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【衝撃】映画『JFK/新証言』(オリヴァー・ストーン)が描く、ケネディ暗殺の”知られざる陰謀”

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映画『JFK/新証言』はメチャクチャ面白かった!「ケネディ暗殺」を多方面から検証し、「アメリカ」という国家の闇を炙り出していく

凄まじく面白い作品だった。もちろん、人が亡くなった事件を題材にしたドキュメンタリーなので、「面白かった」という感想は不謹慎かもしれない。ただ正直なところ、かなりワクワクさせられてしまった。本作を観るだけで、「ケネディ暗殺」と「アメリカ国家」についてかなり理解が深まるのではないかと思う。実に興味深い作品だった。

本作の調査のベースとなる「資料」は一体どこから出てきたのか?

本作『JFK/新証言』はとにかく、「徹頭徹尾、証拠を基にして議論が展開される」という点が素晴らしかった。基本的には全編を通じて、「証拠から仮説を導き出す」というやり方を取っているのだ。確かに、映画の最後に描かれる「ケネディ大統領はなぜ暗殺されたのか?」という推測だけはやはり、「そこにはこのような陰謀があった」という仮説ありきの展開に感じられた。しかし、この点こそ「本作で監督が描きたかったこと」だと思うのでまあ仕方ない。そしてそれ以外の個別の話題については、「存在する証拠から、何が起こったのか仮説を組み立てていく」というスタイルになっているのである。まずこの点がとにかく素晴らしかった。

というわけでまずは、1つ疑問を潰すところから始めよう。「その『証拠』はどこから出てきたのか?」についてである。

ケネディ暗殺は1963年に起こった。そして本作『JFK/新証言』が本国アメリカで公開されたのが恐らく2021年である。およそ60年前の出来事だ。ケネディ暗殺に関してはこれまでにも様々な形で調査が行われてきたし、「新証拠などあるはずがない」と考えるのが自然だと思う。しかし本作を観ると、そうではないことが理解できるだろう。様々な事情から「新たな証拠」が大量に公開されたからである。というわけで、その辺りの事情から説明していこうと思う。

そしてその話をするにはまず、「『ケネディ暗殺』に関する公式の調査がどのように行われてきたのか?」に触れておく必要がある。

暗殺直後、「ウォーレン委員会」という名の調査委員会が作られた。最高裁長官や上院・下院議員、元CIA長官などが集まった組織である。彼らは様々な証拠を調べ検討し、最終的に全26巻にも及ぶ膨大な調査報告書を提出した。その際の結論が、一般的によく知られているだろう「オズワルドによる単独犯」である。オズワルドは事件直後に拘束された後、郡刑務所への移送のため車に乗り込む直前に銃撃され死亡した。一般的にはこの、「オズワルドが単独でケネディ暗殺を実行した」という仮説が広く知られているはずだ。

さて、ウォーレン委員会が結論を出したものの、すぐにこの「ウォーレン報告書」に対する次々と様々に浮かんできたのである。そのためそれ以降も、「チャーチ委員会」や「下院暗殺問題調査特別委員会」など様々な調査委員会が立ち上がり、ウォーレン報告書の再検討が行われていった。ただ、理由は定かではないものの、アメリカはある時点で「50万にも及ぶ全資料を、2029年まで非公開とする」という決定を下したのである。私からすると、この時点で「何か怪しい」と感じたのだが、いかがだろうか? 「資料を非公開にする」ことの必然性が、私にはまったく理解できなかった。

しかし実は、話はここから面白くなっていく。本作『JFK/新証言』の監督オリバー・ストーンは、1991年に『JFK』という映画を撮っている。ドキュメンタリー映画ではないのだが、「ケネディ暗殺」を題材にした作品であり、アカデミー賞で2部門受賞を果たすなど大いに評価された。そしてこの映画をきっかけに、アメリカでは再び「ケネディ暗殺」が脚光を浴びることになったのだ。

そして、タイミングを考えても明らかに映画『JFK』の影響だろう、1992年にアメリカ議会は「JFK大統領暗殺記録収集法」を可決した。そしてこの法律によって、「2029年まで非公開」と決まっていた資料の解除が決定したのである。さらに「暗殺記録審査委員会(ARRB)」の設置も決まり、多額の予算と4年間という期間が与えられた。ARRBは、「ケネディ暗殺事件に関する様々な資料の収集と公開を行う組織」である。そして彼らは、集めたすべての資料を国立公文書館に寄贈した。これによって、一般人でも「ケネディ暗殺に関する資料」のほとんどを閲覧できるようになったのである。

つまり、本作『JFK/新証言』における調査のベースとなるのがこれらの資料、つまり、「長年非公開だったもの」と「ARRBが新たに収集したもの」というわけだ。このような背景を知ると、「新たな調査によって、今まで知られていなかった事実が明らかになるかもしれない」と期待できるのではないかと思う。さらに本作では、資料に書かれていることを補強する証人も登場する。そしてその多くが、「本人から直接聞いた」と証言しているのである。これによって、信憑性はさらに高まっていると言えると思う。

試料に関して本作では、次のようなエピソードが紹介されている。ARRBはあるタイミングで、アメリカ国内のあらゆる機関に「ケネディ暗殺に関する資料をすべて提出した」という宣誓書を提出させたのだが、「大統領警護隊」だけが宣誓を拒否したというのである。その理由については別途触れられていたのだが、それはともかく、この事実により「『大統領警護隊』以外の機関は、ケネディ暗殺に関する資料をすべて提出した」と言えることになるのだ。

もちろん、資料がすべて保存されてきたとは限らない。事件直後のどさくさに紛れて意図的に破棄したり、あるいは誤って紛失したりしたものだってきっとあるだろう。とはいえ少なくとも、「政府機関からはこれ以上、ケネディ暗殺に関する資料は出てこない」ことは確定しているのだ。そして、そう言っていいほどに集まった資料を基にして、ケネディ暗殺の謎に迫っていこうというのが、本作の趣旨なのである。

後は「調べる者の腕次第」というわけだが、「証拠の充実度」という観点だけで言えば、これほどの規模の調査記録はなかなか存在しないのではないかと思う。そして実際に、興味深い話が次々に出てくるのである。

「魔法の銃弾」はどこから出てきたのか?

最初の話題は、ケネディ暗殺事件においてはよく取り上げられる「魔法の銃弾」についてだ。それではまず、「魔法の銃弾」とは一体何なのかの説明から始めていこう。

「オズワルド単独犯説」においては、「銃撃現場付近にある『教科書ビル』と呼ばれる建物の6階からケネディ大統領を撃った」とされている。そしてその部屋には、3発の空の薬莢が残されていた。つまり、「オズワルド単独犯説」が正しいとすれば、3発の銃弾のみでケネディ大統領ほかすべての傷が説明できなければならないことになる。ケネディ大統領が乗っていた車に残っていた銃弾は2発。つまり、3発の内1発は命中しなかったのである。残り2発の内、1発はケネディ大統領の頭部に当たり致命傷となった。残りは1発。後部座席に座っていたケネディ大統領と、その前方に座っていたコナリー知事には、他に合計7つの傷の存在が知られている。そのため、「1発の銃弾が、7つの傷を生み出した」とするのが「魔法の銃弾」と呼ばれる仮説なのだ。

ウォーレン報告書によると、その「魔法の銃弾」の軌道は次のようになっている。まずケネディ大統領の首の後ろから入り、喉から抜けた。そしてその後、前方に座っていたコナリー知事の背中を貫通、手首を経由して最終的に太ももで止まったというのだ。普通に考えて、「ンなアホな」と感じる話ではないだろうか? そして、「こんなムチャクチャな話を押し通そうとしているということは、『オズワルド以外の狙撃犯』の存在を隠そうとしているのではないか」という疑惑が存在するのである。

「証拠物件399」という正式名称を持つこの「魔法の銃弾」は、「病院職員がコナリー知事の体内から取り出し、最終的にFBIのフレイザーという人物の手に渡った」と記録されている。そしてこの「魔法の銃弾」に関して、実に興味深い発見がなされたのだ。それを見つけ出したのはなんと一般人である。まさに、資料が広く公開されたからこその展開と言えるだろう。

では、「魔法の銃弾」に関してどのようなことが新たに分かったのか? その説明のためにはまず、「証拠保全」について触れるなければならない。

「証拠保全」とは、「ある証拠品の『同一性』を明らかにするための記録」である。裁判所からすれば、「コナリー知事の体内から取り出された銃弾」と「裁判で証拠として提示された銃弾」が同じかどうかなど知りようがない。そこで、「その証拠品は裁判までの間、どのような経緯を経て保管されるに至ったのか」という記録が重要になるののである。というか、「証拠保全」の記録によって「同一性」の証明が出来なければ、裁判において「証拠」としては認められないのだ。そのため、例えば「魔法の銃弾」の場合なら、「病院職員からFBIに渡るまでに誰が何時何分に受け取ったのか」が事細かに記されているのである。

ではその「証拠保全」をチェックしてみよう。最後に受け取ったFBIのフレイザーは、受け取りの時間を「19:30」と記録している。しかし実に奇妙なことに、彼の前に銃弾を受け取った人物は、「20:50」と記録しているのだ。直前の人物が「20:50」に受け取った銃弾を、フレイザーが「19:30」に手にすることは、絶対に不可能である。

また記録によると、トッドという人物が受け取った時点からフレイザーに至るまでの4人それぞれが、銃弾に自身のイニシャルを記載したという。これも「同一性」の証明のために重要な手続きである。しかし、「証拠物件399」として保管されている「魔法の銃弾」には、トッドのイニシャルが記載されていないのだ。

これらの事実から、次のようなことが容易に推定できるだろう。「銃弾がどこかですり替えられたのではないか」という可能性だ。もちろん、これだけを以って「オズワルド単独犯説はおかしい」とは言えないだろう。しかし少なくとも、「犯行直後に、『銃弾をすり替えなければならない』と考え実行した警察・FBI関係者がいた」ということは確かだと言えると思う。この点だけを考えてみても、「何らかの陰謀の存在」を感じさせられるのではないだろうか。

「魔法の銃弾」や「オズワルドが撃ったとされる銃」に関する様々な疑惑

さらにこの「魔法の銃弾」には、他にも疑わしい点がある。7つもの傷を与えたとされているのに、銃弾そのものにほとんど傷が存在しないことだ。

この点に関しては、ある法医学者が行った実験が紹介されていた。「証拠物件399」と同一の銃弾を100発用意し、「死体の背中から手首に射出した場合」の銃弾の変形を調べたのだ。これは「魔法の銃弾」が辿ったとされる経路の一部分、「コナリー知事の背中を通り手首を抜けた」という状況の再現である。

そしてなんと、100発すべてで先端が大きく変形したというのだ。このように「背中から手首への貫通」だけでも先端が潰れてしまうのである。となれば、より長い経路を辿ったとされる「魔法の銃弾」が無傷のままのはずがないだろう。この点を踏まえても、すり替えられた可能性が考えられるのである。

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