絶滅」という名前が付けられているのだが、要するに「恐竜が隕石によって絶滅したと確定した」と言っているわけだ。そしてそれが確定したのが2010年3月だったことに驚かされた。ついこの間じゃないか、と感じたのだ。
子どもの頃から、「恐竜は隕石の衝突で絶滅した」と理解していたと思う。図鑑などには、必ずそう書かれていたはずだ。しかし学問的にはあくまでそれは仮説に過ぎず、2010年にようやく、科学の統一見解として「恐竜は隕石で絶滅した」と確定したということなのだ。この点にはまず驚かされた。
さらに本書には、こんな記述もある。
私は1983年生まれだが、私が生まれた頃でさえまだ、「恐竜が隕石によって絶滅したと考えるのはおかしいんじゃない?」という考えが科学者の間では支配的だった、ということだ。一般的には非常に有名で馴染みのある見解だと思うが、科学的には長いこと疑問符の付く考え方だった、と知ることができた。
そもそも科学において、「隕石」という存在がなかなか厄介なものだったらしい。写真や映像などが存在せず、機械による科学分析もまだまだ難しかった時代には、「空から何か落ちてきた」という一般民衆の証言のみが頼りだったからだ。本書には、「隕石」の捉えられ方についてもこんな風に書かれている。
科学の歴史は、その時代その時代における「常識」との闘いなのだが、「宇宙から石が飛んでくるはずがない」という考え方もまた、覆されるまでに時間が掛かった、ということだ。
「ダークマター」とは何か?
本書のもう一つの主役が「ダークマター」だが、一体これはなんだろうか?
これは、「目には見えない(ダーク)だが、存在すると仮定しないと説明がつかない物質(マター)」のことである。
ダークマターは、こんな風に”発見”された(この”発見”は”存在を仮定するに至った”という意味)。
科学者はある時、奇妙なことに気づいた。銀河の周縁部に存在している天体は、なぜ銀河から振り落とされないのだろうかという疑問を抱いたのだ。
例えばこんな想像をしてみてほしい。あなたはクルクル回る円盤の上に乗っている。円盤が回転すると、フィギュアスケーターのようにその場で回転し続けるのだ。さてその円盤の上にボウリングの球を抱えた状態で乗り、円盤を回転させよう。ボウリングを持ったあなた自身もクルクル回ることになる。
さてこの状態で、ボウリングの球を持った腕を少しずつ前に伸ばそう。ボウリングの球が身体からさほど離れていない時であれば、腕に掛かる力はそう大きくないが、腕をピンと伸ばし、自分の身体から遠く離れた場合にある時には、自分の腕にもの凄く大きな力が掛かることがイメージできるだろうか? 回転スピードが早くなればなるほど腕に掛かる力は大きくなり、ついには支えきれずにボウリングの球を離してしまうかもしれない。
銀河も実はこれと同じ状態にある。銀河の中心に近い天体はさほど大きな力を受けないのだが、銀河の周縁部に存在する天体はもの凄く大きな力を受ける。科学者の計算によると、銀河の周縁部にある天体は、あまりに大きな力を受けるため、普通に考えれば銀河に留まっていられずに飛び出してしまうはずという。
しかし実際にはそうならず、銀河の周縁部にある天体は銀河内に留まっている。不思議だ。どうしてそんなことが可能なのだろうか?
そこで科学者が考えたのが、目には見えない「ダークマター」である。
ここでもう一度、先程の回転する円盤の例に戻ろう。ここで、この円盤に乗るのがお相撲さんだとしよう(この例では、体重が重い=ボウリングの球を支える力が強い、とする)。普通の人では支えられない回転速度であっても、お相撲さんなら耐えられるかもしれない。
銀河についてもこれと同じように考えることができる。「計算上、銀河を飛び出してしまう」というのは、「目に見える物質(の質量)」だけのことを考えている。もし、我々の目には見えない(つまり、光と相互作用しない)物質が存在していれば、計算が変わるのだ。
目に見える物質だけでは「ヒョロヒョロの男がボウリングの球を支えている」ようにしか考えられないが、実は「透明人間のお相撲さんも一緒にボウリングの球を支えている」とするなら理屈は合う。
そのような理由から、「宇宙には『透明人間のお相撲さん(ダークマター)』が存在するはずだ」と考えられるようになったのである。
さて先程、「ダークマターは光とは相互作用しない」と書いた。これは、我々の目には見えないということだ。さらに、仮に私たちの近くにダークマターが存在していても触れられないという。我々凡人には、どんなものか想像もつかない。
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