宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱3
顔面を覆うほど伸びてしまった前髪と、肩を過ぎてしまった後ろ髪を、ばさりと切り落としてもらった。少し幼い印象になった姿で、深遠は維知香の戻りを待った。床屋の店先、赤、白、青が回転するポールの横に立ち、通りに視線を向ける。
(ここも随分と西洋化が進んだな……人が変われば町も変わる。だがこの地の結界は、綻び知らずだ……あの人は、相当優秀な術師なのだな)
こちら側の時間で言えば遥か昔、この周辺は落人の隠れ里であった。戦で破れ、この地に辿り着いた者の中に、鷹丸家の祖先がいた。ま